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【文楽】妹背山女庭訓(初段と二段目)

 2023年4月16日(日)、大阪の国立文楽劇場で、文楽の『妹背山女庭訓(いもせやまおんなていきん)』を観てきました。全五段の作品で、今回4月は三段目までの上演でした。メモを残したいと思います。

■『妹背山女庭訓』について

(1)概要(公演プログラムを参考に)

 近松半二が立(主席)作者となり、松田ばく、栄善平、近松東南、そして長老の三好松洛を擁する合作。全五段。
 中大兄皇子(後の天智天皇)と中臣(藤原)鎌足が大豪族蘇我入鹿らを武力で排除した乙巳の変(645)に、大和地域の名所や伝説、それを題材とした先行作を織り交ぜています。

(2)ごく簡単なあらすじ(Wikipediaとイヤホンガイドより)

 蘇我入鹿は、父蘇我蝦夷が白い牡鹿の血を妻に飲ませて産ませた子どもなので超人的な力を持っています。この入鹿が天智天皇を宮中から追い出すという謀反を起こします。入鹿を倒すには、「爪黒の牝鹿の血」と「嫉妬深い女の血」が必要で…。〈以下、省略〉(最後は、乙巳の変に繋がるのだと思います。)

 私は、イヤホンガイドでこの大筋を聞いて、かなり衝撃を受けました!「爪黒の牝鹿の血」は今回観た二段目で関わって来ましたが、「嫉妬深い女の血」というのは四段目で関わって来るそうです。今回は三段目までの上演で、それでも濃く感じたので、四段目は一体どのような展開になるのだろうかと思いました。(なお、四段目は今年の夏に上演されるそうです。)

■初段について

(1)織り込まれたストーリー

・禁裏に一堂が会する簡単な登場人物紹介
・久我之助と雛鳥が恋に落ちる
→不仲の家の子女同士で、三段目で問題となる。
・蘇我入鹿が権力を掌握する

(2)感想

 入鹿が権力を掌握する過程で、蘇我蝦夷(父)との関係が絡んで来ます。ネタバレのようになるのであまり詳しく書きませんが、歴史上、蘇我蝦夷(父)と蘇我入鹿(子)の関係はどのようだったのだろうかと考えさせられました。
 また、天智天皇は、目が見えないはかなげな姿で描かれていました。私は、乙巳の変を起こした行動的な人物と捉えていたので、作品の描き方で色々あるのだな、と思いました。

■二段目

(1)織り込まれたストーリー

①采女の衣掛柳(きぬかけやなぎ)伝説。
 奈良時代の帝に仕えていた采女(宮中の女官のこと)が、帝からの寵愛を失ったことを嘆き、猿沢池に身を投げたという逸話。
→本作では、天智天皇の寵愛を受ける采女(ここでは人名)という女性が出て来ます。
②「爪黒の牝鹿の血」
 「爪黒の牝鹿の血」が必要となりますが、奈良の鹿は神の使いとされた神聖な動物で、鹿を殺した者は死罪(※)となる厳しい掟がありました。このジレンマの中、物語は進行していきます。
※石子詰の刑(地面に掘った穴に人を入れ、周りに石を詰めて生き埋めにする刑)

(2)感想

 「芝六忠義の段」という段があり、猟師の芝六一家が主君への忠義を試されます。ここもネタバレになりそうなので詳しく書きませんが、忠義を問う江戸時代の文楽らしいテーマのようにも思いました。

■最後に

 三段目があるのですが、三段目には「妹山背山の段」という段もあり、この『妹背山女庭訓』の題名のもととなった段のようです。こちらは、書きたいことも色々出て来ると思いますので、別の記事で後日投稿しようと思います。

本日は以上です。

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