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【演劇】オイディプス王(パルテノン多摩)

 2023年7月15日(土)、パルテノン多摩に、演劇『オイディプス王』を観に行きました。以下、メモを残します。ネタバレ部分には「ネタバレあり」と記載しています。
 上演期間は、①パルテノン多摩:7月8日~17日、②兵庫県立芸術文化センター:8月19日、です。

■「パルテノン多摩」について

 「パルテノン多摩」は、多摩センター駅から徒歩5分にある複合文化施設です。劇場も入っています。80段の大階段の途中、両側に建物があり、大階段の上には、8本柱(パーゴラ?)が建っています(写真参照)。何となく、ギリシャのパルテノン神殿を彷彿とさせるエリアでした。
 ホームページによると、1987年(昭和62年)に開館、大規模改修工事を経て、2022年(令和4年) 7月1日にリニューアルオープンとあります。今回上演される『オイディプス王』は、「リニューアルオープン1周年記念」と銘打たれていました。

■『オイディプス王』について(ネタバレあり)

 『オイディプス王』は、古代ギリシャ三大悲劇詩人の一人であるソポクレスが書いた戯曲です。

(1)簡単なあらすじ(導入)

 古代ギリシャ都市国家、テーバイ。
 かつてこの地を怪物スフィンクスから救ったオイディプスは、死去した先王ライオスの妻だったイオカステを妃に娶り、テーバイを治める王となっていた。
 だがテーバイに疫病が発生。対策を立てるため、オイディプスは、イオカステの弟クレオンをアポロンの神殿に派遣して神託を聞く。神託によると、先王ライオスの殺害犯を捕らえ、罰すれば疫病は収まるとのこと。
 捜査の中で、預言者テイレシアスを召喚するが、テイレシアスは「オイディプスこそが犯人である」と言う。

パンフレットのストーリーを加工

(2)配役等
 主な出演者は、オイディプス:三浦涼介さん、イオカステ:大空ゆうひさん、クレオン:新木宏典さん、でした。
 制作は、翻訳:河合祥一郎さん、演出:石丸さち子さん、プロデューサー:栗原喜美子さん、でした。

 なお、出演者の中に、「コロス」という16人のグループがありました。
「コロス」とは、古代ギリシア劇の合唱隊のことをいうようです。私としては、初めて知る言葉・役割でした。

■メモ・感想(ネタバレあり)

(1)物語の構成について
 物語の中で、以下の点が問題になるのではないかと、私は考えました。

①先王ライオスを殺害したのは、本当にオイディプスなのか
②仮にオイディプスが殺害犯だとすると、どういう経緯で犯行に至ったのか、なぜオイディプスには自覚がないのか。

 神託や預言、証人、民衆の声と、多くの言葉が交錯しますが、極めて論理的に話は進んで行きます。
 三浦涼介さんをはじめ、役者の方々の台詞は大変心地よく、集中して末尾まで聞き取ることが出来ました。上演時間は、休憩なしの2時間でしたが、私は長く感じませんでした。

(2)悲劇性について
 私は、涙こそ流しはしませんでしたが、本作品を通じて、古代ギリシャの「悲劇」が、現代の観客にも悲しみを引き起こし、涙を誘ういうことを実感しました。私は、悲しみというより、寂寥感のようなものを感じました。

 少し辛口になりますが、「悲劇」と言っても、悲しさをあまり実感できない上演作品もあるように思います。特に、古典だと、型に引っ張られ、冗長さを感じるときがあります。

 本作では、大げさな感じがしなくて、自然にストーリーについていくことが出来ました。「コロス」も、ダンサーの方々が多く、コンテンポラリーの群舞というのでしょうか(間違っていたらすみません)、作品に溶け込んでいる感じを受けました。

(3)古代ギリシアについて
 私は、ギリシャ悲劇の舞台を観るのは初めてでしたが、神託や預言など、キリスト教以前の世界を感じるような気がしました。(この点、勉強不足ですが、記載します。)
 また、パンフレットには、「神を無謬の絶対正義ではなく、気まぐれに人間を翻弄する存在であるという認識」という記載もありました。演劇を通じて、過去の世界観を感じることができ、こういった点は、もう少し学んでみたいと思います。

■アフタートーク

 私が参加した回のアフタートークは、三浦涼介さん、大空ゆうひさん、浅野雅博さん(テイレシアス役)、今井朋彦さん(神官・使者役)の4名でした。司会が、プロデューサーであり、パルテノン多摩の館長の栗原喜美子さんだったのでしょうか。
 感染対策として、舞台稽古でも、役者の方々は出演シーンにだけ参加する形で、それほど会話など出来なかった話などがありました。コロナ対策が現在も続いていることを感じました。

■最後に

 ホームページによると、『オイディプス王』は、「紀元前より約2500年にわたり観客を惹きつけてやまない、世界最高峰と称されるギリシャ悲劇の大作」とあります。実際、演出や俳優の方々の演技も多分にあると思いますが、現代にも通じる作品のように思いました。
 最後にスタンディングオベーションがなされましたが、私は自然な気持ちで立ち上がることが出来ました。大変良かったと思います。

 本日は、以上です。 

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