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文楽『花上野誉碑(はなのうえのほまれのいしぶみ)』鑑賞

2022年7月31日、大阪の国立文楽劇場。
第三部前半で鑑賞。志度寺の段(全十段のうちの四段目)。
7月に大阪に行ったときの記録です。思うところがあり、プログラムを見ながら書いてみます。

思うところとは、私はこの段のストーリーを知っていたのです。文楽が始まって気づきました。

知っていた部分を少し書くと以下のとおりです(ネタばれあり)。
父親の死後、七歳の坊太郎は言葉が不自由な病気となります。乳母のお辻は、坊太郎のために、滝に打たれながら水垢離をして、金毘羅さんに祈ります。
しかし、坊太郎の病は父の敵から身を守るために家来達と組んだ計略でした。つまり、坊太郎は実は口がきけて、乳母も含めて騙されていたのです。
結局、乳母は命を落とします。敵を騙すには味方からとでもいいましょうか。

私は、文楽を含め文学作品が好きなので、一心に水垢離する乳母の思いや場面をストレートに受け止めました。乳母の行動に日本人の秘めたる激しさを感じます。
他方で、過去に友達の誰かがこのストーリーを批判していた気がするのです。結局、馬鹿をみたのは乳母ではないか、と言って。
今回の文楽を見ながら、両方の気持ちになりました。

さて、話は戻りますが、水垢離の場面は特に激しい場面でした。三味線は鶴澤清介さんだったと思います。過去にこの段の演奏中に脳出血で倒れ、亡くなった三味線弾きの方もいるそうです。

この日の第二部『心中天網島』の方が完成度は高いのかもしれませんが、個人的には、この「志度寺の段」が好きです。私の思い出の作品とも言えましょう(笑)。

第三部後半は『紅葉狩』。
・更科姫の扇の使い方が良かったです。
・最後の場面の位置取り(平維盛と松の木の上の鬼)が良かったです。

以上

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