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【美術館】キュビスム展 美の革命

 2023年10月14日(土)、上野の国立西洋美術館に『キュビスム展 美の革命』を見に行きました。メモを残したいと思います。

■展覧会概要

 国立西洋美術館での会期は、2023年10月3日(火)から2024年1月28日(日)までです。その後、京都市京セラ美術館に巡回予定です。京都の会期は、2024年3月20日(水・祝)から7月7日(日)までです。

 パリのポンピドゥーセンターも主催に名を連ねています。同センターから、キュビスムの重要作品が多数来日し、そのうち50点以上が日本初出品とのことです。主要作家約40人による絵画や彫刻を中心とした約140点、50年ぶりの大キュビスム展とありました。

 禁止マークがついている作品以外は写真撮影が可能で、ほとんどの作品の写真を撮ることが出来ました。音声ガイドは、当日のレンタルも可能ですが、事前のダウンロードも出来ます。

■キュビスムについて

 キュビスム(立体派)は、20世紀初頭にパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって始められた美術分野での大きな動きです。
 手持ちの本から、少しだけ引用してみます。

キュビスムとは、描く対象を様々な視点から見て分析したうえで、立体をすべていったん単純に平面化して、その平面を組み立てて切り子上に再構成したものといえます。

秋元雄史『武器になる知的教養 西洋美術鑑賞』132ページ

ピカソはこの作品(『アヴィニヨンの娘たち、1907年』※今回の展示会には展示されていません)で、遠近法や明暗などによって表現していた従来の写実的な現実感ではなく、複数の視点から対象物の形をいったん解体したうえで、画面の中で再構成することで新しい現実感を表現しようとしたのです。

秋元雄史の同書、132ページ、()内は補足

 一般的に、背景として、以下のような点が挙げられているようです。
 ①写真の発達による絵画の限界と新しい役割の模索、②19世紀末の帝国主義の下、植民地のアフリカから入ってきた彫刻などの影響、③(具体的な話になりますが)多視点で絵を描いたセザンヌの影響。

 例えば、こんな絵です。

ピカソ『肘掛け椅子に座る女性』
フアン・グリス『本』
フェルナン・レジェ『縫い物をする女性』

■コメント①

 ピカソ展やマティス展のように、個人の画家に焦点を当てた展覧会もありますが、今回は「キュビスム」という一つの美術手法・流れを軸とした展覧会でした。
 「美の革命」という副題がついているように美術史の転換点であり、私はその流れを早めにおさえておきたかったので、急いで行ってきました。音声ガイドも事前に2回ほど聞いていきました。
 会場に2時間ほど滞在しましたが、キュビスムの表現が、切り子状だったり、幾何学的だったりして、感情を揺さぶる作品というのとは一味違い、個人的には穏やかな気持ちで鑑賞することが出来たように思います。

■展覧会の構成

 全14章で構成されています。展示コーナーで大きく分けてみました。

 前半は、「1.キュビスム以前-その源泉」「2.プリミティヴィズム」「3.キュビスムの誕生ーセザンヌに導かれて」「4.ブラックとピカソーザイルで結ばれた二人(1909-1914)」となっており、ピカソとブラックの絵画が多く展示されていました。

 中盤①は、「5.フェルナン・レジェとフアン・グリス」「6.サロンにおけるキュビスム」「7.同時主義とオルフィススムーロベール・ドローネとソニア・ドローネ」

 中盤②は、「8.デュシャン兄弟とピュトーグループ」「9.メゾン・キュビスト」「10.芸術家アトリエ「ラ・リュッシュ」」

 後半は、「11.東欧からきたパリの芸術家たち」「12.立体未来主義」「13.キュビスムと第一次世界大戦」「14.キュビスム以降」

■コメント②

 私は、どういった構成で展示が進んでいくのか考えながら(少し不安に思いながら)足を運びました。入口で入手出来る作品リストで、作品のバランスをおさえておくとよいかもしれません。

 中盤に展示されていたドローネの『パリ市民』は、冒頭の写真の作品ですが、創造していたより大きな作品でした。絵はサイズではないのでしょうが、大きい作品は迫力があるように思います。

 また、ピカソやブラックに、若手の芸術家が追随していく姿も印象に残りました。「ラ・リュッシュ」は蜂の巣という意味で、若く貧しい芸術家たちが集まっていたようです。シャガールもキュビスムの影響を受けており、その展示を見ることが出来て良かったです。

 キュビスムが対象とする期間は、20世紀初頭の20~30年ぐらいで、短い期間なのでしょうが、帝国主義から第一次世界大戦へつながっていく大きな変動期で、もっと長い時間を対象としているように感じました。

 そして、私には少し難易度が高いように感じて、今回、図録は購入しませんでした。薄めの本から入って、理解を深めていこうと思います。

■最後に

 私は、子どものとき、ピカソの絵を見て、変わった絵だなと思いました。迫力がある絵もありますが、なぜこのような描き方をするのだろうと。
 今回、キュビスムの起源やその流れを知ることを通して、ピカソらの絵に対する見方が変わった(理解が深まった)ように思います。
 他方で、前提となる概念を知らないと理解できないというのは、本末転倒のようにも思います。しかし、これは、私たちが、先人たちが築いてきた歴史の延長上に生きているためであり、仕方のない側面もあるかもしれません。
 歴史がどのように発展してきて、今生きている時代にどのような思想や概念があり、どのような作品が流行しているのか知る一方、どのような作品に個人的に感銘を受けるか、自分の感性を大事にしたい部分もあります。

 その他、今回は展覧会の概要・流れとコメント部分を分けて記載してみましたが、文章を書くのは本当に難しいと思います。

 そして、これが本当に最後になりますが、撮影可能だった作品のなかで、私が好きだった作品を上げてみます。(写真が歪んでいてすみません)
 作品は、マリー・ローランサンの『アポリネールとその友人たち』です。アポリネールは、キュビスムについて美術評論などを書いた人のようです。中央の男性がアポリネールで、友人たちに囲まれている姿が、微笑ましく思えました。

マリー・ローランサン『アポリネールとその友人たち』

 そして、シャガールの絵の写真を上げます。

シャガール『ロシアとロバとその他のものに』
シャガール『白い襟のベラ』

 本日は以上です。
 読んで頂いて、ありがとうございます。


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