【8・9月文楽】菅原伝授手習鑑
2023年8月末から、国立劇場(小劇場)で文楽公演が行われています。演目は、菅原伝授手習鑑(三段目以降)、寿式三番叟、曾根崎心中です。
今回は『菅原伝授手習鑑』について、気づいたことを書いてみようと思います。
■『菅原伝授手習鑑』について
(本当に)大まかなストーリーですが、チラシから引用します。
全五段の時代物で、今回は、今年の5月の公演で初段と二段目、8・9月公演で三段目から五段目と、二公演にまたがる通し上演でした。
■気づき①:「通し狂言」の面白さについて
「通し狂言」とは、歌舞伎や文楽で、序幕から大切までを、通して演じる芝居のことです。逆に、演目の名場面だけを抜き出して上演することを「見取り狂言」というそうです。(辞書などを引きました。)
今回の『菅原伝授手習鑑』を通しでみて、面白さに気づいた部分があり、具体例をあげ、メモに残したいと思います。
例.松王丸夫妻の行動について
これまで、「車曳の段」と「寺子屋の段」は、それぞれ独立して見たことがありました。三段目の序である「車曳の段」は、三つ子の対峙が描かれる場面です。菅丞相側の桜丸・梅王丸と、敵対する藤原時平側の松王丸が激しく対峙します。対して四段目の切である「寺子屋の段」は、松王丸が、菅丞相の恩に報じる場面です。
どちらも有名な場面ですが、今回、この2つの場面の間に、三つ子夫妻が老父の住む「佐太村」に集う場面を見て、より理解が深まりました。
以下、ネタバレありです。
「佐太村」では、菅丞相に長年仕えてきた三つ子の父である四郎九郎が、白太夫と名を改め七十歳の賀を祝います。三つ子の女房たちは、それぞれ白太夫にプレゼントを贈ります。松王丸の妻千代が贈ったのは、頭巾でした。
この後、白太夫は松王丸を勘当するのですが、そのとき千代が贈った頭巾も投げ捨てます。私は少し驚いたのですが、せっかくの贈り物だったのだから、千代の心は痛んだだろうなと思いました。
その後の「寺子屋の段」では、松王丸のみならず、千代も一芝居打ちます。義父(松王丸から見ると父ですが)に縁を切られつつも、菅丞相の恩に報いる千代の姿が、より浮かび上がって見えたように思いました。
その他にも、配流される前後での菅丞相の変化や、桜丸と八重夫妻が五段目でどのようになるのか、など、今回は通しで見る面白さを十分に感じることが出来ました。
■気づき②:蔭囃子について
菅丞相が天拝山の頂上で雷神と化す四段目内の「天拝山の段」や、都で天変地異が起こる五段目の「大内天変の段」では、雷が鳴り響きます。
「ごろごろ」という音に始まり、徐々に激しくなっていく雷ですが、黒御簾内の太鼓などで表現されているようです。(写真も太鼓にしました。)
下座、下座音楽、蔭囃子について、リンクを貼ります。
また、国立劇場のホームページに、囃子をされている望月太明藏社中のインタビューがありましたので、リンクを貼ってみます。
■最後に
明日の9月24日(日)が文楽の千穐楽です。千穐楽に来場した人には記念品が贈呈されるそうです。「いいなぁ!」「記念品とは何だろうなぁ。」と思う一方、私は前倒しで見るタイプなので、「まぁ、いいかな」と思ったりします。
前にも書いたことがあるのですが、ここ一年、舞台を観に行く回数が多かったので、少し切り替えつつ、細く長く続けていきたいです。
本日は以上です。
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