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【文楽】夏祭浪花鑑

 2023年5月14日(日)、国立劇場(小劇場)で、文楽の『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』を鑑賞しました。まだ5月ですが、題目は「夏祭」で、太夫さんも三味線方も白い着物でした。以下、メモを残します。


■作品概要(プログラムより抜粋)

・作者は、並木千柳・三好松洛・竹田小出雲
・延喜2年(1745)7月、大阪・竹本座で初演
・外題には、「団七九郎兵衛/釣船三婦/一寸徳兵衛」の三行の角書きが冠せられているそうです。実際、三人の侠客が活躍します。
・世話物。大阪の市井を舞台に、町人や侠客の義理や意地を描いています。

■簡単なあらすじ

 特に登場人物が多いときは、字面だけ追っていても頭に入りづらいものです。自分の頭の中の整理を含めて、上記した三人の侠客の観点からではなく、侠客に守られる「玉島磯之丞」の観点からまとめてみました。
※<以下省略>と記載した部分が見せ場になります。

①玉島磯之丞は、和泉国(現在の大阪府南西部)浜田家の諸士頭・玉島兵太夫の息子。傾城の「琴浦」に入れあげるなど身持ちが定まらず、兵太夫から勘当されます。団七は、磯之丞を庇うために佐賀右衛門の家来を傷づけた咎で入牢していましたが、兵太夫の執り成しによって赦免となりました。

②団七は、恩人の兵太夫に感謝して、その息子の磯之丞を命に代えても守ると心に誓います。そして、(「琴浦」に横恋慕する)佐賀右衛門らによって、「琴浦」がさらわれそうになりますが、団七が助けます。(「住吉鳥居前の段」)

③磯野丞は、団七の世話により内本町の道具屋で手代となって清七と名乗り、主人孫右衛門の娘「お中」と恋仲になっています。(「お中」に横恋慕する)伝八らから磯野丞(清七)は陥れられますが、最後には、「お中」と駆け落ちします。(「内本町道具屋の段」)

④三婦に助けられた磯之丞(清七)と「お中」ですが、「お中」は家に戻され、磯野丞(清七)は「琴浦」と寄りを戻します。釣船三婦とその女房・おつぎは、一寸徳兵衛とその女房・お辰に、磯野丞(清七)を預けようとしますが、若い磯之丞と美しいお辰に過ちが起こりかねないと、釣船三婦は決心出来ません。<以下省略>(「釣船三婦内の段」)

⑤他方、団七の義父である三河屋義平次が、金儲けのために、「琴浦」を駕籠に乗せて連れ去ろうとしますが、団七が止めに入り、団七と義平次の間で争いが生じます。<以下省略>(「長町浦の段」)

■感想

・私は、最初、磯之丞とお辰に過ちが起こりかねないと、なぜそこまで三婦が心配するのか、よく分かりませんでした。しかし、落ち着いて磯之丞(清七)の女性関係(「琴浦」「お中」)を追っていくと、確かに過ちが起こりかねないと心配するのも分かるような気がします。見方によっては、若くて世間を知らない磯之丞が問題を起こしているようにも思えてきます。
・他方、団七(太夫:竹本織太夫、人形:桐竹勘十郎)と義父・義平次(太夫:豊竹藤太夫、人形:吉田和生)の争いの場面は、盛り上がりがあり、観ることが出来て本当に良かったです。三味線の「メリヤス」という弾き方や「蔭三味線」という言葉も印象に残りました。
・団七の人形は、自分が想像していたより大きかったです。桐竹勘十郎さんが主遣いで、のびのび遣われていて、武将のように甲冑が無く、素に近い分、男の人形遣いのダイナミックさを観たような気がします。
・最後、夜に、だんじりの囃子が響く中、神輿が登場します。悲劇の中に華やかさがあり、一種、三島由紀夫の世界観を彷彿とさせるように感じました。(この点、勝手な想像ですみません。)

本日は、以上です。


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