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『抹茶ミルク』余波

小説を書くと、数年の時を越えて感想をいただく機会に恵まれる。本を書くという行為は、わたしを生き直すことにつながる。それはわたし自身と過去や経験、考えていることについてじっくり対話ができるから、というだけではなく、わたし以外の誰かとの対話によって、それまで考えてもみなかったわたし自身が立ち現れるからだ。
今回、新たに読者になってくださったKさんとのやり取りで、また一つ、わたしの中の何かが深まった。本を出す、ということの意味は、有名になるとか印税が稼げる、別の仕事につながるということとはまるで別のところにある。
下記のやり取りから、そこが感じてもらえると嬉しい。

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滝さん
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
年末は久しぶりにリモートですが、お会いできて
お話しできてうれしかったです!

さっそく、「抹茶ミルク」拝読しました。
あの飲み会の場で、DLし、翌日29日に一気に読んでしまいました。
ストーリーを味わいつつ、どうしてこのストーリーを滝さんが書いたのかな?
ということを頭の片隅で考えながら読んでいたのですが、
後書きを読んで、ご自身の原体験がベースになっていることを知り、伏線を回収した気持ちになりました。
なかなか想像では書けない登場人物の複雑な心境、家族との気持ちのすれ違いをどうしてこんなに
端的に書けるのだろうと思っていたのですが、ご自身が体験し、内にあった想いを表現されたということがわかり
だからこそ、スッと入ってきたので一気に読めたのだと思いました。

また後書きを読んで、章ごとに視点となる登場人物が変わるのも納得ができました。
視点を変えて語ることで、物語が立体的になり、だからこそ家族って温かくて難しいということが伝わってきて
少し苦しい気持ちにもなりました。
「抹茶ミルク」というタイトルは、「甘くてほろ苦い」というような家族の関係性を表現したタイトルなのでしょうか。
ずれていたらすみません。タイトルに込めた思いが気になり、お時間ありましたら教えていただけますと幸いです。
次回作も楽しみにしています!

K 

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Kさん

あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

「抹茶ミルク」読んでいただいたんですねー。わーい。ありがとうございます~!!感想嬉しいです~!!!

ちなみに、家族との関係は家族によってさまざまですが、案外この世代(団塊ジュニア~40代くらいまで)特有の同じような悩みがあるんだなあ、というのが最近の感想です。
巨視的にいくと、私たちの親世代=団塊世代は、戦中世代の親との間に物理的(戦争)にも精神的(江戸・明治から続いている日本的文化とその変化)にも大きな分断があって、本当はもっと昇華していくべきものがあったはずなのに、数の論理と高度経済成長によって物理面を巨大に膨らませ、精神的な分断をヤング=よきこと=問題はささやかなことだ、として押し流してきたんですよね。
でも、精神面の苦悩はその子世代である私たちのところでついに顕在化したわけです。つまりここが本当の戦後の総決算の舞台ってわけ。だから、家族の問題を抱えた人たちがたくさんいるのもやむなしっていうか、時代の流れの必然なんだなと考えています。面白くはないけど。

ちなみに「抹茶ミルク」というタイトルは、最初は別に何も考えておりませんで笑、最初の舞台設定に使ったカフェの抹茶ミルクがおいしかったから、という身もふたもない理由なのでございます。おかげで今でも私はタイトルをよく間違えます。周りの人から、「抹茶カフェ」って言っていると突っ込まれます笑 それくらい愛着ないっていうか…。記号でしかなかったですね。はい。

とはいえ、最終的にこのタイトルのままで進めたのは、やはり必然があったからです。
甘いだけの飲み物でもなく、苦いだけの飲み物でもない。家族関係というのは、そんな風に一つの味だけで語り切れるものじゃない、ということが言いたいんだなということだったと思います。
特に「ミルク」っていうのが、なんともどろっとした家族の濃厚さを表している気がしていて。ミルキーはママの味って昔CMがありましたけど、家族というのはどうしようもなく母性的。それでもただのミルクだったらそれはそれでピュアだけど、抹茶が入ったことであか抜けた大人の雰囲気を演出しつつも、やっぱり中身はガキっぽい。これって、私たちくらいの今の大人の心身性にかぶってんじゃないかなー。。。と。
そんなこんなで、タイトル言い間違えても「抹茶ミルク」なわけです。

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滝さん

抹茶ミルクのタイトルの背景、教えてくださり、ありがとうございます!!
ミルクも、きっと抹茶ラテでもだめで、ミルクじゃなきゃ!という意味も理解できた気がします。
「ミルキーはママの味」よく考えると・・・昭和の理想の母像と言ってしまえばそこまでですけど、
いつまでも口に残る甘ったるさ・・・家族のまどろっこしい関係性と考えると奥が深いです。

また年末に50,60代の息子が親を殺めるとかいう事件がありましたが、
戦後の総決算の舞台だったのかも・・・それが起こした悲劇なのかも・・・と考えるとちょっと苦しくなります。
ニュースでは、ひどい息子!としか報じられませんが。(もちろん事情はそれぞれあるのだと思うので、本当にひどいサイコパスな息子かもしれませんが)

うちの両親は、ぎり戦後生まれなのですが、「二十歳の誕生日が真珠湾攻撃(!)」だった大正生まれの母(私の祖母)に厳しく育てられ、
かつ同居してたので、見取った63歳で母親の呪縛が解けたと言っておりました。

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