書評:中島国彦『森鴎外 学芸の散歩者』(岩波新書) 近代日本文学の「幸福な父」
第一人者による包括的評伝
鴎外(1862ー1922)の没後100年を記念した刊行でしょう。
著者の中島国彦(早稲田大学名誉教授)は、漱石の権威であるとともに、鴎外の権威でもあります。
漱石、鴎外、本人とその周辺の書いたものは、断簡零墨の類まで全部何度も読んでいるのは間違いありません。現在、日本近代文学館理事長。
記念出版の著者としては最適の人と思われます。
貴重な検体にゆっくりメスを入れるような、慎重で柔らかい筆致が特徴です。
新奇な説、刺激的な視角があるわけでは