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同期が会社を辞める。

同期が会社を辞める。

会社の同期と、今年から縁あって同じチームで仕事をすることになった。
同期とはいえ、それほど仲が良かったわけではない。軽く会話をする程度だ。同期会で飲みに行くことを除いたら、個人的に飲みに行くこともなかった。
しかし、同期が同じ係の同じチームになることは初めてだったので、その嬉しさはあった。同期と一緒に仕事ができることに期待をしていた。
とても真面目な人なので、仕事をしっかりやるだろうな、と思っていた。

しかし、いざ一緒に仕事をしてみると、僕の彼女に対する見方が変わってきた。
彼女はなかなか要領が悪く、周囲と比べると理解も遅かった。
チームでは僕の方が先輩に当たるから、教える側として接することが多かった。最初の方は、僕の言ったことは、たとえマニュアルに書いてあると知っていてもメモしようとするし(自分は書かないと覚えられないから、申し訳ないけど書かせてほしい、とのことだった、意外と頑固で面白い)、質問も的を得ないものが多かった。自ら動くことを苦手としているようで、話し方もなんだか少しぎこちない。僕も人のことはいえないが、真面目な不器用タイプだった。そんな彼女でも、日々の仕事を着実にこなしながら、仕事をこなしてきたのだ。来年から異動する予定の先輩から仕事を徐々に引き継いでいた。
僕とは性格が合わないかもしれないけど、苦労しても仕事はなんとかやっていくんだろうなと思っていた。

退職を表明したのは、定例で行われるチームと上司とのミーティングのときだった。上司が彼女を促し、いつものぎこちない話し方で、今年度をもって退職をすると言った。先輩はおろか、同期の僕も聞いてなかったことだし、みんな驚いていた。思えば、ここ一ヶ月ほど、上司と別室で何か話していたし、何かあるんだろうなと思っていたけど、退職だったとは。異動してからまだ半年と少ししか経っていない。まだまだこれから覚えること、やってほしいこと、果たしてほしい役割、一緒に成し遂げたいこと、たくさんあるのに。辞めた後は何するんだろう。僕らと仕事するの、嫌だったのかな。
彼女には聞きたいことがたくさんあるけど、なんだか聞くのが恐くなって、結局その日は何も聞けなかった。

彼女が退職することにより、彼女が引き継いでいた仕事は残されたメンバーがやることになる。というかほぼほぼ僕がやることになりそう。これは結構な大ごとで、これから結構忙しくなるんだろうな。あと、残りの半年ほど、まだ完全に仕事を覚えたとは言い切れない彼女に何をやってもらうか。仕事を休まず来てくれるか。みんなで色々考えなきゃいけない。考えなきゃいけないんだけど、一番に出てくるのは、やっぱり寂しい、という気持ちだ。

会社を辞めることって、一般的には結構勇気がいるんじゃないか。僕にはなかなかできない。あまり自分から動かない、比較的引っ込み思案な彼女がこのタイミングで退職するのは、彼女なりに、このままは良くないと考えているからなのかもしれない。残される僕らにとっては最悪のタイミングだけど、彼女にとっては必要なことだったのかもしれない。会社を辞めることについては、個人の自由だと思っているので、「こんなタイミングで辞めるなよ!」とは思っていない。誰にでも訪れることだし、もちろん自分にも。僕自身、今の会社にずっといる人生で良いのか、毎日のように悩んでいるので、決断することができた彼女は素晴らしいとさえ思っている。

この話は、僕にとって衝撃的だった。これから半年のこと、来年度のこと、そして彼女のこと。色々考えてしまうけど、やっぱり一番は、寂しいな。

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