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サーキュラーエコノミーは日々を捉え直す 「メガネ」である

「環境を守ること」「利益を追求すること」。

これまでこの二つの取り組みは、一見相容れないように思われてきました。

環境を守る取り組みをしようとしても、なかなか利益にはつながらなかったり。逆に利益を追求しようとすると、地球環境に負荷がかかってしまったり。

果たして、この二つを両立させることは可能なのでしょうか?

そんな中、ヨーロッパで、とある新しい経済モデルが注目を集めていると聞きました。それが「サーキュラーエコノミー」。 現にヨーロッパでは、環境への負荷を大幅に下げつつも、新たな経済利益を創出したり、人々の幸福度を高めていく......そんな実例が次々に生まれているのだそう。

「自分でパーツを修理・交換しながら使い続けられるスマートフォン」
「古くなったら返却し、新しい一着に交換できる、リース型のジーンズブランド」

これらはそのサーキュラーエコノミーの一例。どれもユニークな発想にハッとさせられます。

https://sdgs.yahoo.co.jp/originals/100.html

みなさん、昨年から僕がクリフトの「ザラキ!」ぐらいの頻度で唱えてる「サーキュラーエコノミー」をご存じでしょうか。大体の人が「また新しい横文字が出てきたなぁ」と思っているはずです。安心してください。ぼくも全く同じ気持ちです。

これは完全な主観ですが、世の中のトレンド的な横文字は、代理店やコンサルが新たな価値を見出すために持ち込んで普及させるイメージがあります。あってないような中間層の言葉の定義が、マジックワードとして機能を果たし、新たな市場価値を生んでお金を生む。

では、サーキュラーエコノミーはそことどう違うのか?って言われると「根本的な思考のフレームワークだから、なんか違うんだよな〜!純粋に学びの視点としておもしろいんだな〜!」ということしか今のところ言えません。2022年時点でアクセンチュア含めて名だたる大企業が、この言葉を用いた世界に入っているのは否めないので。

ぼくが惚れ込んで100冊仕入れをした安居昭博さんの著書『サーキュラーエコノミー実践』。飲み会で知り合って、本を読んでおもしろがり、自主的な出版イベントを長野、京都、秋田と三度もご一緒しています。本を読んだだけでもわかりきれない。イベントを三度ご一緒しても、まだまだわからないことがある。

ぼくの大好きな「知れば知るほどに、わからないことが増える」状態を常に提供してくれるのが、サーキュラーエコノミーのおもしろいところだと思っています。わかりづらいからこそ、前述のマジックワードとして機能しにくい性質があるかもしれません。

以下、先日Huuuuで制作した安居さんインタビュー記事の引用です。

── どうして今、サーキュラーエコノミーが重要視されているのでしょうか。
これまでの経済・社会と、現在で「合理的な仕組み」の認識が変わってきたことが大きいと思います。
── 「合理的な仕組み」が変わってきた......?
戦後から現在に至るまではGDPをベースにした「経済成長」が重視され、経済成長によってあたかも社会のすべてがよりよくなるかのようにも捉えられていました。その観点では、大量生産・大量消費を行うことが合理的だったんです。でも、GDPでは廃棄物や環境汚染による影響は考えられていませんでした。

さらに現代では世界人口増加に伴い、石油や石炭、レアメタルのような枯渇性原材料の安定供給が危ぶまれたり、経済成長を偏重するがあまり労働環境での人権侵害が横行してしまったり、生物多様性が著しく損なわれてしまったり......。そして特に、経済が成長したとしても必ずしも人々の暮らしの豊かさや幸福に繋がっているわけではないという認識が広がり、従来の大量生産・大量消費を基にした社会・経済の仕組みを改める必要性を多くの人が感じるようになってきました。

例を挙げると、日本では食の大部分を輸入に頼る一方で、年間600万トンも食品ロスが生まれていますし、製造された大部分が処分されると言われる衣類在庫、再活用率の低い電子廃棄物など資源を取り巻く課題が多くあります。サーキュラーエコノミーの観点に立って「発想の転換(Rethink)」をしてみると、むしろこうした資源ロスの多い日本にこそ可能性があることが見えてくると思います。これが私が日本にサーキュラーエコノミーが必要と感じる大きな理由です。

https://sdgs.yahoo.co.jp/originals/100.html


昨年12月に秋田「にかほのほかに」で開催したイベント


サーキュラーエコノミーはメガネである


廃棄ゴミを減らして、自然と経済を循環的にまわすサイクル自体は理解できるものの、結局のところ自分なりの実践と合わせて考えるのが肝要。知識と実践をかけ合わせると解像度が高くなるんですよね。

あまりにも対象が大きくて広いからこそ、サーキュラーエコノミーのメガネをかけることで、日々の暮らしや仕事の中で発見が生まれる。これまで無意識にスルーしてしまっていた事柄が急に見えてくる。自分なりの発見を点として捉えたら、点と点を結んで線にすることで理解が深まるでしょうし、数多の線を見つめたときに、サーキュラーエコノミーの概念である「円」自体が理解できるんじゃないかと思います。

しばらくサーキュラーエコノミーはメガネ説を唱えていきます!

メガネのサーキュラーエコノミーを表現しました

元文部化学副大臣で社会変革のプロ・鈴木寛さんが話していた「5%変われば、社会は変わる。人は微力だが無力ではない」という言葉がすごい大好きなんですよね。ぼく自身は100%の人たちに何かを届けることが向いていないこともあり、いかにコアな5%の人たちと出会うのかが生きる指標になってきています。

政治の世界然り、イノベーションを起こすファーストペンギン然り、まちづくりの文脈でもなんでも、誰かがリスクをとって、一歩目の行動を表すことが大事です。その後に身近な人たちの行動変容につながって、二人目、三人目と拡がっていく。今回のサーキュラーエコノミーは、まずは主体的におもしろがれるアイデア勝負のフィールドだからこそ、より大きな円を描ける可能性が高いです。

いきなりサーキュラーエコノミーを100%理解してくれ〜〜!ではなく、まずはサーキュラーエコノミーのメガネかけてみません? 日本ってそもそも循環型の農業や林業を営んできた歴史があるからこそ、どこの地元でも、どの産業でも廃棄を出さないためのアイデアはいくらでもあるはずです。

軽い投げかけから社会変容を促す。例えば、メガネフレーム自体の素材をサーキュラー的に作ってみて、JINSとコラボしてみるとか。そういう発想もいいですよね。もし興味を持ったら、安居さんのインタビュー記事、もしくは『サーキュラーエコノミー実践』の本を読んでみてください。シンカイのECなら新刊なのに640円引きで買えます!(これはサーキュラー的ではないかもしれません。ただの気合と意地)



1982年生まれ。全国47都道府県のローカル領域を編集している株式会社Huuuuの代表取締役。「ジモコロ」編集長、「Gyoppy!」監修、「Dooo」司会とかやってます。わからないことに編集で立ち向かうぞ!