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死を想い、これからの生を問うプロジェクト『DEATH.』―メメント・モリを紙に残す

「死を想い、これからの生を問う」

私の行動原理には、常に「死」が存在しています。20代前半で体験した身近な死。精神がボロボロになって、生きる理由探しに奔走した記憶が心のどこかにいまも横たわっている。四十九日を含めた仏教の仕組みは、残された側の気持ちに区切りをつけてくれるんだな…と若いながら感じ取れたことと、今の人生観(=死生観)に繋がりがあるのは間違いありません。

人生を支えてくれたヒップホップも同様。命を燃やしたラッパーは死んでしまう。大阪時代ではTERRY THE AKI-06、上京してからは不可思議/wonderboy。生きた証とはなんだろう。死とはなんだろう。そんなことを日々考える習慣が誰しもあると思います。

詩人・谷川俊太郎が出演した不可思議/wonderboyのドキュメンタリー映画の中で、イギリスの哲学者「O.S.ウォーコップ」の『生きた挙動と死の回避行動』という考え方を引用しました。

「人間は本来生きるために素直な行動を取る生き物。現代は医療や薬に頼って延命するなど死から回避する行動が目立ちすぎている。その点“彼は生きた挙動”そのものだ」

口癖の「やってこ!」も、いまも大事にしている「やる or Die」なんて言葉も”生きた挙動”がおもしろければおもしろいほどに、台風のような大きなエネルギーを生んで、他者に影響を与える……その可能性を信じているからかもしれません。軽自動車みたいな身体性で身体に鞭打ちながらも生き急ぐ。時代と年齢と役割がグッと噛み合った期間が限られているからこそ、やれるときにやったほうがいい。死んだら、終わりなのだから。

そんな長年の想いを込めたプロジェクト『DEATH.』がスタートしました。上京直後からお世話になっている株式会社KEEP ALIVEの西田さん(東京四大恩人の一人)、成田さんに声をかけられて、会社名にひっかけた要素とHuuuuとして挑みたいテーマを掛け算。

「不確実性の高い世の中で、KEEP ALIVEがテクノロジーの力で企業を支援する。企業を死なせない。まだまだ、やれる」

このメッセージを伝えていきたいなと、主担当の日向コイケくんが死と向き合いすぎて毎晩うなされる進行で形になりました。めっちゃ大変そうだった。考えても正解はなく、自らに軸となる編集指針をもたなければ他者の言葉に惑わされてしまう。彼の代表作にきっと育ってくれると思います。

ロゴデザイン+ブログデザイン(久しぶりのはてなブログ!)は、ずっとファンで仕事をお願いしたかったPLANTの植木駿さんにお願いしました。DEATHのロゴをLIFEの「L」にも見立てたシンプルで強度のあるデザイン。あがってきたときはゾクゾクしました。

初回は、「法人×死」「デスマッチ×死」のふたつの側面から死を問い直しています。めちゃめちゃおもしろいです。2記事とも絶大な信頼をおいているライター「すずきあつお」さんに執筆してもらっています。

●ゾンビになるな、応答セヨ。「with DEATHの時代」に求められる念仏的人生観(現代仏教僧・松本紹圭さん)

●「生きて帰るまでがデスマッチ」47歳カリスマレスラーが今日もリングで血を流す理由(デスマッチファイター・葛西純)


たぶん一年後ぐらいには「DEATH.」の本が風旅出版から発売します。とりあえず自費出版の予定ですが、私たちが向き合っていることに関心のある出版社さんがいたらぜひお声がけください。強度の高い2000部をしかるべき人に届ける。ウェブはプロセスで、ゴールは紙の物質。永遠がないからこそ、生は輝く。死ぬ気でやれば、生は輝く。

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「メメント・モリ」という言葉があります。

ラテン語で「死を思え」を意味するこの格言は、疫病が大流行した14世紀のヨーロッパにおいて、生と死が隣り合わせにあることを示し、当時の人々の大きな行動指針になったと言われています。

医療技術の発展により、人類はさまざまな病苦を克服。「人生100 年時代」を迎え、「死」は遠ざけられました。しかし、そのことによって、私たちの「生」は本当に豊かなものになったのでしょうか。

急速に変わる社会のなか、日々押し寄せる情報の波に踊らされ、自らの人生を自らの意思で顧みる機会が減っているようにも感じます。日常から「死」の影が遠ざけられたことで、気づけば「平和ボケ」に陥っていたのかも知れません。

そこにやってきた気候変動、未知のウイルス、戦争のニュース……。このような一連の出来事は、私たちにまざまざと「死」を意識させました。未だ不安や恐怖は尽きない中で、これらが幸運だったとは言いません。けれども、今一度立ち止まって考えるきっかけを与えてくれたことは確かでしょう。

生まれてきた以上、誰しもに「死」は必ず訪れます。生きることがその道程だとするならば、「死」について考えることは、すなわち、どう生きるかを考えることでもあります。

本プロジェクトでは、宗教家や学者、スポーツ選手……あらゆる職業や立場の人との対話を通して、「死」を探求します。常識や固定観念に縛られず、多面的に「死」を捉えることを通じて、これからの生き方を問う上での糸口を探ります。


制作チーム・クレジット

KEEP ALIVE
https://www.keep-alive.co.jp/

■プロジェクト概要
媒体名:DEATH. (デス)
公開日:2022年4月27日(水)
運営主体:KEEP ALIVE株式会社
企画制作:Huuuu inc.
プロデューサー:徳谷 柿次郎(Huuuu inc.)
担当編集者:日向 コイケ(Huuuu inc.)
アートディレクション・デザイン:植木駿(PLANT)
デザイン:高橋尚吾



1982年生まれ。全国47都道府県のローカル領域を編集している株式会社Huuuuの代表取締役。「ジモコロ」編集長、「Gyoppy!」監修、「Dooo」司会とかやってます。わからないことに編集で立ち向かうぞ!