見出し画像

【評価・感想】原点回帰?ヴァルハラとも比較『アサシンクリード ミラージュ』レビュー

『アサシンクリード ミラージュ』は、2023年に発売されたシリーズの13作目です。

2020年に発売された『アサシンクリード ヴァルハラ』の拡張として始動したと言う今作は、シリーズの原点へと立ち返ることを目標とした原点回帰的な一作です。

【あらすじ】ヴァルハラより前、9世紀のバグダッド。路上での犯罪で生計を立てていたバシム。ある仕事をきっかけに、隠れし者と接点を持つ。


評価

オープンワールドの特徴

『アサシンクリード オリジンズ』から、少なくとも『アサシンクリード ヴァルハラ』までは、オープンワールドRPG路線を採用した作品になり、広大なオープンワールドに、膨大なコンテンツを詰め込むことで、プレイヤーを離さない作りが特徴でした。

単純にプレイ時間だけを見ても、『アサシンクリード オデッセイ』や「ヴァルハラ」のメインクエストは、従来の作品の2本分ほどあり、そのメインクエスト以外にも、過去作のサブ要素を足してもまだ足りないほどの遊びが用意されていました。

「オリジンズ」以降は、そうした拡大路線が一つの特徴になっていたので、その逆を行く規模感の今作は、その流れに一石を投じる存在と言えます。

全体的に、そこまで時間を掛けなくても、ゲームをコンプリートできる量に抑えられています。

例えば、メインクエストは20時間以下でクリアすることを想定した内容ですし、サブ要素も、今回は依頼扱いの20個前後のサイドクエストと、あとは収集物くらいになり、遊び切ることは難しくありません。

私の場合、「ヴァルハラ」のメインクエストをクリアする時間の半分以下で、ゲームをコンプリートすることができました(30時間弱)。

そんな今作は、「オリジンズ」や「オデッセイ」「ヴァルハラ」を大作とすれば、準大作のような作品と言えます。

少し頑張ればコンプできる範囲で、ゲームがまとまっており、果てしなき大冒険や途方もない数のサブ要素が特徴だった「ヴァルハラ」までとは、真逆の作品になっています。

「オリジンズ以降のアサシンクリードのようなボリュームを求めるか」「初期のアサシンクリードのようなボリュームを求めるか」であれば、今作は後者に向けたゲームになります。

そして、私は完全に後者だったので、今作の作風は好意的に受け入れました。

海戦や略奪に代わるものはないですが、アサシンクリードの要素がコンパクトにまとまっています。ストーリー性のあるサイドクエストに、武器や防具の収集など、最低限の要素はちゃんと揃っています。

強いて言えば「アサシンの墓所的なものが欲しかった」「バグダッドの物語(ヴァルハラにあったその場で解決する小話)がもう少し欲しかった」というのはありますが、一つのオープンワールドゲーム、アサシンクリードとして、概ね満足できるものになっていました。

今作を「オリジンズ」路線を発展させた新作ではなく、初期のアサシンクリードのようなものだと思って遊べるのであれば、予想を裏切ることはないゲームなのではと思います。

これは原点回帰?

「アサシンクリード」としては、「オリジンズ」以降の作風に、ところどころ一作目や『アサシンクリード ユニティ』の要素が加わったような印象を受けます。

基本的に、どのクエストも、アクションでもステルスでも遊べる作りになり、敵の屋敷や野営地を自分なりの方法で攻略することができます。

目標のみを指定して、あとは自由に遊んで良いという作りは、『アサシンクリード オリジンズ』や『アサシンクリード オデッセイ』『アサシンクリード ヴァルハラ』と同じです。

その一方で、ステルスプレイを意識させる点は、一作目を彷彿させるところです。

今作では、人前で暴れると手配度が上昇していく仕組みになっており、レベル3まで行くと街中での行動がかなり制限されます。加えて、発見時の敵の追跡もしつこく、振り切るまでは、クエストを進めることができなくなります。

"大暴れできるが、しない方が賢明"というバランスは、一作目っぽいです。

さらに、ゲームシステムとしてステルスを意識させるだけではなく、今作は「隠れし者(※アサシン教団の前身)」が組織化された後ということで、ゲーム内での行動指針が、その教義に沿ったものになっており、そういう面でも、ステルスプレイを意識させるところがあります。

メインクエストの山場である暗殺ミッションの方は、「ユニティ」っぽい作りです。

「ユニティ」では、"ブラックボックス ミッション"と呼ばれる暗殺ミッションが導入されました。

ターゲットへのアプローチ方法が複数用意されており、その中から自分に合った方法を選び、実行するというものになり、その比較的自由度の高い暗殺が「ユニティ」の特徴でした。

今作の暗殺ミッションも、それと同じスタイルです。

ターゲットの周辺には、いくつかのアプローチ方法が用意されており、お願いを聞いたり、賄賂を渡したりすることで、それがアンロックされる仕組みになっています。

"アサシンクリードを暗殺ゲーム"とした場合、"ブラックボックス ミッション"は、そこを強化する要素になっており、それが本格的に復活したことは、「ユニティ」もそうだったように、今作の大きな特徴になっています。

あとは、フリーランを中心にした移動の復活は、決定的にアサシンらしいです。

もともとこのシリーズは、垂直性のあるオープンワールドをフリーランで駆け抜けて移動することが、他のオープンワールドゲームとは一線を画する点でした。

オープンワールドでの移動が、パルクールを駆使した一種のチャレンジになっており、迷路のような都市を走って、目的地へと向かう遊びが斬新でした。

今作では、久しぶりにその移動をフィーチャーしています。

舞台であるバグダッドは、建物が密集する都市になり、フリーランの格好の遊び場です。ここを舞台に、シリーズ初期を彷彿させる走りが復活しており、どのルートを通るかと考えて、テンポよく移動する楽しさが再び味わえます。

『アサシンクリード シンジケート』では、便利なロープランチャーばかり使っていたので、私にとっては「ユニティ」以来の走りが楽しめる作品になり、ここが、もっとも"昔のアサシンクリードが帰ってきた"という気分にさせてくれる部分でした。

全体的に、今作は"オリジンズ系統のシステム"で、一作目や「ユニティ」の要素を再現したようなゲームになり、「古くからのシリーズファンが昔のアサシンクリードを再訪するのに」「新しいシリーズファンが昔のアサシンクリードに触れるのに」適した作品になっていると思います。

余談ですが、クエストの作りは『アサシンクリード オデッセイ』風だったりします。

"コスモスの門徒"を特定したのと似たやり方で、ターゲットを特定して暗殺を実行します。特定する過程で、盗聴したり、尾行したりと言った昔ながらの任務が用意されています。

「オリジンズ」以降のスタイルと、旧シリーズのスタイルを上手くミックスしています。

プレイ部分をもう少し詳しく

まず、ステルスは『アサシンクリード オリジンズ』に近いですが、ステルスキルは一撃で決まるので、旧シリーズ寄りのバランスです。もしくは、『アサシンクリード ヴァルハラ』を一撃暗殺をオンにして遊んだものに近いです。

基本的には、いつもの甘めのステルスになっていますが、今作ではマークした敵を瞬殺できる"暗殺の極意"や便利なガジェットなどもあり、それが使えるようになれば、さらにステルスプレイはラクになります。

  • 細かな動きが苦手で、きっちり遊びたいステルス時は苦労するときがあった

雑いところは、必殺技やガジェットを使うことでカバーできる部分ですが、このシステム上で、ステルスプレイを遊ぶ不便さを感じる瞬時もありました。

という具合で、良い意味でも悪い意味でも、"いつものアサシンクリードのステルス"です。

アクション面も、「オリジンズ」系統のシステムです。

ただ、受け流しに成功すると、ザコであれば一撃でキルできるときがあり、そこは昔のカウンター攻撃っぽい感覚が少しだけありました。

アクションもステルスも、「オリジンズ」系統になり、それを遊んだことがあれば、すぐに理解できるはずです。

一応、触れておくと、今作にはレベルシステムはないです。

"見習い"や"アサシン"など、現在の階級が一種のレベルになっていますが、それを無視して遊んでも、特に詰まることはありませんでした。

まとめ

初期作の復刻版としては、非常に満足できる一作でした。

オープンワールドとフリーラン、ステルスと暗殺など、かつてこのシリーズを象徴する要素だったものが、今のゲームシステム上で上手く再現されており、これを再び遊ぶことができた点が良かったです。

私は、『アサシンクリード オリジンズ』以降の路線もいける口で、もっと言えば『アサシンクリード オデッセイ』や『アサシンクリード ヴァルハラ』もかなり気に入った作品なのですが、今作を遊んで、以前のスタイルの良さも再確認することができました。

様々な理由から"昔のアサシンクリードを遊びたい人"とって、今作は理想的な一作になっています。

個人的には、今作のシステムを応用した過去作のリメイクに期待です。

ストーリーの繋がり

今作には現代編がなく、その面では入りやすいのですが、基本的にストーリーは、『アサシンクリード ヴァルハラ』を遊んだことを想定したストーリーになっています。

ストーリーの大部分は、初めてでも楽しめると思いますが、結末まで行くと、"ヴァルハラでの種明かし"を知っていないと、展開がよく分からないのではと思います。

ちなみに「ヴァルハラ」には、無料の追加ストーリーとして、「ミラージュ」とのコラボクエストが配信されています。「ミラージュ」に登場するロシャンの背景を少しだけ補足してくれます。

この記事が参加している募集

全力で推したいゲーム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?