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【評価・感想】『フォールアウト3』レビュー

今作は、2008年に発売された「Fallout」シリーズの三作目です。

あらすじ:2277年、核戦争により荒廃したこの世界では、一部の人々が"Vault"と呼ばれるシェルターの中で暮らしていた。そのうちの一つ"Vault 101"の住民だった主人公は、失踪した父のあとを追って、外の世界"Capital Wasteland"を冒険する。


新生Falloutは衝撃的だった

今作は「Bethesda Game Studios」による”Bethesda版Fallout”の一作目です。

現在では“Interplay版”とも呼ばれるそれまでの「Fallout」は、アイソメトリックなCRPGで、見下ろし視点で行う探索とターンベースの戦闘、豊富なテキストと意味のある選択の数々が特徴のゲームでした。

“Interplay版”で印象的だった各種設定は受け継ぎつつも、ゲーム自体は「Bethesda Game Studios」が得意とするオープンワールドRPGに仕上げたのがこの「3」です。

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今作では、3Dグラフィックで表現された広い世界を自由に冒険します。

チュートリアルを終えた時点で、ゲーム側から何かを強制されることはなく、どこに行き、何をするかはプレイヤーの自由というゲームで、実に”Bethesdaらしい”ゲームになっています。

発売当時は、その自由さに衝撃を受けました。

いわゆる”Bthesdaゲー”自体は、今作の直前に日本でも『The Elder Scrolls IV: Oblivion』が一部界隈で話題になっていたので、私もうっすらと存在自体は知っていたのですが、実際に遊んだのは、この「3」が初めてでした。

それまで遊んだことがあったオープンワールドゲームと言えば、「Grand Theft Auto」か、それ系のオープンワールドゲームに限られていたので、それらとはまた異なる自由さのこのゲームは、あまりにも刺激が強すぎました。

「メインクエストを放置して、放浪やサイドクエストを楽しんでも良い」「クエストには複数の解決法があり、どれを選んでも良い」など、色々な意味で型に嵌まらないゲームという印象でした。

私の場合、こうした世界を冒険すること自体も初めてでした。

核攻撃により荒廃した世界と突然変異したミュータント、モヒカン頭のイカれた悪党など、私にとっては”それまで見たことがない世界”が目の前に広がっていました。

外の世界に出てすぐ。太陽の光が眩しい

そうしたゲームだったので、目に入るもの触れるもの全てが新鮮に感じられました。

「いきなり何も知らない世界に放り出される」という点では、外の世界に出てすぐの主人公と立場は同じで、個人的には、このシリーズで、もっとも主人公に近い視点からゲームを遊び、ストーリーを体験することができた「Fallout」だったと言えます。

発売から随分と経ち、「Fallout」や”Bethesdaゲー”が広く知られるようになったことで、あの時にこのゲームが持っていた魔法のいくつかは解けてしまったかも知れませんが、発売当時は「Falloutとはどんなものか」はもちろん、オープンワールドゲームのもうひとつの形を見せてくれる特別なゲームでした。

ロケーションとクエスト

オープンワールドゲームとしては、現在の”Bethesdaゲー”を遊んだことがある人にもお馴染みの作りです。

チュートリアルを兼ねた導入を終えると、「あとはご自由に」というゲームで、プレイヤーが自主的に動くことを良しとするゲームデザインです。

ゲーム世界には、見るべきロケーションと様々なクエストが用意されています。

各地には”こうなる前に”稼働していた工場や人々が暮らしていた住宅などが存在します。これらは「The Elder Scrolls」で言うダンジョンになっていて、メインクエストと並行して、ユニークなアイテムや売れるガラクタを求めて探索します。こうした場所には、ゲーム世界を語る情報が眠るコンピュータや、かつてここで行われていたことを匂わせる環境ストーリーが用意されており、それらも摘みながら遊びます。

ファストトラベルを除くと、移動手段は徒歩のみで、荒野を練り歩くゲームですが、歩いていると何かしら気になるスポットが見つかるようになっていて、歩くことが楽しいです。

また、元々のレトロフューチャーなアメリカをテーマにした世界と、今作からのラジオ放送の相性もよく、軽快なトークとオールディーズの音楽がこの世界をより一層魅力的な存在にしています。

”Bethesdaゲー”らしい、手作り感のある(手触りの良い)オープンワールドが用意されています。

今作は、サイドクエストの出来も非常に良いです。

多くを語るとネタバレになるので詳細は省きますが、サイドクエストにおけるストーリーの切れ味がすごくて、遊ぶ度にこの世界で生き抜く人々の論理には驚かされますし、ごくたまにある心温まるクエストに安らぎを覚えます。

もちろん、サイドクエストもプレイヤーの選択によって展開が変化するので、お話の面白さとは別に、難しい決断を繰り返してクエストを進めていく面白さもあります。

そこまで数は多くないですが、サイドクエストはどれも面白いと感じましたし、シリーズの中でも特に面白い方だと思います。

従来のFallout的な世界と、Bethesda的なオープンワールドの相性が非常に良いです。

アクションRPGとして

RPGとしては、良い意味で緩く遊べる作りです。

以前の「Fallout」では、取り返しのつかない要素があり、やり直した方が早い状況に陥ることがありましたが、そうしたシビアさはなく、カジュアルに遊べます。

もちろん、序盤はその辺にいるレイダーにもビクビクしましたが、中盤に差し掛かる頃には強くなっていて、終わる頃には最強になっていました。

よほど極端なことをしない限り、初期のステータス設定をミスしても取り返す機会は用意されていますし、自ずと万能型に落ち着くようになっているのだと思います。

レベルアップも比較的早く、敵に四苦八苦する時間は最小限という印象で、多くの人にとって遊びやすいバランスだと思います。

アクション部分は、FPSであり、TPSです。

今作ではターンベースからリアルタイムの戦闘になり、かつ視点も一人称視点と三人称視点を切り替えることができるようになり、アクション色が強くなっています。

FPS、TPSとしては”必要最低限”という仕上がりで、あまり言うべきことはないのですが、耳に響く銃声と激しいゴア表現により、撃っていて気持ちが良く、個人的には悪くはないと思いました。

「Fallout」の戦闘としては、「V.A.T.S.」の存在は非常に大きいです。

「V.A.T.S.」は従来のターンベースの戦闘と部位破壊をミックスしたようなシステムになっていて、画面を一時停止させて部位を狙い撃つというものです(部位を指定する際はアクションポイントを消費する)。

シューター的には、激しい戦闘の中でも落ち着いて急所を狙えるという点で良いシステムですし、「Fallout」的には、従来の戦闘の感触を残す良いシステムになっていて、センス抜群の新システムです。

今作で、アイソメトリックCRPGからオープンワールドRPGへとゲームが劇的に変化しましたが、プレイ部分では、この「V.A.T.S.」が異なる両者を強く結びつける存在になっていると言えます。これがあるおかげで、ちゃんと「Falloutの戦闘だ」と感じられます。

RPGとしては、カジュアルに主人公の育成が楽しめるゲームになり、アクションゲームとしては、「V.A.T.S.」のおかげで腕に自信がなくても遊べるしと、全体的に、遊びやすいアクションRPGになっています。

総評

今回の再プレイで、改めて面白さを再確認できました。

相応に時代を感じさせる部分はありますが、荒涼とした荒野と凄惨な都市部で構成された印象に残るオープンワールドと、一度遊ぶと忘れられないユニークなクエストの存在は大きな魅力で、発売からどれだけ時間が経っても、何回遊んでも、良いゲームでした。

今作は、オープンワールドRPGの名作です。

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