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ひとりぼっちのコッコ

我が家には白いニワトリがいます。
オンドリなので卵は産まない、でもいずれ食用になるからと3羽もらってきたものでした。

いつもは鍵付きのニワトリ小屋で飼っていますが、ときどき扉を開けて庭に放ちます。
ある日、小屋に入れ忘れたら、翌朝は2羽になっていました。
キツネかタヌキか・・・、きっと狙われたのでしょう。
暴れたときに落ちた羽があたりに散らばっていました。

梅雨が来て、雨の日が多くなるともう1羽のニワトリの元気がなくなってきました。
餌も食べなくなり、どんどん衰弱していきます。
そして、とうとう小屋の隅で丸まったまま動かなくなってしまいました。

ついに、ニワトリは1羽になりました。
しかし、この子はいたってマイペースで食いしん坊で甘えん坊。

与えられる餌は独り占め、好きなだけ食べることができます。
庭に出れば、抜かれた大根、白菜やキャベツやそれにつく虫たちも食べ放題。
とくに好きなのは、ごはん粒や粉もの。
父の残したご飯を食べて、食べて食べまくっていたら。

まるまると太ってしまいました。
この大きさだと、そこんじょそこらの動物には負けません。
たとえ鶏小屋に戻れなくても平気です。
ただ、その体重は膝によくないのでは?と心配するほど。

しかし、ひとちぼっちは寂しい。
私が餌をあげに外に出ると、大騒ぎです。
小屋を素通りしようものなら、バタバタと羽ばたいてアピールします。
小屋から出すと、走って追いかけてきます。
右に左に大きな身体を揺らしながら。

そして、おしゃべりです。
コッコ、コココ。コココココ、コッコ。(自由なリズムで、どうぞ)
私が洗濯物を干すときも、ゴミを燃やすときも、ずっとそばに来て話しかけて離れません。
こんなに懐かれると、さすがにかわいい。
すっかり情が湧いてしまいました。

ところが、正月が近づいたある日。
母が「そろそろ食べ時だなぁ。」とつぶやいたのです。
まるで、赤ずきんちゃんを狙う狼のような表情で。

私はすかさず、「だめ!! この子は私のペットだから絶対食べないで!!」と嘆願しました。
母は仕方ないなぁ、と言いながらも諦めきれない様子でした。
ゆ、油断ならない。

しかし、私を追って身体を揺らしながら走ってくるニワトリを見て、大爆笑。
ちょっと食べ時を逸したかも、と諦めてくれた様子でした。

それから、毎日餌をあげ、天気のいい日はお日様の下で通じない会話をしながら、楽しく過ごしていました。
ひそかに「コッコ」と命名して。

ところが!!!
昨日、台所のテーブルの上に大きなたまごが一個。
ダチョウのたまごのような大きさです。(見たことないけど)
「このたまご何??」と聞くと、うちのコッコが産んだというのです。

まさか!!! だって、コッコはオンドリでしょ???
みんなが驚きました。
産んだところを見た人はいないので、にわかには信じられません。

半信半疑ですが、この大きなたまご、腐らせるわけにもいきません。
今はたまごも高いのです。
何にせよ、目玉焼きにしようと割ってみると、見事に双子のたまごでした。
おみごと!!

そして、今朝。
ニワトリ小屋に餌を持っていくと、おっ!!!
やっぱりある、肌色のかわいいたまご。
手にすると、ほんのり暖かい。産みたてです。

なんだ、コッコはメンドリだったんだね。
あんなに大きかったのに、大人になってなかっただけだったんだ。
どうりで朝、コケコッコーって言わないと思ってたよ。

一人前になったコッコ。
今日も近寄ってきては、自慢げにおしゃべりします。
いつもよりずっと饒舌。

そういえば、たまごを生み始めて(まだ2日だけど)少しスリムになったような気がします。
えっ、ずるいよ、自分だけ。



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