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犬を見る人2

犬を見る人の朝は早い。犬を見るためなら早起きも辞さない。朝からドッグランのある公園を調べる。自宅から30分以内で行ける公園を見つけた。その次は朝食を食べながら身支度だ。身支度を整える速度は音速を超える。部屋はソニックブームでもう無茶苦茶だ。しかし関係ないのだ。私は犬を見る人なのだから。

そうは言っても、この現代に生類憐みの令が出されたら一揆に参加すると思う。部屋に武器らしい武器は無いから、アルミ製のハンガーを持っての参戦になると思う。犬と犬を見る人の距離感はそんな感じだ。

星野源『SUN』を聴きながら公園に向かう。この曲のリズムに乗ると、非常に歩きやすい。またこれくらいの季節の良く晴れた午前中というシチュエーションがよく合うのだ。
日差しは少し強いが、電車の車窓からの景色もいい。緑がずいぶん深まってきた。

最寄駅から公園まで5分ほど歩く。どんな犬がいるんだろう。わくわくする。人を気にしながらスキップをかます。未だに耳から星野源サウンドが流れている。
曲がり角から犬が出てきた。犬を見る人は焦らない。すぐにスキップを止める。犬はチワワだった。犬を見る人のスキップは犬にしか見られていない。犬はじっと見つめてきた。私は犬と見つめあう人にランクアップした。

公園のドッグランは最高だった。芝生の広場の一角にドッグランはあった。小型犬と中型犬以上とで区画が分かれている。
小型犬たちはドッグランの中で暴れ散らしていた。その姿もほほえましい。独特のヒーリング効果がある。キャンキャンという鳴き声が五臓六腑に染みわたる。
大型犬は堂々としていた。が、飼い主の片割れがドッグランから離れようとしたとき、ヒンヒン鳴きながらついていく様をみると、顔中の筋肉が一斉に弛緩した。
弛緩した顔から目じりは垂れ続け、大地に穴をあけた。垂れた目じりはマントルを貫通し、ついにブラジルに到達した。オブリガード!世界は滅亡した!

与太をこきつつ、ドッグランから離れる。いつまでも滞在できるが、犬に要らぬストレスを与えたくはない。犬を見る人、クールに去るぜ。その後は植物園を見たり、ベンチでソフトクリームを食すなどした。

ドッグランはいい。こうなれば日本中、いや世界のドッグランを見てみたい。きっといい出会いがあるだろうし、その土地土地のコミュニティがあって、その土地にしかいない犬も見れることだろう。
ドッグランも遊具があったり、プール付きだったり、屋内だったり様々なようだ。いいなー世界中で犬を見る人にランクアップしたい。


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