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夢日記5

夢日記5


◯注意
 起きてすぐにiPhoneのメモ機能で書いたものに少し手を加えてあります。それでも、起きてすぐの僕の感覚で組み立てられた文章であるから、読みづらいと思われます。僕も読んでいてよくわからない。
夢日記をつけるようになってから暫く経つのですが、そのなかでも文章量が多い物を選びました。


 僕は座敷ですき焼きを食べていた。関西風なので、はじめに牛脂とザラメと割下で焼いた牛肉を一枚、取り皿に貰って溶き卵にくぐらせて食べる。僕が美味いと感じるよりも先に座敷の襖が開いて、仲居さんのような人に「お電話ですよ」と言われる。すき焼きを食べてる途中なのに、誰が邪魔をしてくるんだろうと、思いながら仲居さんの後に続いて階段を降りる。階段の下に固定電話があって、それは昔の黒電話のような感じ。カウンターのような平たい場所に受話器が俯せ状態に置かれている。僕が手に取ろうと近寄ると、仲居さんが僕に手渡してくれる。耳に当てると「いつ帰ってくるの? 子供達が待ってる」というような趣旨のことを言われた気がしたのだが、実際には聴き慣れた女の声が聴こえてきただけで、そのような情報は明示されていない筈だった。どちらにせよ、僕はその電話を受けて、帰らなければならないと思った。座敷に戻って、同伴者に4万円渡す。最悪だ、僕は一切れの牛肉しか食べてないのにな。「僕は帰るから、好きなだけ食べて。」と、言って外に出る。

 僕に子供がいるらしい。しかも2人。男と女で顔はイマイチよく分からないのだが、どうやら僕の子供らしい。子供が2人もいるのだから、今の部屋では狭いと言って引っ越しをするらしい。僕の母親に「僕、子供出来たみたいだから結婚するよ」って電話しなければいけないと考えている。考えているだけで、携帯電話に触れもしないのだが。「いつの間に子供が産まれたんだ、いつから十月十日を数えればいいのか…」と呟きながら歩く。何処を歩いているかは情報が足りない。もう、引っ越しの手筈は全て済んでいて、新しい家に家具や諸々が移っていた気がする。僕の視野の範囲だけで認識できる部屋の構造から考えると、どうやら平屋の一軒家らしい。どちらかと言えば和風な造りになっていて、昭和初期の中産階級の家を彷彿とさせるような感じ。畳の部屋に猫と子供、娘より大きい息子は正座していて、なにやら文庫本を読んでいる(スピンがあるから新潮文庫だろう)。「これが彼女から見た、僕のイメージなんだ。だから息子にもそれを与えている。これが母親としての本能で与えているのなら醜悪、愚劣、淫乱、遺伝的脆弱性…」僕が独言る。

 登場人物は大勢いた。僕の他に子供達、子供らの母親、そしてその母親の両親(父親の存在も僕は意識しているのだけれど、母親しか会わなかった)、友人たち(しかも僕の苦手な奴等ばかり)、それから僕の愛人、あとは最後に知恵遅れ(僕が小学生の頃に近所に住んでいた知恵遅れの女、特別支援学級に通っていたわけではないのだが、現在では発達障害と診断される類いに違いないと僕は勝手に思っている。それも手帳持ちを誇るような敗北主義者…)がいた。

 さっきから僕はずっと狼狽している。子供らはどうしてる? 息子の方は部屋の隅で本を読み、娘の方は母親やその友人たちに甘えている。僕が幼い頃は人見知りが酷かったと母から聞いているので、多分僕でなくて彼女の母親に似たのだろう。畳の部屋に猫、黒い猫。僕は皆から少し離れて、部屋の中を蹌踉している。「そういえば子供たちの名前は? 役所に届けは? 出したのか? というかいつ妊娠発覚して、いつ出産したんだ? こんな知らないうちに増えるなんて節足動物類みたいなことがあってたまるか。僕に相談もなしに!」と僕は誰に言うでもなく、しかし子供たちには聴こえないように、そこだけは慎重になって声を上げる。すると子供たちの母親が出てきて「貴方が名前をつけてあげてくださいよ。このままでは『人間』とか呼ぶしかないですよ。可愛いくて、ちいさい『人間』ねって。早く名前をつけてあげてね。私達の子供らが老人になっても誇れるような綺麗な名前。生まれたての子供なら固有名詞を教えるのは時期尚早だからいいけど。もうお兄ちゃんの方は文字まで読めるようになってる。貴方は何もしていないのだから…名前を役所に届けるのも産まれてから1年以内で良いらしいですよ。」と、言う。「そんな馬鹿な話があるか。母子手帳とかよく分からないけど色々あるだろ。僕は弟と違って、そういう行政の煩瑣な申請だの税金だのについて明るくないけれど、君は間違ってる。これだけは確かだ。」「でも貴方、いつも行政や社会の功利なんてどうでもいいって…現実が大事だって…制度や労働の細分化は現実味を希薄に曖昧にするって…」全く話にならないな。子供が産まれたら観念論は無用の長物になるんだ、少なくとも僕の場合は…。

 僕は新しい家のことについて何も知らないので、散策してみることにした。散策といっても風呂場や台所を覗いたり、二、三の部屋の扉を開けてみたり、つっかけを履いて小さな庭に出てみたりするだけ。あるひとつの部屋(それは角部屋で、四方にある壁のうち2面はガラスの引戸になっていて自然光が入りやすい設計)に犬用のゲージがあった。犬の排泄物を受け止めるための脆弱なシートが中に敷いてあり、そこに僕の愛人(それは太宰が使ったような意味での)がいた。僕は「なんでそんなところにいるんだ、狭くて脚が痛いだろうに。早くそこから出てくれ。」と言うのだが、彼女は「いいの、いいの。私はここでいいの。申し訳ないから。」と言う。僕は「こんなにたくさん部屋がある家に引っ越したんだから、この部屋を君が間借りしてくれたらいい。そしたら僕も助かる。なんせ僕の収支に似つかわしくないことに、まだ名前もない子供が2人もいるんだから…」「いいの、いいの。気にしないで。」全く話にならない。僕の残虐性を浮彫にするだけして…僕の善意が自家中毒を起こしているようだ…酸欠、退廃的正義。愛してるなんて口が裂けても言えないな…

 別の部屋に知恵遅れの女がいた。正確に言えば斬時と風呂場ないしは脱衣所に変化していく和室だった空間。僕はなぜここにいるのかと聞いたのだが曖昧な返事ばかり。小さい子供もいるのだから君みたいな余所者は出ていってくれと、いうようなことをなんとか伝えたのだが、目も合わせずに譫言ばかり口にしている。「警察に電話するなんて、警察に電話するのに番号が分からないじゃない。だって電話帳を探しても警察なんて見つからないんだもの。警察の番号はみんな知ってるでしょって言うけど、私はみんなから嫌われてて、みんなから仲間はずれにされてるから…そういうみんなが知ってることも全然知らないの。世間の常識ってクイズ番組ほどつまらないものはないわ。素人がテレビカメラの前に座って擦り倒されて形骸化したマトリョーシカ…私は大切なことは知ってるけど、警察に電話するなんてことが大切なことではないでしょ。大切なことはもっと生活に隣してること。たとえばスターバックスコーヒーの新作、狐の皮衣、チョムスキーの生成文法、シュクメルリのレシピ、バロック音楽の構造分解、ジョンケージの偶然性…」全く話にならないな。白痴的眼球運動の異常性に恐怖する裸の僕…

 僕は大学の担当教授とオンライン面談をしなければいけないことを思い出して、パソコンを探す。「今何時だ? 9時半から面談があるんだ。別にすっぽかしたところで怒られないけれど、僕は学生という身分の無責任さと身軽さを未だ享受していたいのだ!」部屋は僕が急げば急ぐほど、更に猥雑に、更に複雑になる。「こんな時期に引越しなんてするなよ!」どこにも見当たらない。クローゼット、靴箱、押入には僕が嫌悪するスポーツ用品ばかり。それと壊れた絡繰時計…が床を埋めていく。ガラクタの山が積まれ…畳が見えなくなる。全く…話にならないな…。


◯覚醒時に読んで
 そこで起床。実際に面談の時間が差し迫っていて、僕は急いでパソコンを立ち上げた。幸い教授の方が遅刻してくれたおかげで、この夢日記をまとめることができた。と、記憶している。なにやら僕の最近の生活がギュッと詰まったような夢。詳細を書けばもっと長くなったはずだが、教授との誰も望まない面談を控えた僕には、上記の記述が限界であっただろう。と、言うわけでまた。夢を見たら書きます。

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