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こんとあき

わたしは絵本が大好きだ。
絵本作家になりたいと思ったくらい好きだ。
今でも話題の絵本はたまにチェックする。

小さい頃のわたしは窓際で一人で絵本を読むのが好きだった。
弟が病弱で、母は弟にかかりきりだったので、寂しい時にはいつも絵本を読んでいた。
絵本を読むと、物語の中に自分が入った気分になり、どこにでもいける気がした。

特にわたしをどこにでもいける気にさせてくれた絵本が「こんとあき」だ。
有名なので、読んだことがある人も沢山いると思う。

きつねのぬいぐるみのこんの腕がほころびてきてしまい、それを治してもらおうとあきとこんが、あきのおばあちゃんの家に向かう話だ。
たくさんのハプニングに合うのだが、2人で電車に乗ってお弁当を食べたり、砂丘を歩いたり、とにかくマイペースで楽しそうなのだ。

わたしとそんなに歳が変わらないあきができるなら、わたしにもできるのではないか!と妙に勇気づけられたことを覚えている。

自分が行きたいと思った時に行きたい場所に、会いたいと思った時に会いたい人に、自由にそこに行けないことは幼いわたしにとって大きな問題だった。
早く大人になって自由になりたかった。
大人はみんな「大人になったら子供に戻りたいと思うよ」と言っていたけれど、大人になった今でも子供に戻りたいと思わない。

あの頃思い描いていた人生は歩めていないけれど、わたしは今、1人でどこにでも行ける能力を手に入れたのだ。
それだけで、大人になってよかったと思う。

先日、六本木の蔦屋書店でこんに出会って、そんなことを思った。

幼い頃の感情がぶわーーーーっと蘇ってきた。
そっと値札を見た。4730円。
こん、高すぎるよ。
そっと元に戻した。
大人になっても手に入れられないものもある。

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