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【軍事】空想科学『人型機動兵器の軍事科学的考察』第7回/おためし短編小説/第88MS回収小隊(第1話)

(全8,100文字)

【はじめに】

今回から短編小説風に、毎回1話読み切り方式でお送りさせて頂きます。
多分に、かけうどんオリジナルの空想的な考察が入っていますが、ファンタジーとしてとらえて頂ければ幸いです(笑)
何しろ素人が想像で書いていますので、専門家の方が見たら笑われるような文かも知れませんが、ご愛嬌という事でご容赦ください。

【注意事項】
いくら元ネタ=アニメの話とは言え、MSは兵器です。
どうしても戦いのシーンを描くことは避けられません。
人気アニメですら描写の一部を切り取られ騒がれる時代です…。
なので、そういったテーマが苦手、興味が無いと仰る方は、ブラウザを閉じて、下の文章は読まないよう、よろしくお願いします。

本作品は場の設定や、キャラクター設定など、細かい説明は極力省略しております。

無断転載や二次使用はご遠慮ください。

【短編小説】第88MS回収小隊(第1話)

みーん、みんみんみん…

ビー!ビー!ビーッ!

「ウザいなぁ…もぉーっ!アラーム消して!直衛機、弾幕薄いよっ!何やってんの!?」

セミの鳴き声に交じってミサイル警報のアラームが狂ったように鳴り続けている。おかげで作業に集中できない。

わんわん鳴り響くアラームは、対空警戒用のUGV(無人戦闘車)が、飛んでくるATM対戦車ミサイル群をさばききれず、まるで、文句や泣き言を言ってるようにも聞こえた。

最新鋭の機動兵器を回収するために急造された90式戦車回収車(改)の車内は蒸し風呂のような暑さだった。
その暑さが余計にイライラ感を増幅させる。

クーラーが故障して部品請求を出したのが半年前。
戦闘開始までに冷房の修理は間に合わなかった。
AI兵站システムの構築には結構な予算が費やされているのに…。

迷彩Tシャツの上から直接防弾ベストを着ているけど、体中の毛穴と言う毛穴から、滝のように汗があふれ続けている。

ペットボトルの水を一口だけゆっくり飲み込む。
水と言うよりは白湯に近い。
喉は乾き続けているけど、むやみに水を飲んでもバテるだけだ。

私は大つぶの塩飴を一つ口に放り込むと、手のひらの汗をズボンで拭ってマニュピュレータ操作用のジョイスティックを握りなおした。

周囲に展開している防空用のUGVに搭載した7.62mmバルカン砲の弾薬は、たった数分の交戦で全て空っぽになった。

敵・味方の大量の自動兵器同士による無意味な殴り合いの応酬は、いつの間にか全自動で開始され、弾切れと同時にあっけなく終わった。

どんなに大量の無人機を戦場に送り込もうと、弾切れした兵器に出番はない。マガジン(弾倉)が空になった友軍の無人車両は、そそくさと後退しはじめる。

無人機の彼らには感情はない。
プログラム通りの、ごく当たり前の行動だ。
ただ、ここには有人機がまだ残っているんだけどね…。

周りには、ほんの数機のUAV(航空機型無人機)が旋回してるだけ。
しかも、ミサイルは全て発射しつくして監視機能しかない。
そのUAVも、ぽつぽつと落とされ始めた。

UAVとリンクしている監視モニターの映像がひとつ、またひとつと消えてブラックアウトしてゆく。
”目”を潰されるのは、正直、気持ちの良いものではなかった。

前線に展開している無人機の『弾ぬき作業』が行われた後は、大抵、敵の長距離野砲の制圧射撃が飛んでくる頃合いだとも言える。

ドン、ドドン…!ドーン!

案の定、遠くから複数の低い地鳴りの音が聞こえたと思ったら、数十秒後には敵砲弾が周辺に弾着しはじめた。

…通常砲弾!?

セコイと言うか、こっちが回収部隊だから舐められてるだけなのか。
でも、敵がレーザー誘導砲弾を使っていなかったおかげで命拾いした。

被弾して行動不能になったMSの回収作業は難航していた。

自走できるなら私たちの出番なんて最初から無かったけど、その機体は、敵の砲弾が至近距離で破裂したことで片足が吹っ飛ばされ、その時の衝撃で制御系統がダウンしていた。

MSは直接照準火器での撃破が極めて困難な反面、こういった古典的な旧世紀の面制圧攻撃に対して脆弱なのが浮き彫りになった。

操縦室の生態反応を検知するセンサーは生きていた。
パイロットの生体反応はあるけど、バイタルが徐々に下がってる。
余り時間はかけられない。

90式戦車回収車(改)の外部に追加・増設した遠隔制御のマニピュレーターを使って、回収車側のハンガーフックを機体に装着させるだけの単純作業なのに、瓦礫やケーブルの類いが邪魔で、なかなか作業が上手く行かない。

モニター画像を見ながらのマニピュレーター操作は、奥行きの感覚がズレる。…だんだん気持ちが悪くなってくる。いわゆる3D酔いってやつだ。

『小隊長!そろそろズラからねぇとヤバそうっすよ!』
操縦席の伍長が車内通話装置で叫ぶ。
「スモークあと何発?」
『さっき撃ったので全部です!…砲兵に発煙弾を要請します?』
「いや、…いいわ。作業完了!後退するわよ!」

何とか回収用のワイヤーをMS側の牽引用フックに固定して、ハンガーのアームで無理やり機体を引っ張り出すことができた。
あとはケツをまくって退散するだけだ。

「急いで!地雷原の閉塞まで時間がないわ!」
『了解!ぶっ込みますよ!』

1500馬力のディーゼルエンジンが咆哮を上げると、全速力で車体が後進しはじめる。

戦車回収車とは言え、車体は戦車と同じ。
少しでも防護力の高い正面装甲を敵方向に向けたままバックで現場を離れるのがセオリーだ。

シュバババッ!

シュシュシュン!!

空気を切り裂く不気味な音が装甲越しに車内に聞こえてくる。
恐らく敵の無人戦闘車だろう。
曳光弾混じりの射線が四方八方から向けられている。
やがて正面装甲をかすめる弾に機関砲クラスの弾も混じり始めた。

主力戦車と同等の正面装甲に、豆鉄砲を何発喰らってもびくともしないが、装甲越しに伝わってくる着弾音と鈍い振動は、かなりのストレスになる。

回収現場を離れた直後、ついさっきまで私たちが作業をしていた辺りに敵の砲弾が散発的に弾着しはじめた。砲弾の爆風が周囲の建築物をなぎ倒して、あたり一面を更地にしてゆく。

敵の観測機の性能が悪いのか、砲兵の練度が低いのか、集弾率が悪いようにも見えた。おかげさまで、またまた、やられずに済んだ訳だが。

「…ヒトマル、こちらワラビー。回収作業終了。敵との間合いが切れない。FP-202付近に特科射撃を要請!オクレ!」
『ガー…ぴぴぴ…』

急いでボイス(無線)にて支援砲撃を要請するが、雑音しか返ってこない。
電波妨害の影響だろう。無線は使い物にならなかった。

無人機や有人機の自己位置は衛星経由でアップデートされるから、タイムラグはあるけど、モニター上の表示はまだ生きている。

それでも、統合モニターの画面を覗くと、総合状況図に表示された友軍の地上無人機の表示がどんどん消滅してゆくのはわかった。

旧県道沿いの狭い道を、住宅街や工場群の建物を盾にしながら800mほど後進すると廃小学校の校庭が見えてきた。

「ちょうどいいわ、あそこで向き変えましょう。」
『了解!』

戦車回収車は、廃校の運動場にバックで滑り込むと、左右のキャタピラを逆回転させて超信地旋回した。
一瞬でクルマの向きがクルンと前後逆になる。
干乾びた校庭の土がキャタピラに砕かれ、ものすごい土埃が舞った。

ビービービー!

またミサイル警報が鳴り響く。

「しつこい!誘導弾を何発持ってんのよっ!」
『RWS迎撃モードで起動します!』

伍長がRWS(リモート・ウェポン・ステーション)に火を入れた。
RWSタレットに装着された重機関銃が目を覚ますと、タンデム制御で飛んで来たATMを2発とも自動で撃墜する。

ビー!ビー!ビー!

新手のミサイル警報だ。
RWSが出す微弱な電波を拾われたんだろう。
今度は数が多すぎた。
迎撃が間に合わない。

ピピピ!………

キーン!キーン!キーン!

レーザー照準でロックされている警告音に変わった。
一挙に心拍数が上がる…。

車体の四方に装着している対ATM用のレーザー警告機が反応しているという事は、狙ってる奴がどこかにいる証拠だ。
レーザーの照準元は特定できても、こっちには反撃能力がない。

ATМにしては飛翔速度が遅い。
恐らく電動プロペラで推進する形式の自爆型UAVだ。

「伍長!全速力で右手の体育館に頭から突っ込め!適当に左右にハンドルを数回切って、目いっぱい蛇行しろ!」
『はぁ?…りょ、了解!』

スモークも撃ち尽くし、特科の支援射撃もなし。
掩護のUGVも観測機もいない。
もはや最後の手段だった。

フルパワーで蛇行する戦車回収車のキャタピラが廃校の運動場を耕耘機のように耕すと、ものすごい土煙が立ち上がる。
濃い靄の中、体育館の壁をぶち破って戦車回収車を建物の中に突っ込ませる。

自爆型UAVは電気モーターのプロペラ式だったので、トップスピードが遅い。これが初速の速い旧式ATMなら、避けられない間合いだった。

即席の遮断煙幕だったが効果はあったようだ。
土煙で目標を見失った自爆型UAVは、ほうぼうに散って弾着した。

弾頭威力が思ったより弱いな…。

恐らく敵の戦闘偵察斥候だろう。
脚は早いが火力が弱すぎる。

何とか敵の追撃をかわせたところで、タイムリーに友軍砲兵の掩護射撃が開始された。すさまじい衝撃波と轟音が伝わってくる。

砲兵は戦場の女神とはよく言ったものだ。
敵の動きが止まった。

「伍長、このまま体育館の反対側の壁をブチ抜いて国道3号線に出ましょ。白河まで下がったら、友軍の戦闘前哨がいるはずよ。もうちょっとだから頑張って!」
『了解!』

90式戦車回収車(改)は90式戦車と同じ車体だ。
型は古いが乱戦には強い。
1500馬力の戦車エンジンの出力も伊達じゃない。

さすがに回収したMSを背負っていたのでトップスピードは出せなかったが、軽快に障害物を乗り越えつつ白河付近まで難なく進むことができた。

もし、この回収車が装輪車両だったら、穴だらけの道路や倒れた電柱、散乱しているコンクリートのガレキに阻まれて、こんな短時間では到底辿り着くことはできなかっただろう。

友軍の支配地域に近づくに従い、統合モニターには友軍の部隊表示が少しづつ増えて来た。
さっきまでの孤軍奮闘を考えると、友軍が近くにいるだけでホッとした。

もうちょっとで白河だ…。

モニターの状況図に味方車両の表示2つが光っている。
そのあたりに戦闘前哨がいるはずだ。
長六橋の手前のコンビニの駐車場に8輪式の装甲車が2台、市街地戦闘用のカモフラージュネットを被って待機しているのが見えた。
30mm砲塔型の25式ICV(戦闘装甲車)と施設隊仕様の27式APCだ。

「伍長!止まって!」

ガコーン!と親の仇のようなブレーキングで約50tの車体が一瞬で停止する。
車長席のハッチをアンブレラポジションまで上げる。
戦車帽を脱いで、少しだけ外に出してみる。

…狙撃は…ないみたいね。

『戦車・装甲車のハッチからむやみに顔を出すな。』
近代戦での車輛乗車者の心得・鉄則だった。
空中や地上に敵の無人機がいたら、戦車や装甲車のハッチ周辺に人間の頭や顔が見えると、問答無用で迷わず狙撃してくるからだ。
機械は正直だ。
ハッチから少しヘルメットだけ出してやると律儀に撃ってくる。
でも、これが人間の狙撃手だとそうは行かないだろう。

コンビニの駐車場の陰から友軍の隊員が低い姿勢で出てくる。

「君たちがR&S偵察警戒部隊の最後尾かっ!?」
「はい!第88回収小隊長の如月きさらぎ中尉です!敵と接触して遅れました。すみません!」
「待ちくたびれたけど、小隊長が美人さんだから許す!地雷で道路を閉塞する!急いで離脱してくれ!」
「え、えーっと…。あ、ありがとうございます!敵の偵察部隊がすぐそこまで来てます!」
「わかってるよ!行け!行け!」

施設作業分隊の隊員たちが戦車回収車の脇をすり抜けて、92式対戦車地雷を両手にかかえて走って行った。

40年以上も昔の対戦車地雷だ…。

27式多目的地雷のリセッティング作業中に深刻なエラーが出てしまったらしく、やむを得ず、予備で事前に集積していた旧式の地雷を使うしかなかったそうだ。

「そうだ、師団の段列だんれつ(兵站支援エリア)は立田山の北側に変更になってるぞ!3号線をこのまま北上したら、八景水谷はけのみやの手前あたりに師団から誘導が出ているはずだ。」
「ありがとうございます!そちらもお気をつけて!」

後で知らされたことだったが、この施設作業分隊長が道路閉塞の時間延長を連隊に意見具申してくれたおかげで、橋の封鎖時間が1時間延長になったらしい。

もし道路が時間通りに封鎖されていたら、私たちはせっかく回収できたMSと貴重な戦車回収車を敵方に残したまま、みじめに徒歩で逃げる羽目になったかも知れない。

刻々と状況が変化する戦場で、こういった複雑な状況判断はAIにはできなかっただろう。

ー師団段列ー
国道3号線から狭い旧道に入ると、数か所の検問を通過した。
前線整備所に辿り着いたのは、夕方を過ぎた頃だった。

師団段列周辺の道路は、敵の偵察衛星や高高度UAVから発見されるのを避けるため、対空欺騙ぎへん用の3D・IRカモフラージュシートで覆われた車両用通路を通る必要があった。

プロジェクションマッピングを応用した簡易光学迷彩のホログラムシートと対IR用の素材を混ぜたネットだが、偽装効果は絶大な代物だ。
高高度のセンサーを通してここを見ても、ごく普通の道路にしか見えない。

超高額なセンサーの目をこんな低価格な欺騙ぎへん手段でごまかせるのもどうなんだろう…。

さすがに道路のアスファルトに残ったタイヤやキャタピラの跡、残留した放射熱がそのままだと熱線映像を使われるとバレてしまうので、重要なところは砂や水をまいて偽装しなければならなかった。

まともな情報分析スタッフがいれば、車輛の動線と地形を照合すれば、兵站施設の展開状況を予測するのは簡単なことだ。
段列の場所をごまかすために、無人トラックの車列をランダムで運行させ、ニセ情報を垂れ流していた。

当初、師団段列が展開する予定だった地域は、あたかも大規模な兵站支援施設が展開しているようだと見せかけた結果、敵の大規模な長距離ロケット攻撃がそこに集中した。

敵の長距離ロケット攻撃がおさまった直後、現地に相当数の救急車や復旧作業の車両をわざと集結させて、冬用カイロで温めたマネキンを患者にみたてた救助活動を徹底して演じた。

このような欺騙ぎへん活動を積極的に行ったことで、敵はしつこく何もない所に何度もロケット攻撃をしかけてきた。

高精度の各種センサーの機能を高性能なネットワークで繋いだところで、このような原始的な方法に騙される…。

ここは中東の砂漠ではない。

錯雑した地形で、『戦場の霧』を晴らすには、高性能なセンサーがあるだけでは不十分だ。つまるところ、最終的に評価・判断を下す人間の経験とセンスに依存している。AIの情報解析能力が向上すれば、このような子供騙しもそのうち使い物にならなくなる時代も、そんなに遠くはないのかも知れないが。

だんだん暗くなる道を回収車はゆっくりと進む。

夜になっても暑さは和らぐことはない。
いいかげん、シャワーを浴びたかった。
戦場にシャワーなんてあればだけど。
仕方ないので首筋にペットボトルのぬるい水をかけて凌ぐ。

『…小隊長、水足りてます?』
ふいに伍長が車内通話で呼びかけてくる。
「ん?まだあるわよ。欲しい?」
『いや、いいです。足りなかったら、その辺のコンビニ寄っていきますか?』
「いいわねー。じゃビール買ってきてよ。キンキンに冷えたやつ飲みたいわ。」

殆どの住民が避難していて店なんか開いていない。
緊張状態が続いていたから、伍長なりに気を使ったんだろう。
操縦席もきっと暑いし、伍長も眠いに違いない。
暑さで意識が朦朧としていたから、整備所につくまでの間、他愛もない世間話で互いに気を紛らわせ続けた。

施設作業分隊長が教えてくれた通り、3号線を北上し続けると、師団直轄の誘導員が要所に配置されていた。半分は誘導用のロボットだったが。

大型車両1台が通れるだけの道幅いっぱいに、両側のビルや建物をうまく使って大判の対空偽装網が張られたルートを抜ける。
大型商用施設跡地の立体駐車場の地下部分が整備所に転用されていた。

戦車回収車から収容した機体を卸下した時には、既に交換部品一式が並べられていた。
ついさっきまでボロボロだった機体がものの数時間もかからずに新品同様の機体に生まれ変わる。
パイロットも大きな怪我もなく、かすり傷程度で済んだみたいだった。

MSの機体状況は常にモニターされている。前線での戦闘状況や機体の損傷程度は、後方の兵站センターにリアルタイムでデータが送られ、交換部位に応じた整備プログラムが同時並行で組み立てられる。

戦場全体の交戦状況に基づいて、最適な整備サイクルを兵站整備用のAIが導き出し、在庫部品や修復済アッセンブリーの保管場所と輸送手段の紐づけ、輸送ルートの設定までが合理的に算出される。

兵站要員はAIが算定した結論に基づいて、補給ルートの確認や、部品の輸送状況をモニターするのが主な業務になる。どれも特殊なことではなく、民間の流通システムを応用しただけのものだった。

民間流通と違うところがあるとすれば、戦場では装備品には常に損傷がつきもので、それを整備・修理・再利用するまでのサプライチェーンの神経回路を私たちが繋げる必要がある。

戦闘ではどの部品が壊れるかなんて予想はできない。実戦でのデータが蓄積していけば、損傷しやすい部位の傾向などはある程度分かってくる可能性はあるかも知れないが、今はまだ手探りの状態だった。

整備所の兵站システムの端末には、部品の備蓄率やアッセンブリー交換パーツの修復状況が常に表示され、リアルタイムで更新されていた。

前線で破損した部品は、可能な限り回収して修復し、再利用される。一から作り直すよりもコストも手間もかかるが、遠く離れた生産拠点から時間をかけて長距離輸送をすることに比べたら、現地で即使えるパーツが入手できるのは大きかった。

「小隊長!どっちがイイっすか?」

整備所で在庫パーツや輸送ロジックのチェックをしていたら、伍長が小隊管理班のトラックに載せてある野外冷蔵庫から、かき氷と炭酸水をとってきてくれた。

「…悪魔的に冷えたビールがいいわ。」
「じゃ、こっちですね。ほい。」

炭酸水で我慢しろってことね…。
冷たい炭酸水が喉を蹴った。

伍長は、バータイプのかき氷を美味しそうにガリガリとかじっている。

「伍長、一服したら回収車の燃料補給しといて。敵が白河を渡河したら忙しくなるわよ。」
「了解でーす。あ、スモーク入荷してました、補充完了してますんで。」
「さんきゅー。…ビールは?」
「たぶん、連隊からいっぱい差し入れが来ますよ。」

たった1日の警戒部隊同士の小競り合いで、何年分もの神経をすり減らした気がする。

まだまだ序盤なのにね…。

本番はこれからだ…。

益城町一帯に展開していた友軍の偵察警戒部隊が敵の戦闘偵察斥候と接触して丸1日が経過していた。

こちらには重戦力が少ない。
ハンデが大きいのを考えると善戦した方だろう。
初戦は相互とも、どちらが優勢だとは言えない状態だった。

敵主力が人吉地区を抜けて、八代から北上しているとの情報もぽつぽつと入りはじめていた。




(第2話につづく?…かも知れない。)

(注:この物語は全て空想・フィクションであり、現存するいかなる組織・機関・団体、実在する土地や地方とは一切関係ありません。)

【おわりに…】

もう少し登場人物の背景や心情などにも焦点をあててもよかったのかな?とも思いましたが、今回はそこまで筆が回りませんでした。

主人公キャラが主役メカに乗って暴れまくる話ではなく、その後方で苦労している人たちの話を書きたかったんですが、いかがでしたでしょうか?

それではこの続きはまた(^^)

最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございました。

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