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クラスの女子除霊師

「月島ってさ、除霊師なんだってさ」
 視線の先には、月島奈々子がいた。休み時間だというのに、窓際の席で独り憂鬱そうに外を眺めている。彼女の一家は有名な霊媒師らしい。それがいつの間にか除霊ができる女子高生として、クラスに広まっていた。スラっとした長い黒髪に切れ長で冷たい眼をしている彼女は、噂と相まって神秘的に見えた。

 今年の夏休みは、肝試し大会をやることになっている。僕がオカルト好きだとバレてしまったが最後、肝試し大会の場所探しを押し付けられていた。 

 僕は月島の方へ向かうと、彼女の前の席の椅子に後ろを向いて座った。

「ねえ、月島さん」
 僕が彼女に話し掛けていることが珍しいのだろう、周りの視線を感じる。
「なに?」
「除霊師ってほんとなの?」
「それが、なに?」
 細められた目が、面倒なやつがきたのだと冷たく言っている。
「肝試し大会の場所を探してるんだけど、下見に一緒に来てほしいんだ」
 周りの視線を感じなくなった。肝試し大会のことだと理解した女子達は、どうやら僕達への興味を失ったようだ。
「なんでなのよ」
「困っているんだ。誰もついてきてくれないし、月島さんのお墨付きの場所ならみんなも文句ないだろうし。頼むよ!」
 僕は嘘をついた。そうでも言わないと来てくれないだろう。
「はあ、しょうがないわね」
 彼女は渋々ではあるがなんとか了承してくれた。連絡先を交換し、僕は席に戻った。

 日曜日の昼に駅の改札で彼女と待ち合わせていた。駅から出て長めの階段を上り、ロープウェーで更に昇る。そこからしばらく歩き、ようやく目的の場所に着いた。

 古い大きな屋敷に見えるこの建物は、人が住んでいないことは明らかだった。彼女の方に視線を向けると、露骨に不満そうな顔をしていた。中は暗く不気味だった、いかにも出そうな雰囲気が漂っている。っていうか出るんだけど。ふと気になった。除霊師といえどもやっぱり怖いんだろうか。彼女の方に視線を向けると顔が引き攣っていた。まっすぐな通路をおそるおそる進んでいく。

 急に誰かの叫び声が聞こえた。彼女は僕の背後に隠れるようにして、目を瞑ってしまっている。僕は彼女の手を引いて小走りに進む。心臓がばくばくとなっている。

なんとか建物から脱出した。

「除霊師なのに怖がりなんだね」
「人を試すようなことしてなんのつもり? 霊媒師でもお化け屋敷は怖いに決まってるじゃん」

 建物を見上げると、ひゅ~どろ、と書かれていていた看板が見える。僕達が今いる場所は、よみうりランド。

「いや、ごめん。その、なんていうか、君とデートしたかったていうか」
「そんなの、よみうりランド駅に集合って時点でバレバレだけどね」
 僕は彼女の手を握ったままだったことに気付いた。

「お詫びにさ、なにかおごるよ。ジュースでも飲もうよ」僕は喉がカラカラだった。彼女の手を引いて歩く。ジュースで喉を潤していると、彼女が上空を指さした。
「アレに乗らない?」指の先には、大きな宇宙船が宙返りをしていた。360度ぐるんぐるんと回っている。

「え、僕はああいうのはちょっと。お腹きゅーってなるし」
「ずるい!行こうよ!」

 彼女の手に引っ張られるようにして、僕は駆け出した。

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