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『アプレンティス・オブ・ザ・シックスゲイツ』より、『バンディット編:ハート・アンダー・ザ・ブレード』#1

リプレイ版 # 1 # 2 # 3 # 4
小説形式版 # 1(これ) # 2 # 3 # 4

これは2019年2月24日に行われた「ニンジャスレイヤーTRPG」のセッション(NM:黒鷺あぐも=サン)を小説形式にしたものです。
リプレイも書いており、ゲームの内容をご覧になりたい方はこちらも是非どうぞ。

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~これまでのあらすじ~
ソウカイヤ・シックスゲイツ創始者ゲートキーパー。自らも強大な力を持つニンジャである彼だが近頃頭を痛める問題があった。

人材問題だ。
 ザイバツ・シャドーギルドとの「マルノウチ抗争」、同じころに出現したニンジャスレイヤーによるニンジャ大量死…。幹部候補であったドミナントすらニンジャスレイヤーによって殺された。
 近頃の大量ディセンションによりソウカイヤの抱えるニンジャの数は多い。しかし、質はどうか?
「ふむ…」
 そんな折にシックスゲイツの一人、ガーゴイルの部下ヘルカイトが最近頭角を現してきたとの報せ。
 そうだ。シックス・ゲイツに教育させよう。ゲートキーパーはIRCに恐るべき速度でタイプを始めた!
「シックスゲイツの諸君。弟子をとりなさい」

…この物語は急遽メンターにさせられたシックスゲイツとその弟子たちの奮闘の物語である。


#1 「ステルス・ミッション」

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 ソウカイヤの威力部門筆頭のシックスゲイツの一人、バンディット。彼は斥候ニンジャとしてソウカイヤに盾突く組織・個人の拠点に潜入し、ハッキングでは知り得ない情報を持ち帰る事を得意とするニンジャである。それだけならどんなニンジャでもできると思われるだろう。しかし、バンディットがシックスゲイツたる理由は、潜入に合致したジツの使い手であることに他ならない。
 -ステルス・ジツ。彼はその姿・気配を消し、完全に認識できなくするジツを習得しており、他のニンジャでは決して不可能であったミッションを数々と成功させ、首領たるラオモト・カンの信頼を勝ち取り、シックスゲイツまで昇りつめたのである。
 
 そして、シックスゲイツという事で彼もシャテイ(注釈:ヤクザ組織内における直属の部下)を取らされた。今回配属されたのは3名である。
 本来斥候とは単独で動くものであり、チームを組んで動く事はあまり無い。ただ、ニュービーとなれば話が変わってくる。
 
 しかし、配属されたニンジャのリストを見て、バンディットは唖然としていた。最初のハッカーニンジャはともかくとしても、カラテ巧者が2名。しかも2名ともヘンゲ・ヨーカイ・ジツの使い手だという事だ。
 「これだと威力偵察部隊だな・・・。どうしてやろうか・・・」
 そう思案しながらIRC端末を操作し、他の潜入調査タスクを確認する。その中で、優先度が低いながら未着手のタスクを発見。

『エンガワ・ストリート:アンゼン・イッパンテキ薬品社』

 「そうだ。これがいいな・・・」
 バンディットはシャテイ3名にIRC通信を送信するのであった。

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 重金属酸性雨降りしきる電脳犯罪都市ネオサイタマ。その一角にあるエンガワ・ストリート。
 エンガワ・ストリートはソウカイヤに与しない小規模武装勢力が小競り合いを続ける危険地域だ。耳を澄ませば銃声と何者かの哀れな悲鳴が聞こえるだろう。ここの住民たちはそれらを気にも止めない。チャメシ・インシデントなのだ。

 バンディットはステルス・ジツを用い、集合場所へやってくるシャテイの追跡をしていた。・・・が、そこで出てくるものは嘆息ばかりである。隙だらけ。まるで遠足に来るかのような面持ちである。
 集合地点へ真っ先についたのは、茶色装束を纏いバンディットより頭一つ分背の高いニンジャ、ワイルドファングであった。多少警戒している感じもあるが、あれでは逆に警戒感を持たれてしまう。
 そしてほぼ同時に到着したのは、偵察に向かないだろうネオンカラーのニンジャ、サイケデリックメデューサ。彼は煙を吐きながら集合地点へと移動していた。これでは潜入というよりは的である。
 遅れて最後に到着したのは女子高生のような出で立ちのニンジャ、パラノイアであった。指定時間には遅れていないので問題はないが、潜入はスピードも必要であり、その欠如が致命的な隙を与えることもあるのだ。
 
 集合時間になった。3忍の横にいるのだが、まだ姿を現していない。そうしていると、ワイルドファングが口を開く。
 「むう、バンディット=サンのミッション目標と集合地点のみのメールじゃないか」
 「ドーモ、パラノイアでーす」パラノイアはアイサツをするが視線はIRC端末しか見ていない。
 「あ、ドーモ。サイケデリックメデューサ=サン、パラノイア=サン。ワイルドファングです。バンディット=サンが居ないのはどこかでカラテでやられたか?」
 (失礼な奴だ。庭とも呼べるネオサイタマで俺をカラテで倒そうとするのはほぼほぼ不可能だというのに)
 「ウフー!ドーモ、サイケデリックメデューサです。ドーモヨロシク!」
(こいつはいつも煙を出している。本当に大丈夫なのか?)

 「待ちぼうけとかマジムカつく」
 「ただ、バンディット=サンのことだ。どこかで隠れてる可能性があるが、面倒なことをせずに襲撃すればいいのにな」
 「さっさとやってさっさと帰りたいんですけど」
 「なら、もう突撃してしまおう!よし行こう!ヤクが俺たちを待っている!」
 (ワイルドファングの言葉に一瞬ヒヤリとしたが、さすがに横にいる事には気づくまい。しかし、情報も何もなしに潜入することがどれだけ危険かを判っているのかどうか・・・。まあ、そろそろ出てやるか)
 「なるほど。大した自信だなクズ共。それが口先だけでないことを祈るぞ、ドーモ。バンディットです」
 「アイエ!真横!ド、ドーモ。ワイルドファングです」
 「ドーモ、パノライアです」
 「ワハハ!バンディット=サン、おれ、そんな芸達者に見えます.....?カラテ!ドラッグ!それだけ分かればイイかなって。ほら」
 「いいからなにすりゃいいのよ」
気だるそうに髪をかき上げるパラノイアだが、驚愕を隠せてはいない。
 「集合と書かれていたので集合しかしてないですな」
いかにもと言った感じでワイルドファングが答える。

 「そうか。では勝手に乗り込んで死ね。ゲートキーパー=サンのお達しだから貴様らをシャテイとしたが、我々斥候部隊はそもそも徒党を組まぬ。生きるも死ぬも一人きり」バンディットは静かに斥候部隊の何たるかを語る。
 「そんなのハッカーも似たようなもんじゃん」
 「ふむ。パラノイア=サン、貴様あたま空っぽにみえて意外と分かっているのではないか」
 「ア゛…?アタマカラッポ…?」明らかにパラノイアは頭に来た口調である。
 「そうだ。我ら斥候部隊の扱うのはくそったれハッカー共と同じ情報だ」
 こう言いながらも、バンディットはパラノイアの考えは間違っていないことを告げる。
「情報とは強大な武器であると同時に、扱いを誤れば自らを殺すチドクでもある。組織を活かすも殺すも我らシノビにかかっている。我らはソウカイヤというカタナを縁の下から支えるハートであることを忘れるな」
 「アイアイ」
 パラノイアはどうでもよさそうな返事である。ただ、ソウカイヤ電算機室所属であった彼女は、このような仕事はやりやすそうではあると考えていた。
 それに引き換え、ワイルドファングとサイケデリックメデューサは自分の得意分野を考えるといささか困った様子であった。

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「さて、では移動しながら、無知な貴様らにターゲットの情報を教えてやろう」
 バンディットはそう言うとシャテイ達にIRCインカムを渡す。
「チッ」
 パラノイアは聞こえないように舌打ちしたが、バンディットのニンジャ聴力は聞き逃していなかった。
「ウフー!アリガトゴザイマス!」紫の煙を吐きながらサイケデリックメデューサはインカムを装着する。
 一方、ワイルドファングは装着の仕方がわからずに難儀しているようであった。
 『あーテステス聞こえるー?』
 『ブッダ!ブッダの声が聞こえる!』
 『ぉわ!聞こえるぞ』
 『そーよーブッダよー』
 『ウオーッ!ブッダ!頼りにしてるぜ!』
 まるで与えられたオモチャに歓喜する子供のような反応であった。それに引き換え、バンディットは胃が痛くなる思いであった。ずぶの素人を育て、成長させることがどれだけ大変な事なのかと...。
 同じシックスゲイツのスカウト部門であるソニックブームは、いとも簡単にスカウトニンジャを養成していっているようである。しかし命令が下った以上、やらねばならぬ。バンディットは気を取り直して、説明を始める。
 
 「アンゼン・イッパンテキ薬品社は特許の切れたジェネリック薬品を高品質、低価格で市井に提供している会社だ。しかも、経済の自主性を謳ってソウカイヤの庇護を断り独自戦力を持っている。これがどういうことか分かるな?」
 「邪魔ってことでしょ」
 「ソウカイヤが殴りこんでもいい。だな」
 パラノイアとワイルドファングは組織の事は判っているようだ。
 「.....つまり、ドラッグの掴み取り放題な」
 サイケデリックメデューサはどうもドラッグの事しか頭にない。
 「アンゼン・イッパンテキ社はドラックは扱ってないぞ。安全・安心・あんまり毒性なしが売りらしい」
 「そんな!それでは俺のこの気持ちの高ぶりはどうすれば!」
 サイケデリックメデューサの調子は変わらない。
 「くくく。まぁ焦るな。好きにさせてやるさ」
 バンディットはサイケデリックメデューサの性質を掴んだようだ。

 「実際いいカイシャじゃん」
 パラノイアは一般的な論だが、ソウカイヤからしてみればそうではないのである。全ては自分達の利益になるものとそうでないもので分けるのがソウカイヤの......そしてニンジャの考え方なのである。
 
 さらにバンディットは続ける。
「今回のターゲットは『シャナイヒ級機密情報の書かれたマキモノ』だ。 ターゲットは会社の奥、社長オフィスにある」
「物理データかよ」
 パラノイアはいかにもめんどくさいと言わんばかりの悪態をつく。
「ウハハハハ!残念だったな女子高生!」
 サイケデリックメデューサがそこに追い打ちをかける。
「物理データなのはハッカー対策だろうな。そして現在会社内には一部社員を除きおらぬ。貴様らなら余裕なのだろう?」
 バンディットが煽るように語る。しかし、あまり堪えてないワイルドファングが口を挟む。
「そこで我々の登場ってことか。やはり考えられた配属だったようだ」
「そうだな。今回は貴様らの実力テストも兼ねている。ああそうだ、マキモノを最初に手にした奴には褒美をやろう。精々励むんだな。……ああそうだ、内部地図をくれてやる、これはサービスだ」
 各人の個人IRCに社内の区画情報が入ったデータが転送される。
「ターゲットはストリートの奥の方だ。会社前で再集合するように」
 そう言い残すと、バンディットは姿を暗ました。

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 そして各人の確認が終わり、時計が午後10時を示す頃、アンゼン・イッパンテキ薬品社前に到着する。そこには、既にバンディットが何かを持って待っていた。
 「遅かったな。正直貴様らには勿体無い様な気もするが、ここまで着くのに一番遅かったパラノイア=サンにはこれをやろう」
 よくよく見ると、車椅子である。しかし、ただの車椅子ではなく、強化カーボンフレームをふんだんに使っており、モーターサイクルのマフラーのようなものが2つ背面についてある。
 「本来はシックスゲイツ用のオモc…ニンジャギアだが特別にくれてやろう」
 「へー!!」
 先ほどまでの気だるさはどこへ行ったか、パラノイアは目を輝かせて乗り込むのであった。どうやら、メカやハイテックには目が無いようである。
 「よかったな女子高生!」
 サイケデリックメデューサが煙を吐きながら言う。今回の煙は紫色のようだ。
 「…ではここよりはニンジャの時間だ。俺は基本手を出さんから貴様らの力をみせてみろ」
 バンディットはそう言い残すとその場にいるのも関わらず卓越したニンジャ洞察力やソウル感知能力が無ければ見えない程に存在感が薄れていく…。
 やがて、その場から離れたようだった。
 
 アンゼン・イッパンテキ薬品社は中央正面玄関、南の警備員通路、北側にある緊急出口の3カ所がある。正面玄関は普段なら照明が点いているはずだが、今は暗く閉ざされている。警備員通路と緊急出口は重厚な扉で中は見えない。
 バンディットからもらった事前情報では、警備員通路はIRCロックが、正面玄関は物理鍵がかかっていること、緊急出口はドアノブすらないことが判明していた。
 (お前らの得意な方法で入ってみろ。まあ、中はほぼほぼ警戒はしてないだろうがな)
 バンディットが内部情報をIRC転送した時に言った通り、3方に分かれて潜入することにした。パラノイアは南の警備員通路、サイケデリックメデューサは中央正面玄関、ワイルドファングは北の緊急出口をそれぞれ担当することにした。
 
 『では、ミッションを開始する。オタッシャデー』

 警備員通路に来たパラノイアは、車椅子に乗ったまま通路奥の扉まで行き、横に備え付けてあるカードリーダーを発見する。彼女は元々は電算機室所属で、ニンジャになる前は女子高生ハッカーとして活動しており、現在では生体LAN端子をインプラントしている彼女にとってこの手の解錠はお手の物だった。あっと言う間にハッキングにより論理錠前を破り、扉が開く!
 『チョロイ!』 
 中に入ってみると、そこは警備室になっており、若い警備員が深夜勤務に眠たげな瞼を擦っている。警備員が座っている席の前には、監視カメラのスクリーンが広がっている。このような時間に入り口側のドアが開くことは想定もしていない警備員は、もちろん侵入者には気づいていない。
 パラノイアは静かにクナイを構えて・・・投げる!
 「あっ!」
 クナイを投げる時に車椅子のロックを忘れており、体勢が崩れてしまった!
 パリーン!
 監視カメラのスクリーンが1つ派手に割れる。それを見た警備員は後ろを振り向く。そこには車椅子に乗った女子高生がいるのであった。
 「えっ女子高生?オイラン?それとも…!?」
 「チッ何避けてんの!ムカつく…!ぜったい殺すし!」
 自分が投げそこなったにもかかわらず悪態をつくパラノイア。すぐさま入ってきた扉の鍵を閉め、奥に見えるオフィスへの通路へと車椅子を走らせる。その手には次に投げるクナイが握られている。
 「アイエエッ!ニンジャナンデ!?」
それを見た警備員はニンジャリアリティーショックにかかってしまった!
 「女子高生で元オイランでニンジャよ!!何かワルイ!?」
 「アイエエエ!」

 「……本当に大丈夫か?」
 ステルス・ジツで姿を隠しながらも、バンディットは少し胃が痛くなった。

 『騒がしいぞ女子高生。今ならお手頃価格でヘルプしてやるぜ!』
 正面玄関前で物理鍵の解錠をしていたサイケデリックメデューサが喧噪をニンジャ聴力で聞きつけ、煙を吐きながら提案をするのだが、
 『シネ!』
 返事は一瞬だった。サイケデリックメデューサはケラケラ笑いながら解錠をしていると、まもなく内側から掛かっていた鍵が開き、正面玄関が開く。
 中の様子を伺うと、どうやらこんな時間にも関わらず人間の気配がするようだ。
 こういう時は案外面倒な事が起こるものだが、サイケデリックメデューサのニンジャ第六感は安全だと告げている。ラリっているのだろうか。
 中に入ると、エントランスの待合室であった。暗がりの中でニンジャ視力を凝らしてみると、先ほどの気配の主は心細い顔をした老婆のようである。老婆は目を患っているようだが、感覚が鋭いのかサイケデリックメデューサに声をかけてきた。相手が闇に生きる恐ろしき化け物だと気付かずに!
 
 「どなたかいらっしゃるのですか?私は田舎を飛び出してネオサイタマで警備員になった孫にスシを届けにきたのですが…道が解らないうちに電気も落ちてしまってほとほと困っていたのです」
 
 サイケデリックメデューサは一瞬困惑したが、従業員を装うことにした。
 「ドーモ、ドーモ!今日は急遽休館らしいですヨ?一般の方は入れませんが、実際おれなら大丈夫だ。良ければ、代わりにスシを届けてあげましょう」
 もちろん欺瞞である。しかし、老婆はそれには気づかない。
 「あら。これはこれはご親切に。では、お願いしちゃおうかしら」
 老婆はサイケデリックメデューサにスシを渡す。
 「おっと、ちなみにお孫さんのお名前は?ここは警備員が多い」
 「ケビシといいます。まだ若くて夜はいつも寝むそうにしてたあの子がちゃんと出来てるか心配だわ」
 「そうですか!きちんと渡しておきますね!あと、今日は休館なので外までお送りしますよ!」
 「あら、ありがたい。そうしてもらえるかしら」
 サイケデリックメデューサは老婆と共に外に出て行った。
 それに気づいたワイルドファングからすかさずIRC通信が入る。
 『ん?サイケデリックメデューサ=サン、どこに行くんだ?』
 『ブッダの導きがあったのさ.....』
 (何がブッダだ・・・本当にこいつら大丈夫なのか......?)
 バンディットはさらに胃が痛くなる思いであった。
 
 「これは少ないけどよかったら…」
 外に送り届けたサイケデリックメデューサは老婆からお礼も貰っていた。
 
 さて、時は少し遡ることになるが、ワイルドファングは緊急出口から何とか侵入しようと企んでいた。扉だとはわかるのだが、ドアノブもないし、ハッキングできそうな機構もない。正に出るだけの為の扉であった。
 だが、それは事前情報ではわかりきっていたことであった。ワイルドファングは正面に相対し、拳を握りしめてゆっくりと引いた後、扉に打ち込む。
 「イヤーッ!!」
 CRAAASH!
 
「アイエエ!」
 頑丈な扉は見事に粉砕!その奥には正に今から帰らんとする不運なサラリマンがいたのであった。
 「ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」急性NRSで失禁!
 「モータルか。こんな時間まで残業か?ここで会ったのは運がなかったな。もう少し残業してもらおう」
 ワイルドファングは器用にドアの破砕片などを使ってサラリマンを拘束した。サラリマンは哀れ逃げ出す事もできない!さらにワイルドファングは卓越したニンジャ洞察力でサイフを見つけ、それをサッと抜きだした。
 
 さらに奥にはメインオフィスがみえる。日中は多くのサラリマンがいるであろうオフィスには今は誰もいない。しかし、不眠不休で視線を送る者あり。そう、3台の監視カメラが常時警戒、その下には恐ろしきタレットが備え付けられていた。見つかれば蜂の巣にされるだろう。このメインオフィスの奥へと続く扉は2カ所あり、北側はカンオケ・オフィス(残業用オフィス)への扉、南側は倉庫への扉がある。
 
 ワイルドファングは監視カメラの届かない壁際に沿って北東の角へ移動し、オフィスの引き出しから電子貨幣を見つけ出していた。
(ほう...扉の壊し方には問題があったが、一応手際よくやったな)
 バンディットは後ろから追いかけながら観察している。

 そしてその後、老婆を送っていたサイケデリックメデューサもメインオフィスにエントリーした。
 『お、サイケデリックメデューサ=サン。あんたもここまで来たかい』
 『ウハハ!老婆を送ってきた!イヤーッ!』
 エントリーするや否や、監視カメラに向かってスリケンを投擲。
 Craaaash!
 スリケンは1台のカメラに突き刺さり、もはや監視者を見つけること能わず。見事なワザマエである。その壊したカメラの下には金庫のようなものが置いてあった。
 『コイツは貸しだぜワイルドファング=サン!ZBRで手を打つ!ウフー!』
 『カメラの所のはいらぬ。私は先を急がせてもらう』
 ワイルドファングはそう言うとカンオケ・オフィスの方へと進んでいった。

 一方パラノイアは、警備室内で警備の見張りをしていた若い警備員を手に持ったクナイで切り払った所であった。
 「ふん!あーもー汚れちゃうじゃん!」
 パラノイアはその死体を足蹴りにして血を払う。仰向けになって見える胸の真新しいネームプレートには「ケビシ」という名が印字されていた。抜け目なく持っていたサイフも頂く。彼女はローンを組んでおり、その返済の期日が迫っているため、金目の物は見逃さない。その後、パラノイアは警備室にてこの建物の状況を得ようとハッキングを始める。

 あっという間にハッキングは完了する。情報は簡単に手に入ったが、メインオフィスの監視カメラとタレットは外部警備組織からのアクセスが必要で、ここでは何もできない。さらに、奥の社長室と思われる場所もここのアクセス権では情報がわからなかった。とりあえずそれらの情報をサイケデリックメデューサとワイルドファングのIRC端末に送信する。
 『この情報の分ちゃんとあとで払ってね?二人とも』
 『磁気嵐!ヒヒー!』
 『ちょっと情報が遅かったんじゃないか?パラノイア=サン』
 『なによ!まだ入ってない部屋の情報も教えたじゃん!』
 『おお、そうだったな。その分は考えておくよ』
 どうやら二人はメインオフィスへと侵入してるようであった。
 遅れまいとすぐさまパラノイアは車椅子でメインオフィスへエントリーする。南側の監視カメラにクナイを投擲。
 Craaaash!
 
こちらも見事なワザマエで監視カメラを破壊した。そして前方に2人を発見する。
 
 どうやらサイケデリックメデューサは金庫を漁っているようだ。サイケデリックメデューサは金庫の中から「アンゼン・イッパンテキ社の独自製品情報」のマキモノを見つける。未発表の新製品に関するデータも詳細に書かれているようだが、ドラッグではない普通の医薬品の為、サイケデリックメデューサにはあまり関心はないようだ。
 
 それを後目にパラノイアは車椅子でオフィスを抜け、倉庫へエントリーした。備品などが整然の並ぶ中、ローン返済に追われていた彼女は物色を始める。
 「なにこれかわいくなーい」
 見つけたのは研究用テックの部品だった。無骨なものだが売れば少しは金になるだろう。そしてその先の休憩室へつながるドアを見て、少しため息をついた。

 先に進んでいたワイルドファングは一足先にカンオケ・オフィスにエントリーする。この部屋から西に行くと、まだ情報の無い社長室へとつながる頑丈な扉、南には休憩室へ続く扉がある。
 ここでは寝ることも出来ずに残業するエスイー4人が、死んだマグロの様な目でUNIXに向き合っている。この様子では結構な物音がした所で気付かないであろう。ワイルドファングは気付かれたのなら殺そうと思ったが、特に反応もないようなので、特に構わないことにした。
 『カンオケ・オフィスに来たが、特に危険はない。そういえばパラノイア=サン、情報が全くない最後の部屋は合流していこうと思うのだが、どうだ?』
 『そこだけ情報ないもんねー。それでいいよ』
 『では、そちらに行って鍵を開けてみる。あまり器用ではないから、失敗しても恨まないでくれよ』
 『アリガト?』
 
 ワイルドファングはカンオケ・オフィスから休憩室へと向かい、そこにあった自販機とテーブルの上に何かが置いてある箱を横目に、倉庫扉の解錠を試みる。その手つきは覚束ないものであった.........が、
 ガチャン!
 
『お、開いた。これで通れるな』
 結構しっかりした錠前だったのだが、シャテイ研修の時に使われた錠前と機構が似ていたため、何とか解錠できたようだ。
 
 サイケデリックメデューサはワイルドファングを追ってカンオケ・オフィスにエントリーする。情報通りエスイー達は全く気付いてない様子だ。証拠隠滅の為に全員殺しても良かったかもしれないが、赤い煙を吐き出すに留めた。
 
 『ほう…思ったよりも賢い貴様らの為に良い事を教えてやる。最近アンゼン・イッパンテキ薬品社はフリーのニンジャを雇ったらしい。それから…なにか兵器も買ったとな。小賢しい限りだが、まぁなんとかして見せろ。以上、通信終了』
 バンディットはそう言い残すと、ステルス・ジツを維持したままカンオケ・オフィスへと戻っていった。そこには赤い煙が充満していた。
 (ケムリダマ・ジツではあるまいし・・・)
 
 「それだけ?もっと詳しくいってくれないと何もわからないじゃん!」
 パラノイアはバンディットに聞こえないように、通信を切って悪態を付いた後、先ほどワイルドファングが開けたドアを通って休憩室へエントリーした。
 「ありがとねー」
 一言そういうと、パラノイアは車椅子で自販機前へ到達。お得意のハッキングである。
 「これぐらいヨユーね」
 実際彼女の腕前は大したもので、一瞬でハッキングが完了し、自販機の製品がゴトリと落ちてきた。オシルコの缶飲料である。アンゼン・イッパンテキ薬品社製の飲料で、眼精疲労などに効くということでネオサイタマでも一般流通されている製品である。警備室でかなり集中力を使っていたパラノイアは、すぐさま缶を開け飲み始めた。
 「アマーイ…」
 彼女は幸せそうな声で疲れが取れたようだったが、その時......
 バシュン!
 ハッキングの影響だろうか。自販機から火花がでて、使い物にならなくなってしまったようだ。
 
 『アー遥かに良い。フーッ、ワイルドファング=サンまだか。ピンクの光が見える』
 サイケデリックメデューサはカンオケ・オフィス内で突入を待っていた。

 『では、そろそろ突入しようか。サイケデリックメデューサ=サンは北の扉から、頑丈そうだからぶっ壊してから頼む。南の扉はパラノイア=サンがハッキングで開けた後に私が入るという寸法で行こう』
 ワイルドファングが手短に内容を伝えながら、休憩室のテーブルにあった箱を手に取る。中身はトロ粉末であった。恐らくオシルコの自動販売機と同じように、エスイーの疲労回復薬の一つであろう。
 『よし、いくぞ』
 
 
 突入開始だ!
 パラノイアは車椅子で扉前のUNIX装置をハッキングする。
  
 ピピッ...ピピピッ...ピポッ!
 「ヨウコソドスエ」
 マイコ音声が奥ゆかしく出迎える。ハッキングは成功したようだ。
 「ふふーん♪実際チョロいんですけどー?」
  
 それと同時にカンオケ・オフィスからサイケデリックメデューサが扉をぶち破る。
 ガツン!
 (カタカタカタカタ......カタカタ......)
 ナムサン!扉が硬くて開かない!部屋の中にエスイーのタイプ音がむなしく響く…
 『これは.....ニンジャの.....ドアノブ.....!』
 ALAS!サイケデリックメデューサはここでも幻覚を見ているのだろうか!

 ワイルドファングはカンオケ・オフィスの異変に気付いたが、作戦通りにパラノイアの開いた扉から社長室にエントリーした。
 そこにはキリングオーラを放つニンジャと、不気味な鉄の塊が立っていた。ニンジャが先制のアイサツを繰り出す!
 「ドーモ。ソウカイヤの諸君。ニシグリーンマンバです」
 「ドーモ、ニシグリーンマンバ=サン。ソウカイヤのワイルドファングです。」
 「ドーモ、パラノイアです。アンタ邪魔なんだけど?」

(ガチャガチャガチャガチャ......)
「ドアノブはどこだー」

 「(なんかうるさいな...)諸君らに恨みは無いが、フリーとしてはお宅の様な大御所よりも支払いの良い世間知らずの会社の方が居心地がいいのだ。なので、こちらからプレゼントを用意してある」

 「それで大御所と喧嘩したら意味ないじゃん?バカなの?」

 「そのための兵器だよ。お嬢さん」
 ニシグリーンマンバはそういうと、隣に並び立つ鉄塊を顎で示す。これはオムラ・インダストリが開発した新型戦闘機械、モーターヤブである。所々錆が浮いているが、マシンガン、電磁サスマタ、さらには火炎放射器まで備え付けられてある。暴徒鎮圧・拠点防衛用と言えど、さすがに火力が高すぎる。
 
 「ドドドーモ。モータターヤブでです。クラッキングされておりオムラは実際無関係でです」

 (こいつオムラはソウカイヤとネンゴロなのも知らないとかマジバカじゃん?)
 (全くだ。まあ、馬鹿には死んでもらおう)
 パラノイアとワイルドファングは小声で話す。

  「こいつは俺がオムラから奪ったものだ。武器なんて頭の使いようよ」
 ニシグリーンマンバは得意そうに言い放つ。
 「なんかそいつ錆浮いてない?整備の仕方もわからないの?」
 「錆はロマンだ。そんな事も分からんか!」
 
 突然激昂するニシグリーンマンバは、強烈なキリングオーラを放つ!
しかしその時!
 (......何故かツボにはまったみたいだが...まあいい、うまくやったな)

 ニシグリーンマンバの真横にカタナを水平に構えた茶色装束のニンジャが突如出現。ステルス状態からのアンブッシュだ!
 「ィャーッ!」
 やや押し殺した控えめなカラテシャウト!
 「ヌ!!」
 ニシグリーンマンバは危うく回避する!
 「ほう、よくかわしたな。ドーモ、バンディットです」
 バンディットはアイサツを繰り出す。
 「不意打ちとは卑怯だぞ!」
 「知らんな。それでやられるサンシタが悪いまでのこと。ほら、貴様達、何を見ている。次にする事は何だ」
 「そいつを殺せばいいんでしょ?そのあとマキモノ持って帰ればいい」
 「正解だ。賢いシャテイだ」

 「イヤーッ!」
 パラノイアは車椅子に乗ったままクナイを投擲。先ほどのアンブッシュで体勢が崩れたニシグリーンマンバに突き刺さる!
 「グワーッ!コシャクな!」

 『サイケデリックメデューサ=サン、こちらの扉から入れば良い!』
 ワイルドファングが通信を入れる。カンオケ・オフィスに居たサイケデリックメデューサはカラテ突破を諦め、ワイルドファングが通った休憩室経由で社長室にエントリーする。しかし見よ!その姿はピンク色の巨大なクラゲそのものである!腕はしなやかな触手が多数絡まり合い、強靭な腕のような形を取っており、足元は無数の触手が地面と接している!そして流れるような触手足使いで、ニシグリーンマンバ横のシャナイヒ級機密情報の書かれたマキモノを取り出す!ゴウランガ!
 「マキモノが!お、オノレー!ドーモ、ニシグリーンマンバです!」
 「GWAHAHAHA!ドーモ、サイケデリックメデューサです!ヒヒヒ!」
 クラゲ頭から器用に発声するサイケデリックメデューサは、アイサツからすぐさまニシグリーンマンバに触手を叩きつける!
 アンブッシュからの怒涛の連続攻撃にニシグリーンマンバの体勢は崩れていた。3忍の気配は読み取れていたが、さらにアンブッシュがあることは想定できていなかったニシグリーンマンバの左脚に強烈な触手が叩きつけられた!
 「グワーッ!左脚グワーッ!」
 左脚の折れる音がする。痛みに耐えながらもニシグリーンマンバはバンディットの目を睨む。これは恐るべきカナシバリ・ジツの挙動!
 「なめるな!シックスゲイツがなんだ!イヤーーッ!」
 ニシグリーンマンバの目が妖しく輝く!
 「ふん。その程度か...」
 しかし、バンディットはゼンの領域にまでフラットになったヘイキンテキでものともしてない様子!
 「チッ...ならこうだ!イヤーッ!」
 ニシグリーンマンバはさらにコブラ・カラテを繰り出す。しかしバンディットは横薙ぎにせんとする腕をカタナの峯で受け止め、そのエネルギーを利用して回転、ニシグリーンマンバを斬る!ワザマエ!
 「グワーッ!」
 「さあ、まだまだあるぜ。ヘンゲ!」
 さらに直後、シャウトと共にワイルドファングの上半身が隆起し、頭が狼のそれに変わっていく。大きな犬歯を口から覗かせ、赤い目を光らせながらニシグリーンマンバに襲い掛かる!
 「GRRRR!」
 「アバーーッ!」
 ワイルドファングの容赦ない爪がニシグリーンマンバの股間を直撃!先ほどの左脚も合わせ、痛みに耐えきれずうずくまる!
 「ア...アバッ...よ、よくも......」
 
 その時である!
 「モモーーターヤブは治安維持に為に不穏分子をはははいじょします!」
 なんと乱戦状態になっていた4忍目掛け、モーターヤブは火炎放射!
 BooooooW!!
 
「!!」
 激しいカラテラリーを行っていたバンディット・サイケデリックメデューサ・ワイルドファングは一斉に飛び退こうとする。しかし!
 「貴様は道連れだ!」
 「...何っ!」
 ニシグリーンマンバはバンディットの脚を掴み、退避を許さない!そのまま2忍は火炎に飲み込まれていく......

 「サヨナラ!」
 
 火炎と煙が晴れる...その中から出てきたのはバンディットだけであった。
 「ニシグリーンマンバ…。なんと恐ろしきニンジャだったことか...」
 「盗んだ兵器にやられるとは......インガオホー」
 「…やっぱあいつバカじゃん?バンディット=サンダイジョブ?」
 パラノイアは車椅子に座りながらつぶやく。錆で激昂したのも含めて馬鹿にしているようである。 
 「…。こんなものは傷には含まれん。あとはあのクソ忌々しいポンコツだけだ!スクラップにしろ!」
 多少怒気を含んだ口調でバンディットは指令を出す。
 「アッハイ。ヨロコンデー」
 「WAHAHA!カラダニキヲツケテネ!」
 「ヨロコンデー」
 シャテイ達は解体にかかる。
 
 「今ならオーガニックスシ、安くしときますよ?ヒヒー!」
 サイケデリックメデューサはこの状況でさらに軽口を叩く。
 「結構だ!!イヤーッ!イヤーッ!」
 「イヤーッ!」
 バンディットはこれ見よがしにスリケン2枚をモーターヤブに投擲。さらにそれに続きパラノイアも車椅子からクナイを投擲。バンディットのスリケンは脚部の付け根に、パラノイアのクナイはカメラアイ付近に刺さる!
 「ピガガーッ?」
 さらにサイケデリックメデューサの触手が畳みかける。
 「イイイヤァーッ!」
 「ピガッピガガッ!」
 先ほど発射した火炎放射器のアームを根元から叩き壊す。使用不能!
 「イヤーッ!」
 「ピガーッ!」 
 ワイルドファングも胴体に凹みを作り解体寸前!
 
 「ピガッ......ピガガッ、モモモーターヤブはか賢く…つつよ…い」
 残ったオムラ・マシンガンアームが火を噴く
  BRATTA!BRATTA!BRATTA!
 しかし弾幕が薄いのか、サイケデリックメデューサの方へ飛んで行った弾は少なく、簡単に避けられる。

 「…。あとは貴様らだけで充分だろう。見届けてやる。貴様らのカラテを俺に示してみろ.........けして火傷が痛いわけではない」
 バンディットはそう言い放つと、壁にもたれかけて見物を始める。
 「アッハイ。そういうことにしときます。イヤーッ!これがジェットカラテよ!」
 パラノイアは車椅子を上手に使い、モーターヤブの胴部を叩く。
 「ピガガーッ!」
 「イヤーッ!」
 サイケデリックメデューサの束ねた触手腕がモーターヤブの頭部へと叩き込まれる。
 「GWAHAHAHA!ピンクの光を叩き潰す!」
 「ピガガガーッ!」
 しなりを利かしたカラテスナップ力がモーターヤブの大質量を…おお!ゴウランガ!叩き潰した!フライパンめいて平らになったモーターヤブは完全沈黙!
 
 (まさかもうあそこまでロケット車椅子を使いこなすとは…やはり。そしてピンクピンクと言っているのは何を見ているのかわからんが、カラテの腕は確かなものだ)
 
 「よし!やったな!」
 ワイルドファングはヘンゲを解き、辺りの残骸からニシグリーンマンバのサイフをちゃっかり拾っていた。

 「...撤収だ。帰るぞ」
 「「「ヨロコンデー」」」

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 エンガワ・ストリート
 人通り少ないこの通りだが、ウシミツアワーとなればその闇は更に濃くなる。その闇よりなお暗き影が4つ…バンディット・パラノイア・サイケデリックメデューサ・ワイルドファングである。

 「…一先ずは御苦労だった。貴様らはふざけた奴らだがある程度の実力があるのはわかった。実際あの恐ろしきニンジャと兵器にはあやうく苦戦しかけたからな」
 シャテイの3忍の顔が少しナナメになる。
 「斥候ニンジャはノーカラテ、戦場に立たぬ腑抜けなどという者もいる。だが、そうでない事は判っただろう。我らは常に命を掛けているのだ」
 「その辺はハッカーも一緒ね」
 「そうだな。方法は違うがたしかにハッカーもそうだ。だが…貴様らなら。うっうん!(咳払い)。もう少し鍛えれば貴様らも使いものになるだろう。」
 3忍はニヤニヤしながらバンディットを見ている。
 
 「何がおかしい。まだ貴様らはひよっこだということだ。勘違いするな。では解散だ。次回のミッションは追って連絡する」

 そう告げるとバンディットはネオ看板の光に溶けるように消えていった。


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 こうして3忍はソウカイヤの斥候部隊に所属する事になった。
 それは華やかな戦士たちとはイクサの場を異にする闇の兵士である。
 しかし、ソウカイヤの第一陣として水面下で常に戦っているのは斥候部隊なのだ!
 3忍はネオン看板輝く、しかし闇深いネオサイタマの影を飛ぶ---


#1 『ステルス・ミッション』おわり

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