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友情を育てる『交際費』

 年金生活のAさん(70代)。交際費の移り変わりを拾い出してみたところ、年金生活が始まると交際費が約1.5倍になっていました。しかし、その中身を考えると、減らすことのできなかった費目だと感じたそうです。

『交際費』には、お金以上の価値が

 Aさんの住まいは、県内でも2番目に高齢化が進んでいる農村地域。50坪ほどの畑で、夫婦で大根、じゃが芋、キャベツ、青菜など、必要な野菜のほとんど生産し、2人では食べきれないときにはご近所にお分けしています。畑の一部に植えた四季折々の花も一緒に届けて、ご近所に喜ばれることが、Aさん夫婦の楽しみであり、生活の励みでもありました。
 月一回開かれる婦人会の集まりは、参加者がみな70代以上。お昼ご飯を作って一緒に食べながら、お互いの話を聞き合います。面倒をみる身としては、重荷に感じてやめたいと思うこともあるのですが、みんなが楽しみにしていると思うと、ついイソイソと働いてしまうのだとか。
 年をとっても住み慣れた土地で暮らし続けたいと思えば、地域の助け合いなしには成り立ちません。「肩身を寄せ合い、助け合って生きていると、隣人、他人の痛みに思いを巡らす機会も多いもの。これからも経済の許す範囲で、近隣の方たちとの友情を大切に育てていきたい。このように考えると、『交際費』とは、実に考えさせられることが多い費目です。家庭の事情や住む地域、それぞれの生き方、考え方によって異なる、人とは比べることのできない費目ではないでしょうか」と、Aさんは思うのです。

多くの人が、月平均1万4000円ほど

 Aさんの交際費の予算は月3万円です。みなさんはどのくらい交際費にかけているでしょうか。
 婦人之友社の家計簿をつけている方々からの報告では、2021年は、コロナ禍による外出抑制があり、年金生活者で1万4400円/月。10年前の2010年の1万8000円/月と比べると、2013年から右下がりで減少しています。
 給与生活者の場合は、2010年と比べると8%増、10年間で一番交際費が多かったのは、2018年で1万4000円/月でした。月別では、支出額が多いのは、12月、次いで1月となります。
 世間の風潮や形式に流されるのではなく、心のこもったものでありたい交際費。その中身が、自分の思いと一致するようになるまでには、何年かかかるという方もいます。
 ある人は、自身のお母さんの骨折、入院の際に寄せられたお見舞いから、多くのことを教えられたといいます。骨折した本人だけでなく、介護する家族の気持ちも明るくしてくれる花かごを贈られたり、「これで風邪をひかないようにして、お母さまをしっかりみてあげて」というカードが添えられたホカホカのマフラーや、優しい色のエプロン(いずれも手づくり)、みんなを愉快な気持ちにさせる「厄除けだんご」など。
 さまざまなお見舞いをいただいた中で、そこにかかる金額よりも、タイミングであったり、気持ちが大切で「交際費は周囲との潤滑油の役目を果たすもの」と、その方は感じたそうです。

まとめ:人とは比べられない費目

 以上のことを踏まえてみても、単純に『交際費』と言ってもさまざまなケースがあります。急な友人の病気や怪我だけでなく、日頃の感謝の気持ちを込めた手紙(年賀状なども)や贈り物、結婚式やお祝いごと、交流を深めるための外食なども交際費にあたります。限られたお金の中で、どれくらい予算に取るかは、計画の立てづらい費目ではありますが、ないと困る費用でもあります。
 ご近所づきあい、友だちづきあいなどは、友情を育て、生活に潤いを与えるだけでなく、互助の役目もになっているのではないでしょうか。
 家庭によって、地域によって、生き方によって、人との付き合い方はさまざまですが、この機会に、自分の交友関係や付き合いなど確認して、交際費を考えてみましょう。


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