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老いの住まいを考える参考に。施設入所はいくらかかる?

 「人生の最後まで自宅で過ごしたい」というのは、多くの方の願いです。しかし、自立した生活が困難になるとそういうわけにも…
 ファイナンシャル・プランニング技能士の野口徳子さんは、施設入所を考え始めるきっかけとして、主に3つ(下記)を挙げています。

① 一人暮らしになった
② 食べ物の買い出しや食事の準備をすることが難しくなった
 (火を使用するのかあぶなくなったなど) 
③ 認知症が進んだ

 成年後見人もされている野口さんは、その経験から、施設を選ぶときに検討、確認したい点として、下記を挙げています。

① 自分の住む地域か、または家族が近くにいる地域か
② 施設入所の場合の費用(初期費用・1カ月の費用)
③ 介護度で制限はあるのか
④ 最後まで住めるのか(看取り)
⑤ 医療機関(内科医、精神課、歯医者等)と提携しているか
⑥ 緊急の場合の対応
⑦ デイサービス併設かどうか
⑧ 食事について等

 入所したい施設の候補が絞れたら、パンフレットを送ってもらいます。興味のある施設に見学予約申し込みをするとよいでしょう(コロナ禍のため、現在は体験入所、ランチ会などは中止しているようです)。

施設見学のポイント
    ・入所者への職員の応対
    ・安全対策ができているか(手すりやお風呂など)
    ・施設周辺の環境
     (公園、散歩コース、買い物のできる場所が近隣にあるか)
    ・共有スペースや床が清潔か
    ・自分に合った生活施設か

 「友人が昨年から親の介護施設を探していました。友人は、玄関を入ったところで、施設の明るく清潔な雰囲気と、職員が優しく入所者に接する様子の見て決めたと、話していました。家族が施設を決めることが多いように思いますが、本人と一緒に見学に行き、納得のいく施設を探すことが大切と思います。」(野口さん)

終の住みかは、いろいろ

 介護が必要になって住み替えを検討される場合、どのような施設があるか表にしてみました。費用は自己負担1割を基本にした目安で、立地などにより、月額費用は施設によって異なり、居宅サービスや住宅では、おおむね初期費用がかかります。2021年に、介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院)やショートステイを利用する際の食費・居住費について、低所得への助成(補足給付)が見直されました。こうした変更がありますので、下記は目安として参考にしてください。

監修・ノンフィクションライター・中澤まゆみ

施設入所の実例をいくつかご紹介しましょう

グループホームで

 レビー小体型認知症と診断されて2年、寝たきりとなったAさん(石川県)。知人の看護師が始めたグループホーム(定員18人)の運営理念に賛同して、入所。自己支払いとは、下着類、パジャマ、タオル、シーツ、布団カバー、毛布、布団、消耗品のティッシュペーパーや口腔スポンジ、絆創膏などの費用です。下記の費用は、年金で支払うことができました。

注:グループホームとは
グループホーム「認知症対応型共同生活介護」は、家庭的な環境と地域住民との交流のもと、入浴、排せつ、食事などの日常生活上の世話と機能訓練を行い、能力に応じ自立した日常生活が営めるようにする介護サービス施設。
月々の費用は、「介護保険サービス費の自己負担分」+「生活費」(居住費+食費+その他雑費)の実費。生活費は、地域や設備、居室の広さなどによって異なります。初期費用は、施設によって異なります。

サービス付き高齢者向け住宅

 夫を亡くした88歳のKさん(千葉県)は、一人住まいは夜が不安と、サービス付き高齢者住宅を終の棲家とすることを決めました。地上3階建て52戸、食堂や浴室、洗濯室などのほか、共有スペースとして各階に談話コーナーがあり、1階には24時間介護者が常駐している事務所があり、アクティビティーも充実しています。

 Iさん80歳(東京)は、高台の自宅は買い物にも外出にも不便なうえ、膝痛で外出先で歩行不能になった経験から、サービス付き高齢者住宅への入居を決心。駅や外出先に近いこと、ベッド脇や浴室にある「緊急時通報装置」や一定期間動きがないとスタッフに知らせる「リズムセンサー」や、常駐スタッフによる安否確認などで、安全・安心が決めてに。

 KさんもIさんも、現在は、介護サービスを利用していません。介護が必要になったら、介護保険で別途サービスを受ける予定です。立地によって、家賃は異なり、月の支払いも異なることが、この2例からもわかります。

注:サービス付き高齢者住宅(サ高住:さこうじゅう)
「有料老人ホーム」の多くが「利用権契約」なのに対し、「サ高住」は「賃貸契約」を結んで入居します。両者はサービスと設備も異なり、「サ高住」に義務づけられているのは「午前9時から午後5字までの生活相談」「安否確認」のサービス、設備では、バリアフリーと原則25m2以上の居室だけ。しかし、実際には、有料老人ホームと変わらないところもあることから、「サ高住」も「有料老人ホームの一種」と位置づけられて、自治体の指導・監督を受けるようになりました。施設によってサービスなど異なりますので、よく調べてみることが大切です。

事前に確認したい「重要事項説明書」

 重要事項説明書には、老人ホームやサ高住の運営会社の情報や施設概要、職員の配置体制、サービス内容、料金など、契約内容が具体的に書かれています。不明な点があれば、見学の時に質問させてはっきりさせましょう。サ高住の中には、居室から食堂までの移動支援や歯磨き介助が有償である場合があります。
 住まいの地域や今後利用したい土地のことを今のうちから調べて、いざ利用したいと思う時に、無理のない判断ができるようにをしておきたいですね。

 独立行政法人福祉医療機構が運営する福祉・保健・医療の総合情報サイト「WAM NET]の「サービス提供機関の情報」からも、各施設の「重要事項説明書」をダウンロードできます。重要事項説明書は、老人福祉法第29条に基づいて都道府県への提出が義務付けられています。
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/

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