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垢抜けたビスケット

久しぶりにケンタッキーを食べた。

冒険できない性質なので頼むのはいつもペッパーマヨツイスターセット+オリジナルチキン+ビスケットだ。

ビスケットはいい。脂でベタついた口の中をサクサクしたビスケットが上書きしてくれる。
それからコーラを流し込むともうたまらない。ビスケットで一気にパサパサになった口の中が潤う。この瞬間はいつも全世界とカーネルサンダースに感謝している。

そんなことを繰り返しているものだからケンタッキーの匂いを嗅ぐとビスケットが食べたくなる変なパブロフの犬になってしまった。


今回もいつもと同じものを注文して食べる。いつでもオリジナルチキンはおいしい。
ケンタッキーをあと50年くらい食べるとして私はきっと死ぬまで手と口の周りをベッタベタにせずに完食することはできないんだろうなと思う。無人島でケンタッキーしか食べるものがなかったら上達するのだろうか。

ペッパーマヨツイスターも美味しい。てりやきツイスターはなんだかんだ頼んだことがない。そういえばサンドも頼んだことがない。
サンド的なものはマックで食べられるしトルティーヤでくるまれたてりやきもコンビニで似たようなものが食べられるよなあと思ってしまう。
私が食に感じる価値は「代替品がないこと」にあるのだろうか。

手と口の周りをベッタベタにしてメインを完食する。あとはビスケットだけだ。ビスケットってちょっと扱いに困るんだよな。はちみつついてるからデザート扱いなんだろうけど普通にチキン乗せても食べられるしな、いつ食べるべきなんだろう。


ひとくち、ビスケットをかじった。

なにか違和感を覚える。理由はわからないが今までの雑然とした感じがなくなっていたように思えた。久しぶりに食べたからだろうか。

もうひとくちかじる。
やはりそれは勘違いなどではなく、確かに存在している違いだった。

妹にひとくちかじってもらった。

「なんか、大学デビューしたね」

そう、大学デビュー。それだ。それが1番近い。
今まであった全粒粉独特の感じがなくなってきちんと整った味になっていた。ほのかなしょっぱさも感じない。

どうして、どうして大学デビューなんてしてしまったんだい。
ちょっと野暮ったくて垢抜けなかった君のままでよかったのに。
なにが原因なんだ。恋でもしたというのか。どんな男だ。見たこともない男の影に怒りを抑えられなくなってしまった。

変わってしまったビスケット。私が好きだったあの子はもういない。

君が変わってしまっても私はきっと君を頼むよ。ビスケット。

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