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街歩き謎解きの理想像 〜イベント企画者に読んで欲しい10のポイント〜

 この文章は、街歩き謎解きイベントに何度も参加している謎解き好きな私が、「こんな街歩き謎解きをがあったら最高だな」という街歩き謎解きの理想像を思い描くものです。
 街歩き謎解きを企画する人へ向けて、よりよいイベントを作るための参考になるよう書いています。「街歩き謎解きを企画することになったが、やり方が全然わからない」という方に読んでいただきたいです。
 また、謎解きが好きな人に対して「あー、そういうのいいよね」「そうなると嫌だよね」と思ってもらえる『街歩き謎解きあるある』としても楽しめると思います。


街歩き謎解きとは何か、街歩き謎解きのメリット

謎解きとは、謎解きイベントとは

 謎解きとは、事前知識はあまり必要とせずに発想の転換で解けるパズル・クイズのことです。ナゾトキ、ひらめきパズル等の呼び方もあります。謎解きはテレビ番組、書籍、グッズ、動画投稿サイト、SNSサイト、リアルイベントなど様々な媒体で楽しまれています。

簡単な謎解きの例。『たぬき』があるので「た」ぬき、
ということで文字列から「た」を抜くと『せいかいはぜんこく(正解は全国)』となる。

 謎解きイベントとは、参加者が主人公となりストーリーに沿って複数の謎解き問題を解いていき、最終的なクリアを目指す体験型イベントです。リアル謎解きゲームとも呼ばれます。謎解き専用の部屋であったり、劇場などで開催されたり、ウェブ上で参加できたりするものもあります。
 近年、謎解きファンは広い世代で増加しており、謎解きイベントも大人気のコンテンツとなっています。

街歩き謎解きイベントとは

 謎解きイベントの中でも、街や大型の施設などで特定のスポットを巡り謎解きをするものが『街歩き謎解き』です。周遊型謎解きとも呼ばれます。
 一般的に街歩き謎解きは以下のような流れで行われます。

1. 受付で謎解きキットを購入する
 多くの謎解きキットは、ストーリーや謎解き問題が記載された小冊子、地図、ペグシルなどの筆記用具、それらを入れる袋で構成されます。ストーリーが進むまで開封してはならない封筒や、用途不明のアイテムが含まれることもあります。また、LINEやウェブサイトで問題を出すタイプの謎解きもあります。

2. 指定された場所へ行き、謎解きキットの謎を解く
 指定場所に謎解きが用意されていたり、謎のヒントが提示されたりするパターンなどがあります。

3. 謎を解くことで、新たな謎や次の行き先の指示が出る
 謎を解くことで指示された場所で問題用紙をもらったり、謎解きキットの封筒の開封指示が出たりして次の問題が現れます。

4. 全ての謎を解きゲームクリア
 2と3を繰り返し、全ての謎を解くことができればクリアです。

街歩き謎解きイベントと他の謎解きとの違い

 街歩き謎解きと書籍や劇場型などの他の謎解きとの違いを挙げていきます。

・『体験』できる
 実際に体を動かして街を歩くことで、書籍やウェブ上の謎解きよりも「自分が主体で動いている」ことが感じられ、物語・イベントへの没入感が高まります。

・街や施設の紹介
 街歩き謎解きが開催される目的の一つは、街や施設について詳しく知ってもらうことにあります。

・参加費が安い
 劇場型謎解きイベントに比べ、街歩き謎解きは比較的参加費が安いことが多いです。

・制限時間がない
 劇場型の謎解きイベントは、制限時間内のクリアを目指すものですが、街歩き謎解きは制限時間はなく参加者がそれぞれのペースで挑戦することができます。

・幅広い層が参加する
 街歩き謎解きは、謎解きガチ勢から全く初めての人まで幅広い層が参加します。年齢層も小さな子どもから街について知りたいご年配の方まで、様々な世代の方がいます。

そのスタンプラリー、街歩き謎解きにしませんか? 街歩き謎解きを開催するメリット

 もしもあなたが街の広報イベント担当者で、「次のイベント、またスタンプラリーでいいかな」と考えていたら、ちょっと待ってください。そのスタンプラリー、街歩き謎解きにしませんか? 
 街歩き謎解きは、たくさんの人が参加してくれるというメリットがあります。『謎解き』と聞くと遠方からでも駆けつける謎解きガチ勢の方もいらっしゃいます。近くでやってるなら行ってみようかと思う潜在的謎解きファンも多いです。テレビやYouTubeの影響で謎解きが好きな子どもも多いので、家族単位で来てくれることも見込めます。「スタンプを押すだけのスタンプラリー」では呼べなかった人々が足をのばしてくれるでしょう。
 また、街のことを詳しく知ってもらえることも街歩き謎解きならではのメリットです。謎解きの中に名所、歴史、特産品などを組み込むことで、参加者が主体的に知ろうとすることになります。ただガイドブックをながめてもらうより強く印象に残り、街のことを好きになってくれるかもしれません。
 もちろん、街歩き謎解きを開催することのデメリットもあります。ただのスタンプラリーよりも格段に準備の手間がかかります。イベント開催中は常に管理することも必要です。
 それでも、街歩き謎解きを開催するメリットは十二分にあると思います。街歩き謎解き、やりましょうよ! 

街歩き謎解きの理想、企画者に意識して欲しい10のポイント

 ここからは、あなたがイベントの企画者で「初めて街歩き謎解きをやることになった」という設定のもと、意識して欲しいポイントを挙げていきます。
 筆者である私はこれまで何度も街歩き謎解きに参加してきました。その中には「ものすごく良かった!」と感動したものも「イマイチだったな…」とがっかりしたものもありました。
 そういった経験から「こんな街歩き謎解きがあったらいいな」という『街歩き謎解きの理想像』を思い描きました。街歩き謎解きを企画される方に参考になればと思います。

①謎解き制作団体へ依頼する

 特に、まだ街歩き謎解きをやったことがない、初めて街歩き謎解きを企画するという場合に必ずやってほしいことが、謎解き制作団体へ謎作成の依頼をすることです。
 意外に思うかもしれませんが、謎解きイベントの謎作成を専門に行う会社はこの日本に数多く存在します。テレビやYouTubeで大人気の謎解き団体もあり、謎解き作成を依頼できます。

RIDDLER(リドラ)
https://riddler.co.jp/solution/

SCRAP
https://www.scrapmagazine.com/whatwecando/

 大手謎解き制作会社への依頼の相場を調べてみて「こんなに予算ないよ……」と思われた方もいるかもしれません。でも大丈夫です、会社でなくても、大学や社会人の謎解きサークルもあります。有志のサークルといってもしっかりとしたイベント実績を持つ団体もあります。あなたの近隣のサークルを調べてみてコンタクトを取ってみてはいかがでしょうか。
 謎解き制作団体へ依頼して、誰が作った謎解きなのかを明記することはとても重要な意味があります。「この団体が作った謎解きなら良いものだろう」と参加者に安心感を与え、参加したいという動機づけになることです。
 街歩き謎解きを含めた謎解きイベントは、基本的にその性質上ネタバレ厳禁です。故に「レビューを見てから決める」ことはできません。「参加してみたけどつまらなかった」という思いはしたくないものです。イベント参加するかどうかの判断材料として、「謎解きを作った人」を明記してほしいと考えます。

②特定の場所に行って初めて解ける謎がある

 街歩き謎解きでは、実際に街を歩いて謎の手がかりを探します。そんな街歩き謎解きで、特に謎解きファンとして嬉しいのは、その場所に行って初めて解ける謎です。
 例えば、小冊子のクロスワードパズルが歴史看板と照らし合わせると解ける、小冊子の意味不明な文字列が、建物の並びと対応していて並び替えると答えになる、という感じです。
 室内や他の街では成立しない、『その街ならでは』の要素が入っていると、「ここに来た甲斐があったな」と満足するのが謎解きファンなのです。街歩き謎解きを作るならば、是非とも入れていただきたいと思います。
 ただ、そういった特定の場所での謎解きヒントの管理には要注意です。街歩き謎解きの開催期間が長い場合、ヒントとなるものが変わってしまう可能性があります。店の看板をヒントにしていたが閉店してしまった、指定場所の近くで道路工事をしていて行けない、といったことがあるかもしれません。
 謎解き作成時には、ヒントはなるべく変化のないものを選ぶ、工事の予定を調べる等、気をつけておきたいです。
 街歩き謎解き開催中は、近所に住む人に協力してもらい、変化がないかチェックするのが現実的かと思われます。 

③街歩きの導線を親切に設定する

 街歩き謎解きでは、いくつかスポットを歩いて巡ります。「自由な順番で巡ってもらえばいいか」と考える方もいるかもしれませんが、プレイする側としては
想定ルートを作ってほしいと願います。行くべきスポットが複数あるとしたら、1番目にここ、この道を通って2番目にここ、と巡る順番を指定してほしいのです。
 同じ道を何度も歩くだけ、来た道をただ戻るだけだと、遊ぶ側としては不満です。初めて訪れる街だと土地勘がなく迷ってしまうかもしれません。
 街歩きの導線を親切に設定することで、満足度の高い街歩き謎解きになるでしょう。 

④ゴールまでのシナリオは一本道にする、失敗で終了するシナリオは作らない

 時間制限ありの劇場型謎解きイベントでは、時間内に謎解きが終わらない場合は、謎解き失敗で終了することもあります。ですが、『失敗で終了』は街歩き謎解きではやらないほうがいいと考えます。
 街歩き謎解きには謎解き初心者も多く参加します。カジュアルに謎解きを楽しんでもらうために、参加者に「失敗で終わった」という不快な思いはさせたくないです。また、謎解きクリアできなかった人は勿論のこと、クリアした人も「失敗ルートではどうなったのか」が気になるのでみんなモヤモヤします。
 イベント企画者の中には「失敗ルートや成功ルートなどシナリオを複数作れば、同じ人に複数回キットを買ってもらえるので儲かる」なんて考える人もいるかもしれません。しかし、このような謎解きイベントは謎解きファンからの信頼を著しく低下させます。絶対にやめましょう。
 

⑤最終問題にはこれまでに解いた謎を利用する

 謎解きファンとして特に嬉しいのが、最終問題にこれまで解いた謎を利用することです。
 例えば、謎解きキットの冊子を指示通り折り曲げると元の問題から新しい問題に変わる、といった感じです。下記の画像のような例です。
 それまで解いてきた謎とのつながりを発見した時、謎解きファンは大きな感動をおぼえて満足感が高まるものです。謎解きイベントにはそうした楽しい興奮を与えるものであってほしいと思います。

これまで解いた謎を利用する例。前出のたぬき謎解きのイラストが、
「田植え」のイラストに変わった。そうすると、
たうえ→「た」の上、ということで文字を拾うと答えは『せいは(制覇)』となる。


⑥難易度設定、所要時間、歩く距離の目安を明記する

 謎解きイベントでは基本的に謎解きの内容に関する情報は伏せられています。しかし、難易度設定、所要時間、歩く距離の目安は明記するほうがよいです。
 難易度は「初心者向け」や「手応えのある謎」などの難しさの表示も大事ですし、小学校で習う漢字の学年がわかるほうがより親切でしょう。
 所要時間は、ゆっくりプレイしてクリアまでにかかる時間を記載するのがよいでしょう。そのためにもテストプレイを行って所要時間を測る必要があります。
 歩く距離の目安の記載も、参加者にとって優しい対応です。街歩き謎解きの参加者には体力のない方も移動が不自由な方もいるでしょう。歩く距離の他、勾配や階段の有無も記載があるとより親切です。

⑦テストプレイする

 テーマを決め、謎を作成し、コースを設定し、関係各所と連携し、諸々の作業を終えて街歩き謎解きが完成します。そうしたら必ずやってほしいのがテストプレイです。謎解き開始からクリアまで、一通りプレイして、不具合がないかチェックしましょう。
 できれば、テストプレイを行うのは複数人いる方が良いです。人によって知識や考え方はそれぞれです。謎解きの内容を全く知らない初見の方にもテストしてもらい、難易度を確かめましょう。
 テストプレイをしてうまくいかなかった箇所は、ヒントを足したり注意書きを追加したりして、スムーズに進行できるように改善できると良いです。

⑧クリア者にはクリアカードを渡す

 『クリアカード』とは、謎解きを最後までプレイしてクリアしたことを示す証明書のようなものです。謎解きイベントのタイトルと「クリア」に類する文言が書かれているだけでクリアカードと呼べます。
 イベント企画者の方は「イベントをクリアしたら豪華な賞品を用意したほうがいいのでは」と思うかもしれません。ですが、謎解きファンは「クリア賞品はなくていい」と考える人が多いでしょう。その代わり、「クリアカードは絶対欲しい」と思うものなのです。
 クリアカードはイベント広報としても機能します。クリアカードの写真を撮ってSNSに投稿してもらうことで、イベント情報の拡散効果が見込めます。それを見越して、クリアカードには謎解きのネタバレになる要素は記載しない方がいいでしょう。

⑨プレイ後にアンケートを取る

 謎解きイベントの終了後は、プレイの感想や良い点、悪い点などを記述できるようアンケートをとりましょう
 謎解きプレイヤーは自分が参加した謎解きの感想を言いたがるものです。しかし、謎解きの内容を他言することはネタバレになるためできません。その気持ちの向かう先としてアンケートを用意してくれると、参加者は喜ぶと思います。
 アンケートには謎解きに関することだけでなく、街歩きで訪れたスポットへの感想を訊ねることもできます。街について広報効果があるとわかれば、「次のイベントも謎解きをやろう」となるかもしれません。今後につなげるためにもアンケートは重要です。

➉告知・宣伝をする

 そもそも、謎解きイベントがあることを知らなければ誰も参加できません。街歩き謎解きイベントの告知・宣伝を行いましょう。
 チラシやCMなど実費がかかる宣伝でなくとも、SNSや公式ホームページで情報を見れるようにするだけで効果はあると考えられます。
 謎解きイベントを紹介するサイトも存在するので、そちらに掲載を依頼するのも手です。
 公式ホームページを作る際は、検索しやすいように『謎解き』『街歩き謎解き』などのワードを入れておくと良いです。情報を得たい人がたどり着きやすくなります。
 謎解きファンは案外近くにたくさんいるものです。そういった謎解きファンを取りこぼさないように情報を広めましょう。


まとめ 楽しい街歩き謎解きがたくさん開催されますように

 色々書いていきましたが、筆者である私はただの謎解きファンです。私が願うことは、「楽しい街歩き謎解きを遊びたい」この一点につきます。
 謎解きは大人気コンテンツだと述べましたが、どうしても人口が多い都市部での開催が多くなります。そのため、都市部から遠い地方民は体験型謎解きイベントに飢えています。私もその一人です。
 もっと多くの場所で、たくさんの街歩き謎解きがあれば嬉しいと思い、私はこの記事を書きました。どこかの誰かの助けになれたらこれ以上の喜びはありません。楽しい街歩き謎解きが数多く開催されることを願っています


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