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クリスマス カウントダウン #5 世界で一番の贈り物

我が家の本棚には絵本がたくさんあるが、そのなかでもクリスマス絵本が多い。
こども向けから大人向けまで様々、
にぎやかなクリスマス
静かなクリスマス
心温まるクリスマス
「世界で一番の贈り物」は第一次世界大戦下に戦場で起きたクリスマスの奇跡の物語である。

時は1914年のクリスマス
戦場の最前線
塹壕の中でドイツ軍の攻撃に備えていたイギリス軍
ドイツ軍の塹壕で白旗がふられている
続いて聞こえてきた大声に耳を疑う
「メリークリスマス!クリスマスおめでとー!」 
驚きながらも
「こっちからもメリークリスマス!ドイツ野郎!」と応戦
それだけでは終わらず、酒を片手に一杯一緒にやろう、とドイツ兵が近づいてくる
続けて両軍の兵士が歩み寄る 
互いに握手をかわし、ラム酒で乾杯し、語り合う
サッカーボールを持ち出し試合がはじまる

「この戦争を終わらせる方法が解ったよ。サッカーの試合で決めればいい。サッカーならだれも死なずにすむ。親を失う子もない。夫を失う妻もない。」

楽しい時間はまたたくまに過ぎ去る
やがて別れの時
その晩、それぞれの塹壕で両軍がクリスマスキャロルを歌い合う
つかの間の、互いを思いやる、心温まるひととき
誰もが平和を願っている


クリスマスに起きた奇跡はクリスマス休戦と呼ばれ、公式記録は存在しない非公式の休戦だったとのこと。しかし、兵士たちがさまざまな形で、この体験、エピソードを伝え、語り継がれていき、本として形に残ったのである。


戦時下にあっても互いを思いやる気持ちにあふれた心温まる物語。
世界で一番の贈り物は互いを思いやる気持ちそのものであることを改めて感じる。
また、挿絵には青色が多く使われている。
深い青から明るい青へ移り変わる色のグラデーションが夜から明け方へ変化する描写だけにとどまらず、
暗い闇から明るさに満ちた希望への思いが込められているように感じられる。

何かと忙しなく、先行き不透明な世の中ではあるが、こころ穏やかにクリスマスを迎えたい。
温かい気持ちになれる素敵な絵本である。

絵本で楽しむクリスマス

こんな今だからこそ、普段とは違うクリスマスの過ごし方、迎え方を考えてみてもよいのではないだろうか。

「世界で一番の贈り物」 
マイケル・モーパーゴ 作
マイケル・フォアマン 画
佐藤 見果夢 訳

マイケル・モーパーゴはイギリスの児童文学作家で、この作品以外にも戦争をテーマにした物語を数多く手がけている。
どの物語を読んでも最後は温かい気持ちになれる。
大切にしたい作品ばかりである。

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