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ルックバック

新聞の書評で見かけて読んでみたいと思ったマンガ、「ルックバック」


学年新聞に毎回4コマ漫画を発表し、クラスメイトから一目置かれる小学4年の少女、藤野。
ある日、不登校の少女、京本に一枠譲ることを打診され、渋々承諾する。
京本の絵を目にした藤野はその圧倒的な画力に打ち砕かれる。
マンガがなければ出会うことがなかったであろう2人、やがて共に作品を描くようになり、絆を深めていく。
藤野は漫画家として活躍しはじめ、京本は画力をさらに高めるため美大へ進学する。
それぞれの道を歩み始めたふたりだが、ある事件により再会を果たすこととなる。


あらすじを文字にすると、よくあるありふれた話、ではある。
タイトル「ルックバック」は「背中を見る」だが、文字通り、ひたすら絵を描き続ける2人の後ろ姿が淡々と描写されるシーンが多数ある。
この描写を文字にしたら、
「毎日ただひたすらにマンガを描き続けた」   になるが、
ただひたすらに、淡々とした背中の描写…
その背中が物語る意味は文字だけでは表せない。
「マンガ」だからこそ見せられるものがある、そんな気がした。
そして、その背中から、表現し、創作しつづけることはひたすらに「孤独」だと感じた。
以前、米津玄師さんは雑誌のインタビューで語っていた。

                         日々パソコンの前に座って籠りっきりになって音楽を作っている状況は、客観的に見たら独房とそう変わらないんじゃないかなって。                                       


ミュージシャンやマンガ家、画家、小説家など、作品を創作、創造し、表現する人たちは、ひとたび売れれば脚光を浴びる華やかな存在でもある。
しかし、そこに至るまでの日々はひたすらに「孤独」でありストイックである。
知名度や評価が上がっていく中で感じる重圧、迷い、表現することへの責任を背負っていく。

目は口ほどに物を言う
と言うが
背は口ほどに物を言う、かもしれない。


「背中で語る」
その意味を知った。

きっと誰もが背中に何かを背負っている、
その背中が背負っているもの、
その背中が語ること、
わたしの、あなたの、その背中には何が描かれているのだろうか…


「俺について来い」 
今どき流行らないし、パワハラにもなりかねない…

「言わぬが花」
「能ある鷹は爪を隠す」
言わぬ、隠すと言いつつ、静かにアピール

「雑草魂」
踏まれても、抜かれても生える、しぶとい雑草のように…

「ふりむくな、ふりむくな、うしろには夢がない」
過ぎたことに惑わされず、前進あるのみ
後戻りできないのが人生だ


読み終えたマンガの背表紙を見ながら、ふとそう思うのであった。

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