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孤立、ではなく 孤独、でもなく

「ヒロシです。」の自虐ネタで一躍人気者となった芸人ヒロシ。
その後、「あの人は今…」「一発屋」などと揶揄されるも
今やソロキャンプブームのけん引役として再び輝いている。

なぜキャンプ?
ルーツは彼の子供時代にあった。


炭鉱で働いていた彼のお父さんは休日によくキャンプに連れていってくれた。
キャンプ道具は自宅の鍋やフライパン
のこぎりで竹を切り、骨組みを作り、ブルーシートをかぶせたテント
特別な道具を使わずとも家にある物で工夫して楽しむワイルドなキャンプ。


彼が小学3年生の頃、落盤事故に見舞われたお父さんは左足を失う。

足を失ったお父さんは畑違いの事務の仕事に携わり、家族のために一生懸命勉強し、働いてくれた。


キャンプの思い出はそこで途切れる。


***


漫才師としてのスタートは順風満帆とはいかなかった。
試行錯誤の末、自虐ネタでブレイク
テレビオファーが殺到し、月収は3万円から4千万円へ
高級マンションに高級外車を購入
しかし心は満たされてはいなかった。


ネタを作り続けなければならない重圧
売れっ子となっても元々の人見知りな性格から周囲と打ち解けることができない。


「こういう世界では生きられない」


行きついた先がソロキャンプであった。
子供時代の思い出のキャンプが彼を救ってくれた。


自分だけの
自分のためのキャンプ


周囲から浮いた存在、孤立していた彼の姿はそこにはなく、
自分自身と向き合い、自分のために、ひとりの時間を愛する姿があった。

キャンプではたき火にこだわっている。

火打石で火をおこす、まきは買わずに流木や小枝を使う。
あるもので工夫して楽しむ方法はお父さんから引き継がれている。

ライターや買ったまきを使えば簡単だが、あえてそうせず、ひと手間かけるところに彼のこだわりが見える。

効率を重視すれば手間をかけないだろう。
自分のために、自分自身に手間暇かけることが、
自分を愛し、自分を大切にすることにつながっている。
ひいては、自分以外の他者を愛することにもつながるのではないか。


「孤立」も「孤独」も一人になる、という点は同じだが、
「孤立」は状況を表し
「孤独」は気持ちを表す、とされている。


彼は独りでも
決して独りよがりではない


ソロキャンプとはこうである、
という持論を述べるのではなく
ソロキャンプは自由だ、と言う。
それぞれが自立したキャンプをする
それぞれが自由に楽しむ
それぞれの自由を尊重する


ソロキャンプについて語る彼の言葉には
他者を認め、尊重する思いやりに満ちていた。


孤独になってこそ
孤独の意味を知る
孤独になってこそ
他者の存在に気付く


自分の居場所を見つけた彼の姿、言動からは
「孤立」ではなく
「孤独」でもなく
「個独」を感じた。


「孤」ではなく「個」を大切にする、
そんなメッセージが伝わってきた。



***


そんな彼であるが
結婚の予定はないらしい。


「そもそも知り合うきっかけがない。それよりキャンプに行きたい。夢は楽しく死んでいくこと。」


充実した今を生きる彼らしい言葉だ。

今後も素敵なソロを奏でてほしい。

願わくば私も
時にコーラスを楽しみ
時にソロを奏でながら
楽しく死んでいきたい。

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