「想像力をふくらませる仕掛け」が価値/価格になる芸術(芸術起業論/(著)村上隆)
芸術については、知識ゼロでしたが、芸術の価値や評価について読みやすく理解できました。特に、芸術が評価されるための考え方については、これからの「意味の社会」においては、学ぶところが多くありました。
まず評価される芸術には、「作品を通して世界芸術史での文脈をつくること」が重要であり、それらを伝えるためのしかけや、コミュニケーション / プレゼンテーションが重要と書かれています。特に海外で評価されるには芸術や娯楽では「翻訳」にもっと投資するべきと書かれています。
芸術という感覚のように思われる分野で、プロダクトの外にあるコンテクストの重要性は、これからのビジネスにも共通する部分が多くあると思いました。
コンテクストは、歴史・美術史のなかでその作品がどういう立ち位置なのかを言語化し。芸術家は、客観的な人類の歴史という視点で、自分の作品に「意味」を与えています。いま、この「商品/サービス」や「企業」があることを、客観的に物語にし、「意味」を与えることを、ビジネスでは参考にしていかなければならないと思いました。
金銭を賭けるに足る物語がなければ芸術作品は売れません。売れないなら西洋の美術の世界では評価されません。この部分を日本の芸術ファンは理解できない、理解したくないんです。
引用:芸術起業論 / 第一章 芸術で起業するということ
価値のないものに「人間の想像力をふくらませる」という価値が加えられているのです。つまり、芸術とは想像力をふくらますための起爆剤が、いくつもしかけられていなければならないのです。
引用:芸術起業論 / 第一章 芸術で起業するということ
作品に意味を付ける方法について、唯一の自分を発見し、その核心を歴史と相対化させつつ発表することとあります。
ここのポイントは、「唯一の自分」と「歴史を相対化」させるという内向きなものと、外向きなもののバランスが必要になるということ。自分を欲求をさらけだし、自らの核心を作品のテーマにすることというのは、とても内向的な行為に感じます。限りなく自分自身に向かうことで、オリジナルになろうとする行為です。同時に、その作品のテーマが、「歴史」「美術史」において、どういう立ち位置にいるかを図り、そして、伝える必要があるといいます。
限りなく内向きに向かっておきながら、客観視しすることはとても難しい行為だと思います。自分自身を歴史の一部という視点で見るのは難しいですが、そこに到達できると、「唯一の自分」が歴史の物語の一部にはいることができることになりそうです。
一見ネガティブな要素ばかりの彼のライフスタイルは、芸術家を生業に選んだ瞬間に逆転減少を起こせるのです。「世界で唯一の自分を発見し、その核心を発表すること」世界の美術に共通のこの前提に「オタクでロリコンで元暴走族でゴミ収集火で芸術家志望」というコンビネーションなら飛び出せるのです。
引用:芸術起業論 / 第三章 芸術の価値を生み出す訓練
言語化するには、とても難しいですが、ビジネスの世界で、「意味」を重要視するなかでは、芸術の世界はとても参考になると思いました。
一読の価値ありです!
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