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サービス事業への転換はオタク経済を参考にすべし

・2次元の最終形ポケモンのキャラクター経済圏
・2次元と3次元でコミュニティを形成するキャラクター経済圏
・ドラゴンボールなどの過去のブランドへ再集結するというトレンド

この内容は、「オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件(著)中山 淳雄」に書かれている内容です。アニメやマンガ、ゲーム、プロレスなどの事例をサブカルチャー・オタク市場として分析し、その戦略について解説されています。

解説は、鉄腕アトムからオバケのQ太郎、バンドリ!、ポケモンGO、名探偵コナン、、、たくさんの事例を元に詳細に観察されています。

オタク市場の変化の推移は、他産業でもいわれる「モノからコトへ」につながる要素や、D2Cにも通じるものがあり、学べる内容が多々あります。

学びになった部分

色んな箇所で学びが多いですが、今回は下記部分を紹介したいと思います。

・コンテンツ産業におけるパッケージメディアが減少し、古いロケーションビジネスが増加する要因
・コンテンツ産業の「メーカー」から「サービス事業者」への変化


ロケーションビジネスが微増する要因

■ コンテンツ業界
パッケージメディア
     - 出版(書籍・雑誌)、新聞、VHS・DVD・ブルーレイ、CD、フリーペーパー、ゲームソフト
 ・インターネットメディア
     - オンラインゲーム、インターネット広告、電子書籍・雑誌、動画配信、音楽配信
放送メディア
     - テレビ地上波、テレビその他、ラジオ
ロケーションメディア
     - ステージ・コンサート入場料収入、カラオケ、ゲームセンター、映画

上記、コンテンツ業界の売上推移(2006〜2015)をみると、インターネットメディアは2倍以上の増加、パッケージメディアは減少、放送メディアは横ばい、ロケーションメディアは微増しています。

これは、単純にリアルからデジタルになっているということであれば、「リアル」なロケーションメディアは、パッケージメディアと同じく減少するはずですが、増加しています。そして、詳細にみるとゲームセンターやカラオケは減少していますが、コンサートやミュージカル、歌舞伎というったステージ・コンサート入場料収入が増加しています

このロケーションビジネスが成功している要因は、「ソーシャルやシェアリングを助長するロケーションの『コミュニティ機能』が時代をおいて再評価されている」とあります。

ロケーションビジネス=「多くの人が共感するイベントへの参加」は、同じ体験を共有できる人たちとの楽しむことができることができるコンテンツとして盛り上がっていっています。

逆に、カラオケやゲームセンターといったコンテンツは、共感できる人たちが参加者のみになり、ソーシャルメディアなどで人と人とのつながりの価値を高めることができないため、減少していると考えられます。

つまりロケーションビジネスをする際に、重要なのはリアルな体験を提供することではなく、「人と人」とをどうつなげるかということに価値があるということです。本書の中で説明されていますが、これからのマーケターの役割は、アプリや、SNS、イベントのコンテンツの影響が最大化するように設計していくことが重要になってくるとあります。

「1万人の会場の興奮を10万人の同時視聴者・フォローユーザーにも熱量を伝え、それを事後的に聞き感じる100万人にその場にいるべきだったと悔しがらせる」。一つのコンテンツの影響範囲を最大化させる仕掛けを、イベント・イベントごとに演出していく。マーケターの役割は、コミュニティマネジャーの機能へと変貌しつつあるのだ。
引用:中山 淳雄. オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2429-2438). Kindle 版.

コンテンツ産業の「サービス事業者」への変化

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引用:中山 淳雄. オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件 (Japanese Edition)

上記は、1995年を「1」としたときの各ジャンル別の産業規模になります。ほとんどのジャンルは、2000年頃をピークに衰退していきます。そして、著者は、この成長しているジャンルは、アニメでも、音楽でも、メーカーのように作ったものを提供するだけのモデルから、ユーザコミュニティを前提に、コンテンツをアップデートし続ける双方向モデルへとビジネスモデルを変えることができたかどうかが、2010年代以降の成長することができたかどうかの分かれ目になっているとあります。

ここで、具体例として、「2.5次元化」をあげられています。下記に引用します。

この具体的事例として2・5次元化というビジネスモデルがある。量産しにくい2次元の高価で作品性の高いものを経済圏の基盤としつつ、3次元の安価で機動性の高いメディア・ツール・タレントにのせてコミュニティを形成しながら、2次元と3次元をないまぜにしながらメディアミックスによって作品全体の「キャラクター経済圏」を形成していく。このモデルが意図したものとして現れ始めたのが2010年代に入ってからと言える。
中山 淳雄. オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1045-1049). Kindle 版.
情報過多の消費社会において、ほぼすべてが一過性となる人々の「興味」を一つのキャラクターに永続させ、常にコンテンツがライブであると実感させるために、とめどなく動き続けるプロモーションとマネタイズを両立させる(視聴装置ではなく)体験装置が、このコンセプト成功のからくりとなっている。
中山 淳雄. オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1268-1275). Kindle 版.

ここにある事例は、D2C と近いものだと感じました。「D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略」にありましたが、伝統的なブランドが、TVCMやポスターなどの単発のステージのようなコミュニケーションから、D2Cでは、世界観を伝えるために、連続ドラマのようなコミュニケーションをしており、常に発信し続けていました

コンテンツ産業におけるアニメやゲームは、これまでは、過去の伝統的なブランドのように、時間をかけて製品を作り出し、ユーザにサービスとして提供していました。アニメやゲームの制作は、数年がかりで、数億円の制作費が必要となり、これを連続で提供し続けることは不可能でした。しかし、リアルなイベントやSNS、ソーシャルゲームのアップデートを組み合わせることにより、世界観を発信し続けることができているのが、成功要因のひとつだと感じました。

まとめ

最初にも記載しましたが、本書では、鉄腕アトムの時代までさかのぼり、コンテンツビジネスの変化を紐解いています。日本のアニメやゲームといった産業は世界的にも非常に強いと感じました。しかし、そこに至るには、当然ですが、数々の苦難や変遷があったことを知ります。少なくとも、手塚治虫のアニメは、1話あたり250万円の制作費に対して、50万円で契約しています。「オバケのQ太郎」は平均視聴率が30%であっても放送が中止になっています。

こういうった状況の中で、どうやって現在のコンテンツ産業ができあがっているかを見ることは、他の産業でも活かせる部分は多分にあると感じました。実際に、新日本プロレスの躍進は、コンテンツ産業の成功モデルを活用できたからに違いありません。これからD2Cのような世界観を売るような事業になってくれば、この成功例は必ず参考なると思います。

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