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男女平等への長い列

朝ドラ「虎に翼」を毎日欠かさず観ている。
百年経っても変わっていない世の中にたびたび憤り、それでもあの時代に生きた女性たちの苦労と努力の積み重ねでここまで進んできたことをありがたく思う。
毎日新聞で「虎に翼」のモデルを取り上げた記事を読み、その中で触れられていたのがこの本「男女平等への長い列」だ。

この2月に94歳で亡くなった赤松良子さんが92歳の時に書かれた自伝で、日本経済新聞の連載に加筆し、書籍化されたものだ。


84歳の私の母は、県の北西部の田舎の町で生まれ育った。7人兄弟の末っ子、高校へ行ったのは母とすぐ上の姉だけと聞いている。高校を卒業したあと、隣町の郵便局へ勤めていた。当時は、電話局も兼ねていて、母は電話の交換業務をしていたそうだ。今でも、○○さんのところは××番などと、たくさんの家の電話番号をよく覚えている。
母は、父と結婚後も勤めを続け、私を出産後はわずかな産休のあと、近所のお守りさんに私を預けて仕事に出ていたそうだ。途中、乳をやりに帰っていたと聞いたことがある。
その後、今の家に引っ越す際に仕事を辞めた。私が3歳になる前のことだ。

1歳の頃の私と母。なんともふてぶてしい表情が気に入っている(笑)

引っ越して妹が生まれてからは専業主婦だった母だが、私たち姉妹が小学校に上がったころから少しずつ働き始め、近くの小学校で事務の仕事をしていた。そこで学校現場の様子を見たからだろう、「学校の先生になったらいいよ。男女の差なく働けるから。男も女も給料が同じ、産休もある。」と何度となく言われたものだ。
大学受験の際、興味のあった文学部でなく教育学部に進み、教員になったのは、母に刷り込まれていかたらだと思っている。

さて、私が大学を卒業して教員になったのは1986年。
いわゆる男女雇用機会均等法が施行された、まさにその年だ。が、実際には世の中はまだまだ就職や職場において男女は同等などではなかった。
母があれほど「学校の先生は男女平等」と言っていた学校現場ですら、仕事の中身こそ変わらないけれど、男尊女卑的な扱いをそのあともずっと見ることになった。


この本を読んでメモしていたことがいくつかある。
一つは教育について。
仕事柄よく知っているつもりだった学習指導要領の改定について、実はこの書籍で、初めて気づいたことがあった。
私が中学の頃は「女子は家庭科・男子は技術」、高校では「女子は家庭科・男子は格技」だったのが、その後「家庭科は男女共修」となった。時代の流れとして当然だと単純に思っていたのだが、実は国連の女子差別撤廃条約に批准するためには男女の差別をなくす必要があり、教育の上でも「女子のみの家庭科」という男女差別をなくすことが必須だったのだ。
※こんな記事もあった。 


また、男女雇用機会均等法の制定に苦労されたことの一つとして、「当時の大臣が、女性は外で働いたりせず家庭にいるのが幸せ、という考えの人だった」と書かれていて、そりゃそうだろうとある意味納得したのだが、今でも(特に政権与党では)この考えの人が少なくないこともよくわかっている。
(だから私はあの党には投票しない)


1989年に結婚した時、本当は姓を変えたくなかった。
「(選択的)夫婦別姓」が話題になり始めた時期でもあり、「もう少ししたら夫婦別姓が認められるだろう、その時になったら旧姓に戻そう」と思いながら入籍した。
あれから35年。いまだに選択的夫婦別姓はいっこうに進んでいない。結局私は姓を戻すこともできなかった。
つい先日、経団連がこの件について問題提起してくれたことは明るい兆しではあるが、それでも進まないとしたら・・・。
そして、選択的夫婦別姓は30年経っても進まなかったのに、目にもとまらぬ早業で「共同親権」を通してしまったことからも、この国を動かしている人たちが何を大切にしているかがよくわかる。

話が逸れてしまった。

毎日「虎に翼」を見る中で、家庭や世の中での女性の立場への憤りや、寅子たちの奮闘にも関わらず遅々として進まないことへの口惜しさより、寅子の生き方に勇気をもらい、同じ女性として誇らしく思う気持ちの方が強くなってきた。
そして、この本を読んで、寅子だけではなく、その前にも後にも、様々な立場で力を尽くしてくれた女性がいたことを知り、本のタイトルが「男女平等への長い『道』」ではなく「男女平等への長い『列』」であることの意味を理解した。
私自身は、この列に一瞬でも加わることができただろうか。


本書より抜粋。
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 「志は高く」「Be ambitious」と女性たちに伝えたい。今は制度上は、女性だからといってできないことはない。女性たちは何にでもなれる時代なのだ。
 自分は何に向いているのか。社会のために何ができるのか。これ、というものを見つけたら努力を惜しまないでほしい。頑張っていればチャンスは必ずやってくる。尻込みせず、自ら責任を負って、チャレンジしてほしい。そうした積み重ねで、女性たちの道も広がり、列は続いていくと信じている。
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この本を読み終えたちょうどその時、日本のジェンダーギャップ指数がG7最下位の118位という報道があった。
「長い列」はこれからも続き、たくさんの人が加わっていくだろう。
還暦を迎え、仕事からは離れたが、少しでも列に加わる術を探していきたい。

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