『凶宅』ブックレビュー
著者 三津田信三
刊行 2008年
じわじわくる恐怖が、読後もあとを引いて落ち着かない。
家がテーマとなっているホラー小説をネタバレなしで紹介します。
長く住み続ける人がいない。
よくない噂が流れる曰く付きの家には、得体の知れない何かが現れる。
父親の転勤に伴って、東京から奈良の杏羅市へと引っ越すことになった翔太。
十歳の少年にとっては、冒険気分の一大イベントである。
特別なワクワクに包まれているはずなのに、厭な予感も拭えずにいた。
誰も踏み入れてはならない土地。
いくら遠ざけようとしても、“呼ばれて”しまうのだ。
そこに根差す存在が神様だろうと悪霊だろうと、関わった人間には禍いが降りかかる。
奈良県が舞台になっているあたりは、オレンジの個人的恐怖ポイントのひとつです。
住んでいる場所から近いのだと考えると、余計に怖い。
ここから先は、もう少し詳しく書いたあらすじと解釈です。
両親と姉と妹の五人で暮らす家は、山を切り開いた斜面に建っていた。
築年数は浅いのだが、住人の入れ替わりが繰り返されている。
不可解な立地、周囲からの意味深な対応。
引っ越しのときによぎった厭な予感は増していくばかりである。
土地の持ち主である庄屋が事情を知っていると考えた翔太は、不気味な屋敷に近付く。
どうも近隣からは避けられているらしい。
過去の住人が体験した現象から、翔太ら家族へ迫る危険に焦りを覚える。
すべては呼ばれたところから始まっていた。
恐怖はずっと“そこ”にあったのだ。
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