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『架空通貨』ブックレビュー

著者 池井戸潤
刊行 2003年(『M1』の改題)

半沢直樹シリーズよりも前の、池井戸さんの初期作品。
ネタバレなしで紹介します。



亜鉛の精錬所によって存続する企業城下町。
君主ともいえる社長の手腕の下、田神町は息づいていた。

東京の高校で教師をする辛島は、受け持っているクラスの黒沢麻紀から社債の期前償還について相談を受ける。
麻紀の父親が経営する事業は、不況の煽りを受けて苦境に立たされていたのだ。

黒沢の会社、さらには彼女自身の進学や将来のため、田神亜鉛の経済状況を探り始めた辛島と麻紀。
その中で、田神町に蔓延る「悪い金」の闇を目の当たりにする。

ひとつの町が起こす動乱に、人びとは飲み込まれていく。


経済に関する用語や流れが多くて、なかなか複雑です。
起承転・転・転結みたいなストーリー。

https://a.r10.to/hyIiCY


ここからは感想か解釈なのか、はたまたレビューその2なのか。
私が感じた、小説の様子をまとめます。


商社を退職して教師となった辛島だが、仕事のやりがいも家族も失い漫然とした日々を送っている。
麻紀の家庭状況を救う手助けが出来ればと田神亜鉛に乗り込むも、自分の無力を痛感する事態となる。

“悪貨は良貨を駆逐する”
そんな言葉を体現するかのように、田神亜鉛が行った施策により町は澱んだ雰囲気をはらんでいた。

私募債として発行された独自の社債券、不自然な財務状況。
金の動きに注目すると、ある企みが明らかとなってくる。


すべては「カネ」なんです。
未来も、基盤も、強さも。

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