インドカレー
ある日、私は何を血迷ったか「専門店には専門客として入店しなければならない」と、インドカレー専門店へ向かいました。
イエローのドアを抜け席に着くと、そこに置かれたフォークやナイフを奥へ遠ざけました。しばらくして、金属製の器に盛られたインディカ米とマトンカレーがテーブルに運ばれました。
私は、待ってましたとばかりインディカ前にカレーをかけ右手指先でかき混ぜ、その手を口に運ぶのでした。
これこそが本場インドカレーを食するマナーだと自画自賛していたのですが、俄か専門家はそこまで。カレーの汁は指から手のひらを通って肘まで垂れてしまい、指先で握ったはずのライスは思うように口に運べない。幾度となく挑戦したのですが同じことの繰り返し。
私はこれはかなわんと店員にナプキンをお願いしました。すると店員は私の一連の行動を見ていたのでしょう。笑いながらナプキンを手渡すと
「あなた日本人でしょ。お寿司は手で食べるのに、どうしてカレーは手で食べられないのですか。」と言い寄る。
「小癪なインド人め。」と思いつつ、己の無様を恥じたのでした。
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