【小説】救われないアニメオタク

俺は、オタク。アニメが大好きなオタクだ。
令和の今、俺は「好き」を隠すことをやめると決めた。
今まで恥ずかしくて隠してきた趣味。
「とつげき!萌きゅん学園♡」のくるりたんが好きってこと!
今日こそ!
俺は缶バッチやアクキーをカバンにつけたりしてみて、学校に登校した!

「え・・・?オタクだったの?」
「キモい・・・」
「死ねばいいのに・・・」
「オタクって生きてる価値ないよね・・・」
「また、デュフデュフ言ってるよ・・・」
「チー牛じゃん、おもろー!」
ああ、終わった。
オタクって人権ないんだ。
みたいな妄想が止まらない。登校したや否や俺はトイレにこもって、必死にグッズをカバンにしまった・・・
「あの、落としましたよ。」
振り返ると、ものすごいイケメンが俺を見てた。
「ご、ごめんなさいぃぃ!」
奪うようにイケメンの手から缶バッチを取って走って逃げた。
体育1の俺はあまりにも足が遅かったようで、イケメンにすぐに追いつかれた。
「ねぇ。これ君の趣味?」
「あぁ・・・はい。」
どうしよう・・・バカにされる。
「へぇ・・・きも。いるんだオタクって本当に。ねぇ、キャラクターでシコってるって本当?」
イケメンに罵倒される。
「えと・あの・し・し・シコっては、ないです・・・」
「はっ。どもっててきも。必死すぎ笑ねぇ、目見てよ。あはは、陰キャって目合わせられないってガチだったんだ」
「う、うりゅうううううううううううう!」
俺は、精一杯イケメンに頭突いた。自分の出せる力全部出して。
「おい、こっちくんなよ!キモオタ菌がうつるだろ!」
ガチ怒られする。へこむ俺。
「おえっおえええええー」
へ?
キモオタ菌が感染したらしい。イケメンはその場で死ぬほど吐いた。てか死んだ。
「え?イケメンくん、キモー」
「好きだったけど、幻滅した。」
「吐く場所は選んでよー」
こうしてイケメンの地位は一気に下がった。
それからイケメンは、キモオタになったのだった。
「うへ、ウヘヘヘヘーるみたん〜♡好きだよお♡」
イケメンの口から信じられないセリフが吐き捨てられる。イケメンに似合わなすぎて見ていて辛い。俺のせいだ。
俺のせいで、イケメンはキモオタに・・・
そんなしょげてる俺に、ママは見かねて近所の美味しいケーキ屋さんでフルーツタルトを買ってきてくれた。お金ないのに。
500円はするケーキ。それで何か他のものが買えたはずだ。それなのに美味しいケーキは憎かった。ぐしゃぐしゃに泣きながらケーキを食べる。もう味がわからなくなった。涙の塩、鼻水のとろとろ食感。全てが俺をわからなくさせた。
ママはそれから、もやしばっか食べるようになって痩せた。今までダイエットするなどいって、買ったDVDも3日でお蔵入りするような人だった。俺に買ってくるケーキのせいで、お金がなくなってしまったのだった。それでもママは俺に美味しいご飯を食べて欲しいと、俺には毎日ハンバーグを作ってくれた。ハンバーグもう食べ飽きたよ。そんなこと、もやしを食べるママには言えなかった。生活はぐるぐると、苦しくなるばかりだった。やめたい、やめたい。デミグラスソース、そんな冗談は誰にもウケなかった。シーンとしたその場で俺は自分の腕見て、何してたんだっけ?もうその時にはわからなくなっていた。かなり前につけたらしい傷。最近は誰かに説教されてからやんなくなった。自分の子が最悪だったら辛いからだ。産んでって言ってないとか、親ガチャとかそんなの悲しいから、いい子でいる。自分の人生って言う友達はいるけど、お前の人生じゃないからなーと悲観的に、俯瞰的に見ているつもりで・・・わからなくなるよね。わかる。わからないことがわかる。そんな共感、誰も求めていないので・・・そろそろ、みんなの涙で湖ができそうな頃だった。昔の担任が「元気?」なんてハガキで聞いてきた。知らない住所から。冗談で、「俺は死にました。母より」とか送ろうかなって思ったけど、なんでそんなバカなの?って天使に言われたからやめた。俺はいつだって人の言葉に流されるわけで、きっとそういうこともやめろって言われたらすぐやめることができる。元気です。それだけ書いて、ポストの前で送る勇気なくなって、やっぱ自分宛にした。郵便配達の人がどこかで落としたのか俺にまたハガキが届くことはなかった。しばらく経ってから、ガチで知らない人から「元気そうでよかった」とハガキが届いた。次に「ところで自分に手紙書いてるの?」と書いてあったが、無視した。そこにはそのガチで知らない人の住所が書いてあって、「ここにハガキ送れよ」って言ってるみたいだった。でもそれも無視した。なんかムカついたから。イキんじゃねぇよ!と叫ぶと、また天使が「うるさかったよ今の。そういうのやめて」というのではい・・・。と大人しくした。スタバの新作をズゴゴゴと飲む。帰ったらもやしを食べるママがいた。スタバ捨てたら、ママがゴミ箱から取り出して泡の残りかす舐め始めるから何してるのって止めたけど、「フードロス軽減、SDGs。」としか言わなかったので、諦めた。ついにおかしくなったのか、それとも実はカラスの子孫だったのか。だとしたら俺もじゃん。と絶望した。おしっこしたくなったからトイレ行ったらすごく臭くて。流してないうんちがそこにあった。「ママ、このうんちママのでしょ。ちゃんと流してよ」と言うと、節約ー!と大きな声で返事が返ってきた。いやうんち溜めんなよ。って思ったけど、もやし食べるママにそんなこと言えない。生理用品も、血がついたままそこら辺に捨てられてて、ついにゴミをゴミ箱に捨てることもできなくなったか。と思った。ママはおかしい。おかしくなった。でも、俺もかなりおかしくなった。

「ちゅー、したい」
小学2年生の時パパに言われた。俺はまだ射精もしたことないし生理もきていない幼い子供だった。言われるがまま、あ、うん・・・ってちゅーした。自分よりかなりデカい唇に、ハグみたいに覆い隠された。パパの唇はカサカサしていて、髭がかすれて痛かった。ちゅーってこんな感じなのか、とぼんやり思った。クラスのあの子も、こんな感じなのかな。次の日、なんとなくママにちゅーしたいってお願いしたら、「何言ってんのアンタ。」と言われた。ちゅーって、パパとするものなのか、ママとはしないのか。じゃあ、友達とは?彼女とは?犬とは?パパに聞いてみた。そしたら急に泣き出すから余計わからなくなった。そのあとにパパが俺の顔に手を添えた時、あ・・・って思った。俺のほっぺをぷにぷにしてくすくす笑った後、大きい顔が近づいてきた。息が臭かった。ケーキを食べたいちご味の口は灰色になった。のちに何か湿ったような感覚を覚えたけど何も言わないでいた。パパの手には大きいホクロがあった。こんな大きいホクロあるんだって思ったし、それ以降あれより大きいホクロは見たことがない。そうですか・・・。パパとちゅーをしたのは、小学2年生、3年生の時だけだった。「いい加減大人にならないと」って言われたので手放されたと思った。先生には中学年だからしっかりしないとねって言われてちょっと大きくなったことを感じた。朝起きたらパンツに白い何かがついていて、昼間は赤く染まっている。俺はそれで紅白まんじゅうを作った。みんなそうだと思ってた。それから、誰かと一緒にいたいと言う気持ちが強くなった。パパはどっかに行った。友達のいない俺は、ママと一緒にいるしかなかった。学校より家の方が楽だなぁと感じたのはその時からだったと思う。たまにちゅーが恋しくなった。ママはしてくれないってもうわかってるから、自分とちゅーした。唇がひんやり冷たい感触で、パパとしたちゅーとは大違いだった。自分とするちゅーは冷たかったのだ。それが悲しくなって、やっぱり誰かとしたくなった。友達、恋人、ペット・・・そんなのいないしな〜ぼんやり、ぼんやり考える。そんな俺は、実はまだ九九も言えない。パパのことはそんなに好きじゃない。欲しいもの全然買ってくれなかったから。でも、ちゅーのことだけ、ずっと頭に残っていてさ。だから今回、キモオタとなったイケメンとちゅーすることにした。正直、キモオタとなんかちゅーしたくないよ。キモオタとキモオタのちゅーになってしまうからね。でも、画的にはイケメンとチー牛だから。イケメン、あるから。勇気がいらないと言ったら嘘になる。ドキドキしてるから。「ねぇ、キスしてみない?」高校生にもなってちゅーは恥ずかしいから。英語表現I。そしたらキモオタイケメンは、「えっw w wキスデュフかw w wマジかっw w w拙者お母さんともしたことないでござるがw w w」てすごく照れていた。嫌なのかいいのかわかんねぇよ。パパがやったみたいに、手をイケメンの顔に添える。それまでベラベラ何かを喋っていたイケメンは急にだんまりになって、こっちを見る。でも、目を合わせられなくてやっぱり逸らす。魚のように泳ぐその目。涙でできた湖に打ち上げてみたい。骨を感じる硬い骨格に、あの時と違うんだな、時間経ったな、となんだか感慨深くなって。ひよったって思われたくないから泣かないよ。泣かないけど。ホクロひとつないさらさらした肌にニキビひとつ。触ったら「オフッwっ痛(ツ)w」って痛そうにしていた。ああ、イケメンが勿体無い。俺のせいでね。と思った。よ。膿んでる。汁出てる。キモかったけど、俺たちの方がキモいから。平気だった。「あの・・・まだキ・キスしないでやんすか?wまァ、早い方がいいんでw」そう言われたから、キスするんだって思い出した。改めてイケメンの茶色くて丸い目を見る。可愛くなりたい女の子の大体が羨ましがりそうな綺麗な二重。薄いけど、確かに生えてる数本の下まつげ。隠しても無駄だ。オ、オ、オ、俺は今からパパになる。そっと顔を近づける。イケメンがなんかゴニョゴニョ言ってるけど、そんなの知らない。聞こえてない。ハフ・ハフ・ときしょい息してる。イケメン、キスし慣れてるでしょ?でもそんなのリセットしちゃうくらい、キモオタの菌って強いらしい。二人の息が、重なり合う。次第に、はひゅ・はヒュ・と白い息になる。お昼何食べたか。そんなの一瞬でわかる。お前、弁当に餃子ってマジか。ケーキを食べてる俺も、大概だけどさー。あぁー臭い。パパの臭いと違う。だけど臭いだけは同じで。ドキドキはあの時から止まらない。心臓だけじゃなくて、他の場所も。昔切った傷がぶり返すみたい。ジンジンしてきた。ついにイケメンの目がグリングリンしちゃった。耐性がないからだ。早くキスしないと。わかってる。でも、今を大切にしたいんだよ。久々の、自分以外とのキスだから。にんにくやニラの匂いを大切に嗅ぐ。とめどなく吐き出される二酸化炭素から逃げたいのはずっとだけど、それより離したくない何かがあるから。さらに顔を近づけると、イケメンの高い鼻が、俺の鼻にくっついた。ぷにって音がした。息がさらに荒くなる。いっぱい走った時くらい、ゼェハァ、してた。あぁ、集中したいのにうるさい。俺もお前も。かき消すみたいに、キスした。イケメンの息が、俺の口に入ってくる。ケーキは瞬く間ににんにくに変わった。臭くて仕方がない。だけど、唇の感触に焦点を当てて。綺麗な赤、ぷるぷるの感触、まさにゼリー。わたあめみたいにじんわり、じんわりしていて。イケメンの唇は溶けてしまった。その口は全くの無臭で、ただただ俺の口が臭いだけみたいになった。イケメンはきょどってる。口が入れ替わったことじゃなくて俺とキスしたことに。顔を真っ赤にしてこっちみてる。お前は初めて?でも俺は初めてじゃないからなー。気持ちもうわかんないんだけど。バクバク言ってる。まぁいいけど。うう、キスってこんな感じか。キスって。なんだか変わってしまったキスにちょっと落ち込むけど、イケメンにはお礼を言った。なんてことないが?wってイキっててちょっとイラついた。キスはもういいかな。きっと、ママとキスしてもこんな感じだったんだろうと今更しょぼくれた。どぅるん、って何かが落ちた音したからパンツ見たら、かたまりが出てきてた。びちょびちょの感じが昔のちゅーと似てるな、とぼんやり思った。ていうか、きっと、はっきりしてる時なんてあんまない。イケメンとのキスがまだ口に残ってる。前まで花の蜜を吸う、みたいなのが主食だったんだろうに。ひどいことを言われたのは今でも覚えてる。だけど、本当にキモオタにしてしまったことは申し訳ないと思っている。だからと言って、元のイケメンに戻って欲しいとも思えない。この日の勉強は、頭に入らなかった。家に帰るともやしのパックを開けるママがいた。いつも通りの日常に安心しているのか、はたまたショックを受けているのか。自分の部屋に行こうとすると「ご飯、食べないの?」と聞いてきた。おかえりも言わなかったのに。「まだ夕方でしょ」と洗うこともひげを取ることもせずただもやしを食べるママに返し、また歩き出した。閉じ籠ったって香ってくるデミグラスソースの香り。今ではもう食欲をそそられなくなった。カバンから教科書を取り出して、今日の分の内容を見る。ていうか、前までの勉強もよくわかってなかったんだからわかるわけないよね。と思っていっしゅんで閉じた。高校1年生、やんわりと進路の話をされる。やりたいこととかなかった。ママとパパがあんなんだし、俺もいずれそういう感じになると思ってる。でも家庭を持っただけすごい。きっと俺の将来の嫁はくるりたんだ。2024年、まだまだ技術の進歩が足りない。2次元とセックスは2次元イラストに入ることでしかできない。嘘みたいな感覚。冷たくてつるつるな画面にちんこ押し付けたって楽しくないのは流石にキモオタでもわかる。くるりたんとの子供、それはオタクには叶わない願いなのでした。遺伝子の競争に勝ったのが俺なら、他の遺伝子はもっとザコだったってことですか?わらい、死にたぁ〜〜〜い、別にオタクじゃない両親から生まれたのに!覚醒遺伝ですか〜〜〜???それともお前ら整形女みたいに人格整形したでヤンスカ〜〜〜!?!??教えてよ(笑)教えてくれよ〜。しばらくしたら、食欲と裏腹にお腹が鳴った。なんも食べたくないのにお腹すいた。食べなかったら死ねるのに。俺はリビングに行って、準備されているハンバーグをレンジであっためた。ラップを取った途端広がる匂いが吐き気を催した。もう何回食べたんだろう、ハンバーグ。日本一まではいかないかもだけどさ、マ◯ナスより食ってる。ポイント増えないのにね。ママも少しは味付け変えてもいいのに、毎日毎日同じ味なんだもん。ケチャップでも付け足そうものなら、「ママのハンバーグおいしくなかった?」って聞いてくるんだ。怒ったりしないのが、逆に何も言えなくなって。当たり前に残すこともできない。くるくる、家出の計画考える。家出たらいっしゅんで死ぬな。自炊できないし、お金ないし。それを望んでるはずなのに、こうも踏み出せないのは俺が高校生という子供だからではない。20歳、30歳になっても同じような感じなんだ。預言者じゃないけど
うんちぷり
1話終わり


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