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父歴わずか3ヵ月で先輩風を吹かせてみた話(育児をするなら最初が肝心)

突然、後輩から「明日、時間ありますか?」と誘いの連絡がきた。偶然にも、週末は我が家のプチ改装のため、彼女と我が子は実家に帰っていたのでタイミングも良かった。半年前に会ったとき、確か春先に子供が産まれると言っていた記憶があるので、そんな話を聞きたいのかなと思って会いに行くことにした(正直に言えば、むしろ自分が話したい気持ち)。後輩は渋い居酒屋を予約してくれており、おいしい料理と生ビールをいただきながら近況など話した。聞けば、なんと「昨日産まれました」とのこと。そりゃあ、めでたいとビールも進み(ビールはいつでもよく進む)、後半のことはよく覚えていない。久しぶりにあんな時間まで飲んだ。

なんやかんや話したが、彼は特段育児について聞きたかったわけではなく、めでたいし、奥様と産まれた子は入院中で会えないし、ということで、誘ってくれただけだった。彼もキチンと我が子最優先で育児もやるのが当然と話していたし、それなら「1ヶ月か2ヵ月後に、また話そう」ということになった。実際に体験してからの方が、話すことは山積みになるだろう。そのときに、また話すのが楽しみだ。(彼が飲みなど出て来れるかどうかも興味のひとつ)

さて、我が子を置いて飲みになど出れるかな~

「最初が肝心」

ただ、ひとつだけ、先輩風を吹かせて言ったのは「とにかく最初が肝心」ということ。出産後、1週間、お母さんは赤ちゃんと一緒に必死に過ごす。その間、安堵の気持ちに満たされた父は家でのんびり過ごす。なんなら、今まで控えてきたから、飲みに行ったりする(今回のように)。1週間後に退院してきた母は厳しい育児界に揉まれ、すでに母の自覚を持ち、その道のプロに囲まれた世界(病院)から、素人(父)が一人いるだけの家に帰ってくる。母には、きっと不安しかない。出産を終えたボロボロの身体で朦朧とお世話に追われて気が付けば1週間が過ぎ「はい、もう退院して大丈夫ですよ~おめでとうございます~」と言われても「え!明日からこれ一人でやるとか無理でしょ!」「何か病院では一度も起こらなかったことが起こったらどうすれば…」というのが正直なところだと思う。ほっとする半面、それ以上に不安を抱え、危機感に圧し潰されそうな母、そんな時、父は「我が子~会いたかったよ~」とへらへらするばかり。3日やそこらで「夜中、寝れなくて仕事行くのつらい」とでも言いだそうもんなら、母がどんな気持ちになるか想像に難くない。

育児やるぞ!やるぞ!やるぞー!と息巻いていた人だとしても、厳しい出産を乗り越え、1週間の修行を積んだ母と比べれば、そんな意気込みはおままごとに毛が生えてようなもの。「おい、新人、トレーニングは終わったんだ、ここは現場、戦場なんだ」とベテランの上官(母)にトレーニングをしてもいないのに言われ、父は思う「そんなこと言われても何をしたらいいかわかるわけないじゃん!」。でも、そんなことを言ったら終わりだ。「わかった、足手まといだ、おまえはここに残れ」と目も合わせてもらえずに置いて行かれてしまうだろう。当然だ、上官にだって余裕はない、そして共倒れするわけにはいかない、我が子は今、ここで泣いている。果たして父は気が付くことができるだろうか、そんな母も少しだけ先輩なだけのピカピカの新人だということに。

ついてこれないのなら、私たちは先に進む

後から巻き返すことは、とても難しい(想像)

ここが分岐点だと思う。ここで父が手放したら、この時点では実は小さな経験の差が、あっという間に天と地ほどに開いてゆく。母は父を頼ることはなくなり、父はもう母に追いつこうとは思えなくなる。もしかしたら、我が子は、いつも都合よく甘やかしてくれるあなたに笑いかけるかもしれないが、そんな風に見つめられてニヤニヤしているあなたを、洗濯物を取り込んでいる母は凍てついた表情で見ているだろう。育児は「5分か10分か30分か1時間か3時間に、1人か2人か5人かわからない人数の宇宙人客(長ければ1時間以上、話相手になる必要がある場合もあり)が、ランダムに来店する定食屋を自宅のキッチンに繋げて24時間営業している」ようなもの「夫が家事を全部やるくらいでギリギリセーフ(少なくとも育児生活中)」参照)なので、宇宙人相手に泣きながら世話をする母を見ても、何をしたら良いかさっぱりわからない。何をしたら良いですか?と尋ねる隙間も見つけられないだろう。24時間、寝不足でてんてこ舞いの母を、手持無沙汰で眺めるのがつらくなった父は家に居場所がなくなる。そして居酒屋で飲みながら、今晩も無理やり突き合せた同僚にこう言うのだ「俺が抱いても泣き止まないんだよね~。やっぱりお母さんがいいんだよな~」。そうではない。戦線を離脱したのはあなただ。

気持ちを入れ替えて協力しようと思っても「そんなことも知らないんかい!」と思われそうで聞くに聞けない。「間違ったことしたら溜息つかれそう」と勝手に想像し手を出すことができない。分岐点は退院してきた母に気後れを感じた瞬間だ。初速が肝心。机上の勉強をしていたとて、実際の現場は想像を超える。家で待つ私たちが事前にトレーニングすることはできない。だから「何をしたらいい?」「何をしてほしい?」と真摯に聞いて機敏に動くしかない。「うーん、とりあえず今は何もない」と言われたら、自分でやるべきことを探そう。家事なら出来るのではないか?洗濯?ゴミ出し?暖かいお茶入れる?なんでも良いから、何かしよう。「うーん、なんかうるさいから、静かにだけしてて」と言われたら、静かに見えないところで何かできることはないか探そう。間違えても、外に飲みに行ったり、ふて寝してはならない。

ふて寝していいのは、小さい子だけ

育児のパートナーになろう

等しく二人で育てていく我が子を育てるノウハウを、母は先に学んできてくれている。「知らないことは、素直に聞こう。わからないふりは絶対にしないようにね。今、聞くことは恥ずかしいことじゃないでしょ?」社会人になったとき、誰もが言われたはずだ。あなたが本当の意味で育児のパートナーになれたら、どれだけの不安を解消できるか。なんでも出来るパートナーになれば、どれだけ時間と気持ちに余裕を持って我が子に接することができるか。実際にそうなってみないと、きっとわからない。僕は母乳を出すこと以外はやれている自負があるので、そうじゃなかった場合のことはわからない。でも、人生で子供を育てる機会は、多くの人にとってはわずか1回か、2回しかない経験だ。「そうじゃなかった場合」など試している場合ではない。

楽しんでくれているようなので、私は寝ますね

これから出産を控えているお母さんの全てのパートナーが、最初の分岐点を乗り越えて、本当の意味で頼れる育児のパートナーになってくれればいいな、と心から思う。おかげで僕は育児がとても楽しいから。「実は私も不安なんだ。一緒に頑張ろう」と言ってもらえるまで、新人として謙虚に、でも前のめりで育児にくらいつきましょう。

そのタイミングを逃してしまった方たちにとって、育児に参入するハードルは少し高くなっている。でも、それを乗り越えて参入する価値はある。毎日オムツを交換するからわかること、毎日お風呂に入れるからわかること、毎日寝かしつけるからわかる成長を感じられることは、しあわせなことです。

狙って掴めるようになったよ!

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