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ベジ議連第3回レポート

 2020年4月2日、衆議院第二議員会館にてベジ議連(正式名称は「ベジタリアン/ヴィーガン関連制度推進のための議員連盟」)の第3回総会が行われました。※これまでの議連のリポートはリンクからご覧ください(第1回第2回)。新型コロナウイルス流行下、ドアと窓を開けた会議室には議員と行政側出席者のみが集まり、関連団体はZoomで参加(ミートフリーマンデー・オールジャパンを除く)、この記事もZoomで傍聴した内容を元に書いています。

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ベジ議連役員(第3回総会出席議員は太字)

会長:河村建夫衆議院議員(自民党) 顧問:漆原良夫前衆議院議員 会長代行:石田祝稔衆議院議員(公明党) 副会長:荒井聡衆議院議員(立憲民主党) 副会長:岸本周平衆議院議員(国民民主党) 事務局長:松原仁衆議院議員(無所属)

第3回総会出席議員(順不同)

安藤たかお衆議院議員(自民党) 泉健太衆議院議員 (国民民主党) 小宮山泰子衆議院議員(国民民主党) 杉本和巳衆議院議員(日本維新の会) 高橋ひなこ衆議院議員(自民党) 宮路拓馬衆議院議員(自民党) 辻清人衆議院議員(自民党)

第3回総会行政側出席者(順不同) 

消費者庁(食品表示企画課 五十嵐麻衣子課長)、農林水産省(食料産業局食品製造課 西川真由基準認定室長)、観光庁(外客受入担当 片山敏宏参事官)、東京都庁(産業労働局観光部 坂本雅彦総務部長 松本明子観光部長)、台東区役所(観光課 平林正明課長)

第3回総会出席関連団体・事業者(順不同・敬称略)

橋本晃一(NPO法人日本ベジタリアン協会代表) 川野陽子(NPO法人ベジプロジェクトジャパン代表) 小城徳勇(ミートフリーマンデー・オールジャパン代表)、金田郷史(グリーンカルチャー株式会社代表取締役) 利根川正則(㈱グローバル・メディア代表) ナディア・マケックニー(東京ヴィーガンミートアップ オーガナイザー) 幡太樹(㈱フレンバシー/ベジウェル 代表取締役 )室谷真由美(NPO法人ヴィーガン認証協会代表理事)

2020年オリパラ延期・インバウンド消費急落の中で 

 ベジ議連は、2020年東京オリンピック・パラリンピックを前に日本のベジタリアン・ヴィーガン環境を整備することを目指す超党派の国会議員による議連です。第3回総会のほぼ1ヶ月前にあたる3月6日には、小池都知事に (1)今年のオリンピックとパラリンピックの大会開催に向けて、観光等で海外から東京を訪れるベジタリアンとヴィーガンの方々が快適に食事をとることのできる飲食店に係る情報を提供するための施策の速やかな展開 (2)都内でヴィーガンの方々が安心して料理店で食事をし、食品を店舗で買い求めることのできる統一的なルールの作成を検討する場の立ち上げ を求める要望書を提出しました。

 その後の3月24日、新型コロナウイルスの流行により、2020年オリンピック・パラリンピック1年延期が決定されました。訪日客激減などインバウンド需要も大きく落ち込む状況ですが、現在もベジタリアン・ヴィーガン環境整備の動きは続けられています。第3回総会では、各省庁やオリンピック&パラリンピック・ホストシティである東京都の取り組みがどこまで進んだかが明らかになりました。

観光庁「飲食事業者等におけるベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド」公開開始

 中でも注目すべきは、観光庁がこの日の午後に正式公開した「飲食事業者等におけるベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド」(令和2年4月版)です。訪日外国人へのアンケートなどを元に作成されたこのガイドでは、ベジタリアン・ヴィーガンに関する基礎知識、ベジタリアン・ヴィーガン対応の実践(基本的コンセプト、先行事例集など)がコンパクトにまとめられています。今回の「対応ガイド」は「日本でのベジタリアン・ヴィーガン対応のすそ野を広げることが大事」(観光庁・片山参事官)という意図から作成されたとのことですが、ベジタリアン・ヴィーガン対応にこれから取り組もうという飲食店や宿泊施設等は要チェックの内容です。

 また、観光庁では訪日外国人向けにベジタリアン・ヴィーガン情報を提供するポータルサイトの作成も進めており、「1年後のオリンピック開催に間に合うようがんばりたい」(観光庁・片山参事官)とのコメントもありました。

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東京都「TOKYO Vegan & Vegetarian Restaurant Guide」を準備中

 東京都からは以前から進められてきたベジタリアン・ヴィーガン向けの飲食店ガイドブック「TOKYO Vegan&Vegetarian Restaurant Guide」(英語)がほぼ完成しているという報告がありました(下が表紙&裏表紙イメージ。都庁から配布の資料)。

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 既にハラール対応飲食店については同様のガイドブックが発行されており、ピクトグラムのアイコンを使ったフォーマットも踏襲されています。(下は都庁から配布の資料から)

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 どれぐらい厳格にベジタリアン・ヴィーガン対応をしているか、カテゴリーに分けられているのも、わかりやすいですね。(下は都庁から配布の資料から)

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 前述の観光庁のアンケートでは「対応しているかどうかわかるサインなどの表示」を求める声もあったそうですが、こうしたガイドを元に自分で「ここまでなら大丈夫」などと判断してもらうのも、認証やマーク等をめぐる議論が続く現段階では現実的とも言えそうです。

 東京都ではこのガイドブックを2万部発行し、観光拠点などに無料で配布するとしています。ただし、紙媒体では開店・閉店情報などのアップデートが追いつかないといった課題もあり、オンラインも含めた今後の情報発信についてもさらに検討を進めていくということでした。

台東区「おもてなしMAP」にベジ・ヴィーガン情報

 上野や浅草といった日本有数の観光名所を有する台東区は、インバウンド対応先進自治体として知られています。台東区では以前から食の多様性に対応するセミナーやベジタリアンメニュー展示会などを開催してきました。ムスリム対応については対応可能な区内飲食店等を紹介する「ムスリムおもてなしMAP」が発行されていおり、現在、ベジ・ヴィーガンも含めた情報提供に向けて準備が進められています。ムスリム対応については対応店舗が非常に多いことから「認証があること」がMAP掲載基準になっていますが、ベジ・ヴィーガンでは観光庁同様「すそ野を広げる」ということで「ベジ・ヴィーガンフレンドリー」をポイントに掲載していくとのことです。

 台東区では4月6日から職員食堂でヴィーガンメニュー(限定20食)が毎日提供されています。内閣府、都庁、帯広市役所など官公庁でヴィーガンメニューを提供する動きは少しずつ広がっていますが、毎日提供しているのは台東区と帯広市役所で、地方自治体の方が先進的です。

ベジ・ヴィーガン認証についての議論

 前回の総会では、海外への輸出も念頭においたベジタリアン・ヴィーガン認証JASマークも議題になりました。農林水産省からは、JAS規格制定の流れ(JAS規格の制定には通常2年程度かかるなど)、国際的に通用する認証の枠組み(JAS認証はISOで定める枠組みに準拠)の説明と共に「実際にマークを使用する民間団体の意見がどれだけまとまるかが重要」(農林水産省 西川真由基準認定室長)という話が繰り返されました。

 今回の説明では、JAS規格の認証機関には様々な民間団体や地方自治体が関わっていると話もありました。たとえば、有機登録認証機関は60以上ありますが、ベジ・ヴィーガンのJAS規格ができたときも、同様に複数の団体が認証機関となることが予想されます。

 飲食店や商品がベジタリアン・ヴィーガン対応をしていることを示すものとしては、現在、日本ベジタリアン協会(レストラン認定制度についてはこちら)、ベジプロジェクトジャパンのマークがあります。これに加えて、ヴィーガン認証協会による認定マークもスタート、この他、大分の一般社団法人ベジフード協会でも認定マークの付与を行っています。(それぞれのマークについては、各団体名のリンクをご参照ください。)また、飲食店等でメニューにVマークをつけるなど、独自に表示しているケースもみられますが、いずれにしても、現在、マークの基準については統一されていません。

 ヴィーガンなら動物性材料を使用していないということは大前提です。これに加えて、「添加物も含めて動物性の材料を使わない」「動物実験をしていない」「砂糖の製造過程に骨炭が使用されていない」、またパーム油使用の有無やNON GMO、プラスティック不使用など、チェックするポイントは非常に多岐にわたります。これらをどう判断していくか、海外でも様々な立場がありますが、今回、特に議論となっているのが、クロス・コンタミネーション(この場合は製造工程における動物性などの汚染)についてです。「国際的に通用する基準とするなら、少なくとも商品については動物性材料不使用はクロス・コンタミネーションまで含めるべき」という意見と「日本の現状では、厳格にしすぎるとすそ野を広げることが難しくなる」という意見があり、これをどう調整していくかが、ベジタリアン・ヴィーガンJAS規格制定の鍵となるでしょう。 


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 前回(1月31日総会)のリポートで「2020年オリンピック・パラリンピック目前というタイミングで、各省庁の取り組みのスピード感・規模感は全般的に物足りないという印象を受けます。あと半年もない中、どこまで挽回できるでしょうか」と書きました。それからわずか4ヶ月で、現在は、新型コロナウイルスの影響でインバウンドどころではない状況と言えるかもしれません。そんな中でも、2020年オリンピック・パラリンピックを目指して進められてきたベジタリアン・ヴィーガン対応の環境整備は着々と動いており、今年に入ってから、東京駅の駅ナカでプラントベースのお土産が買えるようになったり、ファミリーマートでヴィーガン弁当が販売されるようになったりなどの展開も広がっています。

 今回の総会では、「訪日外国人だけではなく消費者のニーズも多様化しており、その観点からもベジタリアン・ヴィーガン対応が必要とされてきている」(消費者庁 五十嵐麻衣子課長)という話も出ていました。ベジタリアン・ヴィーガン対応は現段階では「不急」かもしれませんが「不要」ではありません。オリンピック・パラリンピックに向けて進められてきた動きが頓挫することがないよう、また延期された分、拙速でない対応や議論が行われ、より良い形で環境整備が進むよう、ベジ議連の今後に引き続き注目していきます。


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