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ホコリをかぶっていた気象予報士資格がfreeeで輝きを取り戻した日

こんにちは。amiです。この記事はfreee データに関わる人たち Advent Calendar 2019の19日目です。

皆さんは、資格、持ってますか?

履歴書に書くあれです。

大体の方は「普通自動車第一種運転免許」とか書きますよね。私は普段運転しないので、身分証明書として細々と活躍してくれていた彼ですが、マイナンバーカードの登場と共に完全に存在意義を失っています。

freeeだと業務柄、簿記一級持ちはカースト上位ですね。社内には大学時代に中小企業診断士を取った凄腕メンバーもいます。人事労務の開発チームではslackに「いきなり社労士」という部屋が出現していました。

コンサル時代は何の役にも立たなかった合格証

私は運転免許の他に、もう一つ国家資格を持っています。それが... 

気象予報士資格です。

取った経緯はワンピースのナミみたいにカッコいい女性になりたかったという不純な動機だったのですが、厚紙でできた合格証(もとい、登録通知書)は、10年間の間ずっと、「ただの紙切れ」でした。

予報士だけが入れるというメーリングリストには、ごくたまに気象系業務の求人が送られてきます。(朝に弱い私は文面に書かれた業務時間を見てそっとメールを閉じる事になるのです。)そして、毎週決まった曜日と時間に、気象科学館案内ボランティアの募集と報告が流れてくる、ただ、それを眺めるだけの日々。。。

一般の人は見れない気象データにログインできる特権もあったらしいのですが、その後大学で水門・河川系の研究室に入った私の周りには、それ以上のデータに触れられる環境が出来上がっていたのです。

もはや、気象予報士資格は、「履歴書の一行を埋める」というバリューしか発揮できないまま、いや、あえて加えるなら「私にONE PIECEという漫画を、ごく稀にいるそれを知らない友人に説明させる」という僅かな功績を残しながら、私はコンサルティングファームに入社し、そして3年間のマッキンゼー生活を終えたのでした。

もしかしたら就職活動の時に「気象予報士」と書いてあった事で、変人枠に選んでもらえたのかもしれません。でも、私だったら「気象予報士」の応募者と「ひよこ鑑定士」の応募者がいたら、後者に惹かれずにはいられない。

その程度の差別化なのです。

sumifsとvlookupだけでもありがたがられる世界

CEOが発する”この人といたら、何だかやばそうだ”感に惹起されて転職を決めたfreeeでは、2016年夏の入社直後から、Analyticsに所属しながらSales Opsをやっていました。

Sales Opsって、なんぞ。

しかし「なんぞ」という問いを発し終える暇なく、いきなり役員がワラワラと出席する週次ミーティングのオーナーになり、初対面のSalesforce氏から吐き出したありったけの数字をかき集め、捜しものを探しに行くのさ、な毎日でした。

この頃は、sumifsやvlookupで数字に一手間加えるだけで大層ありがたがられたのが、私の中では不思議体験となっています。freeeは創業から4年目だったか。熱に浮かされて舵を取るのさフェーズから、羅針盤見てこっかフェーズに移行中だったのでしょう。

前職であれだけ「So What?」や「仮説はなんなの?」と言われ続けてきたのに、こちらでは示唆出しする前のちょっと加工した数字を渡すだけで、「これが欲しかった!」とありがたがられる、不思議な世界でした。

お天気お姉さんというパワーワード

そんなSalesOps業務が落ち着いてきた頃、「Wantedlyでamiさんの記事を書きます!」と言うありがたいお誘いをもらいました。

しどろもどろに思うことを答えて、あとはお任せします、と採用チームに伝えた数日後、

マッキンゼー出身のお天気お姉さん、amiに聞く、新卒でfreeeに入る意味

と言う記事が出来上がっていました。

タイトルを二度見しました。

そして、

そうかと。

もしかして、私の経歴は「釣れ」るのかもしれない。と、この時気が付いたのです。

上のインタビュー記事を開いてくださった稀少な方なら分かるのですが、お天気の話一つもしてないやんけと。

それでも採用チームがお天気お姉さんというワードをタイトルに選んだという事は、もしかしたらfreeeの将来を担う新卒ニッチ層に刺さる単語なのかもしれない。

ここに来て、気象予報士資格が「採用に少しだけ貢献するかもしれない」可能性の片鱗を見せ始めたのです。

しかし、もう一度言いますが、

「マッキンゼー出身のお天気お姉さんに聞く」

記事と、

「マッキンゼー出身のひよこ鑑定士に聞く」

記事が並んでいたら、あなたはどちらを先に開きますか?


私は、迷わずひよこ鑑定士ですね。


その会議の名は「風を読む

そうしてひよこ鑑定士に思いを馳せている私の元に、ある日一件のミーティング招待が届きました。

その名も「風を読む」

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極秘プロジェクト。

なんというワクワクする響き。

気象予報士だからこそ呼んでもらえていることが、この一文からまざまざと見て取れるではないですか。

ドキドキしながら行った第一回打ち合わせで、プロジェクト概要が発表されました。

「CEOを宇宙に飛ばしたいんです」

「!?」

「手配の準備は万端だけど、風が読めなくて...」

こんな極秘プロジェクトになぜペーパー気象予報サーの私が呼ばれたかというと、この時期、日本上空は偏西風(ジェット気流)が強く、飛ばした後どこまで流されてしまうかを知りたい。それを元に打ち上げ場所を決定したい。と言うことでした。

なるほど。私は表題の通り、風を読むために呼ばれたようなのです。


実際に風を読んでみよう

このnoteはどこに向かうのか。そしてfreeeはなんの会社だったっけ。

とはいえ短い気象予報士生の中でもっとも気象予報を求められているこの機会に、持てる知識を注がない選択肢はありません。私は急いでスプレッドシートを開くと、数式を打ち込んでいきました。

手っ取り早く上空の風を読むには、高層天気図データが最適です。高層になればなるほど数日間での変化は小さくなるため、入手しにくい予報値ではなく、気象庁が出している実績値をそのまま使うことにします。

気圧に応じて地上から数段階の高さでの風向風速データ(天気図上は矢羽根マーク)があるので、それを元に、各階層でどれだけ流されるかを計算します。

この矢羽根が、気象予報士っぽくていいですよね。風を「読む」感がありますね。

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ノットという単位も、個人的にとても好きです。16世紀ごろ、測定する紐に付けた結び目(knot)を数えて船の速さを測ったことに由来するそうです。航海時代のロマンを感じられる単位となっております。


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こうして四則演算を駆使し、どうやら高度1.5万メートル上昇する間に、東に33kmほど流される風が吹いていることが分かりました。


この数字を元にした極秘プロジェクトは20分の動画として丁寧に編集され、freeeの全社忘年会の最後を締めくくることとなりました。

空を飛ぶCEOをバックに、STAR WARSのオープニングさながら、その年に開発された機能・改善一覧がズラッと流れていく画面を見ながら、エンジニアではないけれどもウルっときてしまいました。

気象予報士資格は、微力ながらも2016年のfreeeに感動を添えることができたのです

ナミへの憧れも、無駄じゃなかった。



資格を活かすなら、freee

皆さんも、手元で眠っている資格はありませんか?

ちなみに、この資格を持っていたらfreeeでめちゃくちゃ活躍できたのに!と、取っておかなかったことが残念な資格一覧がこちらです。

・バードウォッチング検定(2002年から4回だけ実施された幻の資格)
・日本ボイストレーナー連盟資格認定(JAVCERT)
・水先人、海技士

ロゴがツバメなだけに、バードウォッチャーは重宝されますね。あと、社歌を作って役員に歌わせる為にも、ボイトレ資格は取っておけば良かったなと思いました。

最後の水先人とは、「船舶を安全かつ迅速に導く」という使命を抱えた、水域特有のアドバイザーの国家資格だそうです。freeeは事業全体を航海に見立てて、事業部を事業船と呼んだりしているので、SaaS事業の水先人がいたらもう引く手あまたで腕がちぎれんばかりだったのではないかと思います。水先人という言葉もなんとなくカッコいいですね。

あと、リストに載せるのは憚られましたが、やはりひよこ鑑定士は光るものがあると思います。

最後に

あれから3年。たくさんの資格ホルダーとノン資格ホルダーに支えられ、おかげさまで私が働くfreeeは晴れて2019年12月17日に東証マザーズに上場しました。3年半前に「一体自分に何ができるんだろう」と転職してきた頃の私は、まさか上場の場に居合わせる事ができるとは想像していませんでした。

ちなみに最近はあまり風をよんでおらず、事業企画という部署で、事業計画を作ったりプライシングを考えたり、その他諸々のこぼれ玉を拾ったり、ありったけの数字をかき集めながら、まだ捜しものを探しています。

freeeが日本の中小企業の経営者にとって、信頼できる水先人になれることを願って。

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