【売り場の伝え手vol.3】地元の人も、観光客も。洞爺湖のほとりにたたずむ、人生の交差点のような店をたずねて
新潟・燕三条の作り手が培ってきた知識と技術で、暮らしの道具を生み出す「家事問屋」。2015年にスタートし、現在のお取り扱いは全国約300店に広がりました。
わたしたちの想いを受け取り、さらに売り手の視点を交えて伝えてくださるお店があることで、家事問屋の製品はより広く、深くお届けできています。
この読みものでは、家事問屋を取り扱ってくださるお店をご紹介。
その想いや背景を知ることで、お店自体にも興味を持っていただけたらうれしいです。
日本有数のカルデラ湖であり、四季折々の大自然を望む温泉街としても知られる、北海道・洞爺湖。一面に広がる青の表情は、時間の流れとともに刻一刻と移ろい、見る人を楽しませてくれます。
この湖のほとりにある一軒の店、それが今回たずねた「HOLIDAY MARKET TOYA(ホリデーマーケット トーヤ)」さんです。
「暮らしの店屋」と称する店内には、キッチン雑貨やうつわといった生活道具や着心地のいい服、バッグやアクセサリーなどの服飾小物、さらには文房具、心に響いたお気に入りの本など、毎日をちょっと豊かに、楽しくするものがジャンルの垣根を超えて並びます。
どれも店主の塩野谷絵美さんが、自分の暮らしといまの気分、そして店にやってくるたくさんの人たちを思い浮かべながら、大切に選んできたものばかり。もちろんその中には、家事問屋のアイテムも。この地で育んできた店づくり、そしてこれからについてうかがいました。
「わたしも使ってるんです」からはじまる、お客さまとのコミュニケーション
「ひとり暮らしの人、夫婦、子連れの人、さらには温泉街という場所もあり、旅の途中にお土産を探しに立ち寄ってくれる人など、お客さまのタイプもさまざま。毎日、店に立っていると『これ、どうやって使うんですか?』というような、ふとしたきっかけで会話が生まれることがあります。
家事問屋さんのアイテムは、わたしも愛用しているものが多いので、つい『うちではこうやってますよ』ってたくさん伝えたくなりますね。お客さまも使っているものが一緒だったりすると、『便利ですよね〜!』って共感しあったり、お互いに情報交換したりもしています」
展示会を機に、家事問屋の製品と出会ったという塩野谷さん。まずは自分が試してみようと、いくつか使ってみたことがお取り扱いにつながりました。
「使ってみると、なんて使い手目線のものづくりなんだとびっくりしたんです。北海道で、湖のほとりに暮らしている、なんて言うとスローな暮らしをしているように聞こえますが、家事はどこに暮らしていても変わらないと思うんです。誰だって、手の届く価格帯のもので家事がラクになればうれしいし、お手入れがしやすいと、もっとうれしい。短時間でラクに、おいしいものを楽しい気分で作りたいというのも自然なことです。
わたし自身、6歳の子どもを育てながら仕事をしています。料理は嫌いじゃないけれど、きちんと食べさせるという任務となるとまた別の話。だからといって義務感でキッチンに立つのは楽しくありませんよね。そんな気持ちを支えてくれるのが、家事問屋のアイテムなんです」
自分の実感とお客さまの声、双方が混じり合い、この店らしさに
「たとえばシステムバットは、これがないと家事がまわらない!というくらい、毎日大活躍しています。蒸し野菜や常備菜をストックしたり、出勤前に野菜をカットしてここに入れておいて、帰宅後は炒めるだけの状態にしておいたり。
お客さまのなかには、共働きで食事づくりが大変だったけれど、システムバットを取り入れたおかげで休日に常備菜をつくる習慣ができたという方もいました。平日、帰宅後の疲れた体でキッチンに長時間立つことなく、食卓が整うようになったそうです」
「蒸しかごも、お客さまと話がよく盛り上がるアイテムですね。フライパンで野菜を蒸して、サラダや副菜に。そのあとお湯を捨てたらざっと拭いて、メインの調理に。フライパンひとつで、副菜もメインもテンポ良く仕上げられるのは、ほんとうに助かります。お客さまからも、この蒸しかごのおかげで離乳食と大人の食事、両方を同時進行できるようになったとうかがいました」
「そうそう、ブルーベリーの収穫をされているお客さまは、パンチングあくとりをジャムづくりに使ったら、すくいやすさも洗いやすさも以前のものとまったく違った!と喜ばれていましたね。そういうお声を聞けるのも、リアルな店舗ならではです」
見知らぬ誰かと、人生が交わる瞬間をよろこびに
「これ、便利なんですよ」。そんな、なにげない会話を糸口に、ある人からは子育ての大変さがこぼれだし、その日は息抜きのお買い物だったことを知りました。またある人は、ペットを亡くして気落ちしていたときに、この店にふらりとやってきたようでした。あれこれ店内を眺めていた男性は、パートナーへのプレゼントに頭を悩ませていたといいます。
「売り買いだけをみれば、オンラインも店舗も変わりません。でも、扉を開けてこうして訪ねてきてくれることで、顔を見て、会話を交わしてというやりとりが生まれます。まったく知らない他人同士が、店という場所を介して、人生がほんの少しだけ交差する。その不思議なご縁がうれしいし、店を続けていくよろこびです」
オープンから15年。これからも、これまでと変わらずここで
「HOLIDAY MARKET TOYA」は、2024年春に15周年を迎えます。2009年のオープン以降、2011年の東日本大震災にはじまり、2018年には北海道胆振東部地震や、ブラックアウトと呼ばれる北海道全域での大規模停電もありました。そしていま、コロナ禍という長いトンネルをようやく抜けつつあります。
「15年を振り返ると、いろいろなことがあり、だからこそ『日常こそが宝である』と思えるようになりました。
人生は、いいこともあれば悪いこともあります。予期せぬ災害もあるし、つらいこともある。それでも、『あそこへ行けば変わらないあの店がある』、そんなふうに思ってもらえたらうれしいですね」
変わり続ける世の中で、揺れ動く心をたずさえながら、わたしたちは暮らしています。だからこそ、なんでもない変わらない日常が、うれしいし、あったかい。
「HOLIDAY MARKET TOYA」は、今日も明日も、変わらずあり続けます。小さな出会いが待つその場所へ、どうぞ扉を開けてみてください。
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