【売り場の伝え手 vol.1】伝えることで産地をまもる、FACTORY FRONTと家事問屋の共通点
新潟・燕三条のつくり手が培ってきた知識と技術で、暮らしの道具をつくる「家事問屋」。2015年にスタートし、現在は全国300店ほどでお取り扱いいただいています。
この読みものでは、家事問屋を取り扱ってくださっているお店をご紹介。
それぞれの想いを知ることで、家事問屋の製品だけでなく、お店自体にも興味を持っていただけたらうれしいです。
今回お伺いしたのは、新潟県燕市にある「FACTORY FRONT」さん。
燕三条で生まれた製品はもちろん、“ニュースタンダード”をコンセプトに産地を問わずキュレーションするセレクトショップです。店内に並んでいるのは、自社製品の金属製名刺入れから、キッチンツール、アクセサリーまでさまざま。全国各地から惚れ込んだ品々だけを販売しています。
そんなFACTORY FRONTで店長を勤めているのが、北澤嘉奈恵さん。私たちにとって、心強いパートナーさんのひとりです。今回は家事問屋と同じ燕三条で、ものづくりの入り口としてショップを運営する北澤さんにお話を伺いました。
「工場の人に見てほしい」。燕三条初のPOP UPの始まり
FACTORY FRONTさんと出会ったのは、2019年。家事問屋のスタッフがお店に立ち寄ったことがきっかけでした。その後、北澤さんから「家事問屋のPOP UPを開催したい」というメールが届いたのです。
「家事問屋さんの名前はお伺いしたことがあったのですが、お恥ずかしいことに詳しくは知らなかったのでいろいろと調べさせていただいて。燕三条をルーツに工場との関係を大切にしている姿勢に私たちと重なる部分を感じて、POP UPのご相談をさせていただきました」
ただ、家事問屋はそれまで首都圏を中心に展開していたので、燕三条で販売したこともなければ、流通は問屋さんにお任せしているので、自社が主導となってPOP UPをしたこともありませんでした。
しかし、そのときに思い浮かんだのは協力工場のみなさんの姿。工場で働いている方々は自分たちが作っている製品がどのように売り場で並んでいるのかを目にする機会は多くありません。そんなみなさんに「店頭で並んでいる姿を見てほしい」とFACTORY FRONTさんでのPOP UP開催に踏み切りました。
「工場のみなさんにお越しいただけるよう招待状をつくり、仕事の後にも来ていただけるように通常より遅くまでお店を開けました。そうしたら仕事帰りの方もたくさんいらしてくれて。『本当にこうやって並んでいるんだね』とつくり手さんが喜んでくださっていたのが嬉しい出来事でした。家事問屋さんと、この燕三条という地で一緒に取り組むことの意味を再認識する機会になりました」
FACTORY FRONTさんでのPOP UPは、定期開催へ。新潟で家事問屋の全製品を直に触れられる機会はここだけだからこそ、県内外から多くの方が訪れてくださっているようです。
「家事問屋さんの製品は日常的に使うものだからこそ、一度自分で手にとって肌触りやフィット感を確認してから迎え入れたいという方が多いです。以前、マッシャーを購入されたお客様は『ポテトサラダが食卓に増えました』と教えてくれました。FACTORY FRONTで買った家事問屋さんの製品が、お客様の日常生活に寄り添えたことがうれしかったです」
ものづくりの土台を整える、FACTORY FRONTと家事問屋
全国のブランドや作家さんの作品を取り扱っているFACTORY FRONTさん。こうした作品を扱うようになったのは、2018年のリニューアルオープン以降。“ニュースタンダード”をコンセプトに、ものづくりを再編集しているアイテムを中心に選定しています。
「燕三条はものづくりの歴史がある分、閉鎖的な一面もあるのではと感じています。そんな地域だからこそ、ものづくりの背景を大切にしたアイテムが並ぶこの場所が必要なのではないかと考えています。産地や背景など見落としがちな足元をもう一度見つめ直すことで、ものづくりの価値を考える場所になれたら嬉しいですね。
同じ燕三条という地で新たなものづくりの価値を生み出そうとしてきたFACTORY FRONTさんと家事問屋。共通の想いを持っているからこそ、お互いに影響を与え合いながらブランドを運営しています。
「以前、家事問屋のスタッフさんが『家事問屋を全国に伝えていくことが燕三条の工場を守ることにつながるんです』とおっしゃっていて、私たちがFACTORY FRONTを運営する意味と重なり、大きな共感を覚えました。FACTORY FRONTの母体である株式会社MGNETは、“ものづくりにとってよい環境づくり”を実現しようと設立された会社。家事問屋さんと私たちはブランド運営の目的が近いのかもしれないですね」
無駄のないデザインで空間に馴染む、家事問屋のアイテムたち
家事問屋のルーツを理解してお客様に伝えてくださっている北澤さん。使い勝手のよさも自分なりに解釈した上でお店に置いていただいています。
「家事問屋さんの製品はどれも機能性が高いけれど、空間の邪魔をしないものばかりです。無駄のないデザインや佇まい、フィット感など、心地よいものが多い。私はホットパンを使わせていただいているのですが、初めて作って食べたときはその美味しさに驚いたことを覚えています。細やかな使い手への気配りが、使い勝手の良さと使用した際の感動を作っているのだと思います」
また、北澤さんがお客様によくご案内するのが、下ごしらえボウル。
目盛付きでドレッシングや玉子焼き作りにも便利なボウルは、フチが丸まっていないので洗いやすく汚れがたまらない。北澤さんは「前職で製菓に携わっていたときにフチに水が溜まっていて生地をダメにしてしまった経験もあり、個人的に下ごしらえボウルのフチがない形状は力説してしまいますね」と話してくださいました。
最後に「フォルムが愛おしいですよね」と絶賛してくださったのは、片口ごますり。
「母がごますりの小鉢を一所懸命に洗っているのを見て大変だなと思っていたので、洗いやすくて手軽なところが気に入っています。レードルのお玉の部分を使用して製造されているのもいいですよね。昔からあるものを、今の暮らしに合わせてどう提案できるかと考えられるのは、長年ものづくりに向き合ってきた産地問屋さんだからこそだと思います」
FACTORY FRONTの目指す産地について
FACTORY FRONTさんと家事問屋。通じる想いがあるからこそ、お互いに支え合いながらこの先の燕三条を見据えています。
「地域の活性化というと少し違うかもしれませんが、燕三条がものづくりを軸によりよい地域になったらいいなと思っています。そのために私たちは伝え手として、ただ商品を販売するだけでなく、ものづくりへの興味のきっかけを作り続けていきたいと思います」
燕三条という産地をこれからも守っていくために。
FACTORY FRONTさんは、今までものづくりに触れてこなかった方でも産地の背景がわかるようなご案内やお店づくりをしています。
家事問屋もまた、FACTORY FRONTさんとともに、燕三条のものづくりを伝える“伝え手”の役目を果たしていきます。
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〈取材協力〉
FACTORY FRONT
新潟県燕市東太田14-3
0256-46-8720
https://factoryfront.com/
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