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世界の市場を変えた歯ブラシのアイディアをサングラスに応用して大ヒットする

新商品の開発はチョットしたことがきっかけになることがあります。

19年勤務した会社を退職した時に、
取引先でもあり、友人でもある金型屋さんから退職祝いに
金型を一つプレゼントするので、何でも考えたらと、
ありがたい申し出を受けました。

しばらく、何をしたらいいかを考え、
以前から構想として持っていた、
テンプルのハード&ソフトの金型を作ってもらうことにしました。

当時、スキー用のサングラスとしてプラスチックで作ったモノには
インジェクション成形で作られたモノ、
アセチのシートを切り抜いて作られたモノの2種類がありました。

メガネ店で購入するメガネはレンズを入れて完成すると
顔にフィットするように調整するのが普通です。

既成のサングラスは個人個人にフィッティングすることが出来ないので、
顔にフィットしにくい、ずり落ちるなどの心配がありました。

この対応で1つ考えたのは、テンプル(ツル)の先に
ゴム管を靴下の様に履かして、取り付ける事でした。
これは、実用新案を取りました。
後にオークレーのサングラスが同じような機能のタイプを発売しています。


そんな訳で、常に頭の中に顔にフィットする方法を探し求めていました。
あるとき、新製品の歯ブラシを見ると、
固い部分と、ゴムの様に柔らかい部分からなる柄のモノがありました。

新金型を作るに、
この歯ブラシのハード&ソフトの機能を織り込んだテンプルを考えました。

耳に当たる部分が
ソフトなエラストマーで出来ているサングラステンプルです。
これだとフィッティングが改善され、
ズレにくく、長時間の装用でも快適にサングラスを使用できる訳です。

アイディアがまとまると形状デザインに進みます。
耳に当たる部分は凸凹している方が効果が増すと考え、
ミシュランのタイヤ小僧のような形状にしました。

製造の方法は
はじめに、テンプル本体をナイロン樹脂で成形します。
次に、出来上がった成形品を二番目の金型に入れて、
柔らかいエラストマー部分を成形するのです。

ハードの部分とソフトの部分の密着性がポイントになります。
くっ付く素材を探しも開発のポイントになります。

このミシュランプロジェクトは大成功となりました。
付加価値のあるサングラスが登場し、
従来に比して高価なサングラスとして売れたのです。

日本は中国の安いサングラスに追い上げられていて、
対応策を模索していたところでしたので、
この開発の新しいラインナップは
売上に貢献したことは言うまでもありません。

日本から世界に輸出するサングラスにも採用され、
一時はこの機能のサングラスが世界のトップに躍り出ました。

2~3年して同じ機能を持つサングラスが日本の他の会社でも、
中国のサングラスメーカーでも同じ機能を使ったコピー品が登場し、
世界のスタンダードとなりました。

特許は申請しないままでしたので、
だれでもが作ることが出来、
新しい機能とデザインがサングラスラインナップに加わりました。

チョットしたアイディアが新ジャンルを作り、流行を作る一例です。

自分が思ったことが、皆さんの協力を得て、形となり、
少しでも業界に役立ったのは業界人として、
少しは恩返しが出来たと喜ぶ次第です。
自分の心に大きな思い出として残ります。


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