『蜜時』
ふたりは合コンで初めて出逢った。
隣り合う席で男が女に話かける。
──僕さあ、時々夢を見るんだ。会ったこともない、名前も知らない女性を抱きしめて「少しやせたね」って言うんだ。
女は言った。
──あら、奇遇ね。わたしも似たような夢をたまに見るわ。「あなた、ずいぶん痩せたけれど、ちゃんとご飯たべてる?」って見たこともない男の人と抱きあいながらそういうの。
ふたりは幾つかの席をまわった後、御手洗いへと向かう廊下で再び出逢った。
瞬刻、ふたりは見つめあい、抱擁を交わした。
ふたりは互いに思った。
やはりあれは夢だったのだと──。
おわり
あなたのサポートを心よりお待ちしております。新しい本を買うことができます。よろしくお願いいたします。