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第2種電気工事士~計算問題攻略編~

1.はじめに

第2種電気工事士の筆記試験について苦手とする人が多い計算問題について覚えるべき公式・考え方をまとめましたので、試験対策の参考にしてください。


2.出題傾向

第2種電気工事士の筆記試験は50問の四肢択一形式。すべての問題の配点が2点となっており、60点で合格となります。
出題パターンはかなり固定化されており、今回対策の対象としている計算問題は問1~問7の7問出題されることが多いです。実際2022年の上期から2024年の上期まで午前午後含めて9回分見てみましたが、問1~問7の出題となっていました。
今後も必ずと約束はできませんが、そう思って対策することでかなりの確率で対応できると思います。
また、その7問もそれぞれ固定化された分野の中から少しだけ形式を変えた出題となっていますので、いくつかのパターンを覚えることで対策可能です。
7問丸々捨ててしまうと、43問の中から30問正解する、正答率70%を必要とする試験となってしまうので、7問すべてとは言わないですが、ある程度対策することで合格が近づくこと間違いなしと思います。
問題を大きく3パターンに分けて対策しますので、次節以降をご覧ください。なお、試験問題との対応は以下の通りです。

3.対策1:直流回路

中学校の理科で習う一般的な回路の問題です。

①回路の電圧、電流、抵抗を求める問題(問1)

まず絶対覚える必要があるのは電圧、電流、抵抗の関係式です。

電圧 = 電流 × 抵抗

3つのうちどれか1つが分からないということが問題になるので上記式に入れて計算してください。電源の電圧が一定であれば抵抗が大きいほど電流が小さくなるということで関係性は覚えてあげればよいと思います。

次に、抵抗については直列・並列でつながっていてかつ複合している場合があるのでそれらの合成抵抗を求める問題が多いです。
イメージ図は下表です。

例題1

解き方は簡単で、①並列の抵抗の合成抵抗を計算、②直列の抵抗の合成抵抗を計算という流れです。

  • 並列の合成抵抗の求め方

二つの抵抗の値をR1、R2とした時の合成抵抗Rは以下の算式で求まります。

$$
\frac{1}{R1} + \frac{1}{R2} = \frac{1}{R}
$$

なので、例題1の場合は

$$
\frac{1}{30} + \frac{1}{60} =\frac{3}{60} =\frac{1}{20}
$$

よってR=20となります。
なので例題1の図は以下に書き換えられます。こうすることで直列の合成抵抗を求めることで回路全体の抵抗が分かります。

例題
  • 直列の合成抵抗の求め方

二つの抵抗の値をR1、R2とした時の合成抵抗Rは以下の算式で求まります。
並列と比較し単純ですね。

$$
R1 + R2 = R
$$

なので、例題1'の場合は

$$
20 + 20 = 40
$$

よってR=40となります。
これで回路全体の抵抗を求めることができるので、電圧、電流、抵抗の関係式から問題で求められているものを算出してあげれば完了です。
合成抵抗の計算式についても、電圧、電流、抵抗の関係式から算出することができるので余力がある人は取り組んでみてください。
前提として、並列の場合は二つの抵抗にかかる電圧が等しい。直列の場合は二つの抵抗にかかる電流が等しい。という知識が必要ですのでこちらも覚えておいてください。

②抵抗値を求める問題(問2)

抵抗の長さや断面積が与えられ抵抗値の計算式を問われる問題です。
覚えることは抵抗の大きさは長さに比例し、断面積に反比例するということだけです。イメージとしては抵抗というトンネルの中に障害物が点在していると考えてみると、長くなるほどその障害物をよける必要がある距離が長くなるので、進むのに時間がかかる。断面積が小さくなると障害をよけるスペースも小さくなり進みづらくなる。という感じです。
この単純なことを聞くことを若干変えつつ出題されているという感じです。

③電力・熱量を求める問題(問3)

次は電力や熱量を求める問題です。これは単純に以下の公式に当てはめれば完了です。

電力 = 電圧 × 電流
熱量 = 電力 × 時間(単位は秒)

電力の計算については、電圧、電流、抵抗の関係式と組み合わせた以下の応用がありますのでそれも併せて覚えておくとよいでしょう。

電圧 = 電流 × 抵抗
なので、
電圧を置き換えると
 電力 = 電流 × 電流 × 抵抗
電流を置き換えると
 電力 = 電圧 × 電圧 ÷ 抵抗
となります。

これは本当に当てはめ問題となります。

④電圧降下、電力損失を求める問題(問6,7)

これまでの回路では電線の抵抗を無視していましたが、電圧降下・電力損失の問題では電線の抵抗にかかる電圧、それに伴い消費される電力について求める問題です。
後述の三相回路に繋がっている問題がありますが、それは「5.対策3:三相回路」で取り扱います。
この問題は単純で、①、②の知識を使い抵抗にかかる電流、電圧を計算し電圧降下はその電圧そのまま。電力損失は電圧×電流で求めればよいです。
なお、下図のような3本線の問題が出た場合、2つの電源電圧が等しければ真ん中の丸い線を流れる電流が打ち消しあってゼロとなり、その電線抵抗分の電圧降下はゼロとなるので注意してください。

4.対策2:交流回路(問4)

交流回路は大体問4の1問のみの出題ですが、覚えることが多いです。対策1、3のほうが出題割合が多いのでそちらの対策ができてから覚えるのがよいかと思います。順を追って説明します。

①最大値と実効値

交流は直流と違い、電圧・電流が変化します。よって平均的に使える電圧・電流を実効値としています。最大値と実効値の関係性は以下の通りです。

$$
最大値 = \sqrt{2} × 実効値
$$

回路の電圧、電流、抵抗の関係性は直列と変わりませんが、抵抗に加えてコンデンサとコイルという新しい物が登場し、電流の流れにくさをインピーダンスという名称で表すことになります。

②コンデンサとコイル

コンデンサとコイルがある回路のインピーダンスの求め方は、
回路全体のインピーダンス:Z
抵抗:R
コンデンサの抵抗※:$${X_L}$$
コイルの抵抗※:$${X_C}$$
とすると、直列と並列で以下の通りとなります。
※実際には抵抗とは違いますが簡単のためそうしています

$$
直列の場合\\
 \\
Z = \sqrt{R^2 - (X_L - X_C)^2}\\
 \\
並列の場合\\ 
 \\
Z = \sqrt{R^2 - (X_L - X_C)^2}
$$

③電力、力率

電力について問われた場合は、抵抗にかかる電流と電圧の掛け算を答えれば大丈夫です。コイルやコンデンサにかかる電流、電圧は無関係です。電流・電圧がわからない場合の計算は直列回路の場合と同じです。
力率は抵抗とコイルやコンデンサが並列の場合と直列の場合で以下の求め方になります。

$$
直列の場合\\
 \\
力率 = \frac{抵抗にかかる電圧}{回路にかかる電圧}\\
 \\
並列の場合\\ 
\\
力率 = \frac{抵抗にかかる電流}{回路にかかる電流}
\\
$$

5.対策3:三相回路

三相回路は問5+問6,7で電圧降下、電力損失を求める際の回路図に出題される可能性がある問題になります。
不気味な形をしていますが、覚えることは2つだけです。
以下の図のように中心に交点がある場合は、

$$
各抵抗にかかる電圧 = \frac{線間電流}{\sqrt{3}}\\
 \\
各抵抗にかかる電流 = 線電流
$$

逆に以下の図のように三角形の回路になっている場合は

$$
各抵抗にかかる電流 = \frac{線電流}{\sqrt{3}}\\
 \\
各抵抗にかかる電圧 = 線間電圧
$$

という感じで、電流と電圧の計算が入れ替わるだけです。
具体的には以下のような形の問題で問われます。答えるべきものは問題によって変わりますが、分かっている条件を公式に当てはめて数値を求めていけば求まります。

$$
この場合は、三角形の回路なので\\
 \\
各抵抗にかかる電流 = \frac{線電流}{\sqrt{3}}\\
 \\
\frac{10}{\sqrt{3}} ≒ 5.8
となります。
$$

たまに、電源から伸びている回路が結線しているというひっかけ問題もありますので注意してください。結線している場所には電流が流れないので単純な回路になっている場合があります。

6.まとめ

意外と書き出してみると覚えることは多いなとなりましたが、このNoteと過去問見比べながら解いてみると意外と頭に入ってくるのではないかと思います。

頑張ってみてください。


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