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【ブックレビュー】 オセロー|シェイクスピア悲劇の中では真っ当な終わり方をする気がする。

今回はシェイクスピアの『オセロー』のブックレビューをしていきます!

『ハムレット』『リア王』『マクベス』とともに「シェイクスピアの四大悲劇」として知られ、

その中でも最も優れた作品、傑作だといわれています。

今回『オセロー』を読了したことで四大悲劇はすべて読んだことになったのですが、

確かに一番“まっとうな悲劇“だと感じました。

そんな『オセロー』について、今回は語っていきます!

  

『オセロー』の感想

『オセロー』の最大のテーマは「嫉妬」だといわれています。

今回、謀略によってオセローを嵌めた「イアゴー」は、

オセローの将軍の地位や、オセローの一番の部下であるキャシオーの地位に嫉妬していたといえますし、

そんなイアゴーの謀略によってデズデモーナとキャシオーの不義を疑ったオセローも、嫉妬によって発狂するまでになってしまいます。

嫉妬によって身を滅ぼす、これは悲劇の典型的なパターンですからね。

これは現代に通じるところがありますよね。

とは言っても個人的には、

"適度な"嫉妬であれば、やる気・モチベーションのガソリンにもなるのではないかなぁ〜とも思わなくもないのですが、、

まぁ、それができるのであればそもそも嫉妬に頼らないやる気の上げ方を自分で見つけられそうですが。。笑

  

内容としては具体的なネタバレは避けますが、

「収まるように収まった」という印象が強かったです。

どちらかというとシェイクスピアの物語って、ちょっとモヤモヤして終わる形が多い印象なのですが、、

『オセロー』についてはそんなことなく、

「そうなるよね」というある意味"王道"な悲劇をいったと思います。

「嫉妬」がテーマであることからも、「傑作」といわれる理由がわかった気がします。

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『オセロー』はこんな人にオススメ

・シェイクスピア悲劇を読んでみたい人

・世界の名作を読んでおきたい人

・「嫉妬」がテーマの本を読みたい人

       

個人的に刺さったところ

以下、若干のネタバレもあります。

公爵
あなたの身になって格言めいたことを言わせてもらおうか、それを踏み台として相思相愛の二人を温かく迎えてやってくれれば それに越したことはない。
希望の末路を目の当たりにし、万策尽きれば悲しみも終わる。
過ぎ去りし不幸を悔やむは 新たな不幸に続く最短の道。
保ちえぬものを運命が奪うとき 忍耐はその傷を笑い飛ばす。
盗まれて微笑む者は盗人から盗み返し、いたずらに嘆く者は我と我が身を盗む。

ブラバンショー
ならばトルコにキプロスを盗ませるべし、こちらが微笑むかぎり失うことにはならぬゆえ。
宣告として下された格言によく耐える者は、耳にした言葉から容易な慰めしか引き出さぬもの。
だが悲しみへの支払いをなけなしの忍耐から借りる者は 格言と悲しみの両方に耐えなければならぬ。
そもそも格言とは砂糖と塩を一度に差し出す、甘さと辛さを同時に主張する二枚舌なり。
しょせん言葉は言葉、耳から入る言葉が傷ついた心に届くためしなし。

娘の「デズデモーナ」が、父「ブラバンジョー」の許可なく「オセロー」と結婚したことが発覚した際のやりとり。

オセローは「ムーア」と呼ばれる黒人であり、挿絵や言葉遣い・描写からみるに、若いデズデモーナとはかなり歳が離れている男です。

確かに軍人としては優秀な人材ですが、

そんな年齢・人種の男と結婚するなんて、当時の貴族からしたら信じられないこと。

しかもデズデモーナは、とても気立がよく美しい女性です。
(これはシェイクスピア作品のヒロインあるあるですが。笑)

当然その事実を受け入れられず、「オセローが娘をたぶらかしたに決まっている」と主張する父ブラバンジョー。

しかし、デズデモーナ本人の口からオセローを愛しており、自らの意思によって決めた結婚であることがわかります。

上の引用は、その後の会話です。

二人の結婚を認める公爵と、いまだ認めることができないブラバンジョーのやりとり。

「二人の幸せな門出を祝福してやろうではないか」「悲しみをいつまでも引きずっていると、さらに不幸が続く」という公爵に対し、

「そんな言葉・慰めなど何の意味も持たない」というブラバンジョー。

シェイクスピアらしい言葉選び、テンポの良さが気に入り、ここで取り上げました。
(もっともこれは、翻訳者の方の能力なわけですが。笑)

       

イアゴー
まったく、馬鹿なやつだ。それでも紳士か。

ロダリーゴー
確かに馬鹿だよ、生きるのが拷問なのに生きていくのは。だから、みんな死ぬための処方箋を書いてもらうんだ。死が医者だったら。

デズデモーナに惚れているロダリーゴーという男が、

(おそらくですが)デズデモーナと全然会うことができないと思って「身投げする」と言ったあとの会話。

ロダリーゴーの「生きるのが拷問なのに生きているのは馬鹿だ」「みんな死ぬための処方箋を書いてもらうんだ」という発想が何ともおもしろいなぁと思って取り上げました。

ちなみにこのロダリーゴー、

イアゴーを介してデズデモーナにプレゼントやら何やらを贈っている、と思っているのですが、

その実はイアゴーが巧みな話術で横領しているという可哀想なキャラ。

そしてこのイアゴーという男が、『オセロー』における悲劇の幕を挙げる悪魔のような男なわけです。

  

イアゴー
体のほうが名声より痛みには敏感なんだ。名声なんて、他人が押し付けてくる愚にもつかないまがい物だ、これといった業績がなくてももらえるし、身に覚えがなくても奪われる。第一あなたは名声を失くしてなんかいない。失くしたと思い込んでいるだけです。

酔った勢いで馬鹿にされた腹いせに、ロダリーゴーに切りかかってしまったキャシオーへ、イアゴーが慰めているシーン。

「キャシオー」はオセローの一番の部下であり、

イアゴーは二番目の部下というところの立ち位置。

そして、ロダリーゴーにキャシオーをけしかけるように仕向けたのはイアゴーであり、

酒癖が悪いキャシオーに酒を飲ませたのもイアゴー。

つまりここはイアゴーが、キャシオーをおとしめてオセローの配下としてNo.1の地位に収まるための演技なわけです。

なかなか悪いやつでしょう、イアゴー。

とはいえセリフは本当に深いことを言っているので取り上げました。

「名声」とは結局、「他者が与えてくるもの」、それに一体どんな意味があるのだろうか、

ということを言っているわけですよね。

まぁ言っていることが良いから、みんな騙されてしまうんだよね。笑

ちなみにこのあとイアゴーは、将軍であり上司でもあるオセローに向かって

閣下、いい評判というのは、男にとっても女にとっても
魂のいちばん大切な宝石です。
盗まれても財布ならたかが金だー事は事だが大した事じゃない、
私のものがそいつのものになるだけ、どうせ天下の回りものですからねー
しかし、盗まれたのがいい評判となると、盗んだやつには何の得にもならないが、盗まれた方は大損です。

と言っています。

僕もまんまと騙されたわけですね。。笑笑

キャシオーには「評判なんて意味がない」といいつつ、

オセローには「評判が盗まれては大変だ」と言っているわけです。

ここはイアゴーがオセローに「キャシオーがあなた様の地位を奪おうとしつつ、デズデモーナを焚き付け、不倫している」という嘘を吹き込んでいるシーン。

もちろんこれは、キャシオーを失脚させ、さらには嫉妬によってオセローの正気を失わせようとイアゴーが嵌めようとしているわけです。

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こんなふうに、イアゴーによって人々がふり回され、

その嫉妬のあまりオセローはついに、デズデモーナを自らの手で殺めてしまいます。

しかしその後、すべてはイアゴーの謀略であることがわかり、正気に戻ったオセロー。

彼は自らの恥を受け入れつつ、それでも今での功績は讃えてほしいと言い残して自刃します。

そしてイアゴーは、裁判にかけられ、拷問を受けるだろう、という描写によって幕を下ろします。

  

このように、

「謀略によって嫉妬に駆られた男が、最後まで夫を信じ貞操を貫いた妻を殺してしまう」ところまではまさに悲劇なのですが、

そのあとは妻の後を追うように自ら命を断ち、貶めた男は裁かれる、

という流れは、ある意味"王道"なわけです。

こういうところが万人に受け入れられ、「傑作」といわれる理由の一つなのかなと思いますね。

『オセロー』、気になる方はぜひ読んでみてくださいね!

   

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