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本当に反撃能力で弾道ミサイルを阻止できるのか?                  本当の目的は何なのか

注意:この記事は学生ミニタリーオタクが作った記事です。専門家が作った投稿記事ではありません。
また、誤字脱字などがある場合もございます。
これらをご了承した上で記事をご覧ください。

2022年12月2日に自民党及び、公明両党は、相手国の弾頭ミサイル発射拠点などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を容認することで正式に合意しました。年末には国家安全保障戦略の改定もおこなわれる予定で、現在の厳しい東アジアの安全保障環境に適合した安全保障政策の策定が急務とされます。

その中で、自民党・新聞・テレビでは、反撃能力の保有について、北朝鮮から発射された、弾道ミサイル発射拠点などを発射前に叩くことを目的に配備すると言っています。
しかし、これは、軍事的に実行可能なのでしょうか?
実際は、弾道ミサイル発射台を発射前に撃破することは非常に困難で、反撃能力で阻止することは困難です。
「この発射前に撃破することは困難」というのは、過去の戦争事例から言われています。

湾岸戦争で失敗に終わった「スカッド潰し」

1991年の湾岸戦争でアメリカ軍は「砂漠の嵐」作戦をおこないクウェート・イラク上空の制空権確保に動き出します。
一方イラク側は、スカッド短距離弾道ミサイルによる攻撃を実施しました。


これに対して、アメリカを中心とする多国籍軍は、発射前にスカッドミサイル撃破するため、戦闘機を投入します。これを「スカッド潰し」と呼称します。
しかし、スカッドミサイルを発射前に撃破することはほとんどできなかったのです。
これは「世界最強のアメリカ軍をもってしても弾道ミサイルを発射前に阻止する作戦は失敗してしまう」という戦訓を残しました。
短時間でクウェート・イラク上空の制空権を掌握したにもかかわらず。

そもそも地上移動目標の発見・撃破は困難

最大の問題は、北朝鮮軍運用している弾道ミサイルは、固体燃料式でなおかつ隠れながら逃げ回る移動式発射台によって運用されている事です。
弾道ミサイルは液体燃料式ならば燃料注入で早くとも30分の発射準備時間が掛かります。湾岸戦争のスカッドミサイルは、「液体燃料」でしたが、米軍は撃破できたでしょうか?
先ほど説明したとうり、米軍はスカッドミサイル撃破に失敗しました。

そして北朝鮮の運用する弾道ミサイルは、「固体燃料」で発射準備時間が5分と短く、固体燃料式弾道ミサイルが相手では時間的猶予はありません。
また、移動式発射台は、移動と隠蔽を交互に繰り返すため、発見は容易ではありません。
30分の発射準備時間が掛かるスカッドミサイル撃破に失敗したのであるならば、発射準備時間が5分で移動式発射台によって運用される固体燃料式弾道ミサイルを発射準備中に見つけだして攻撃する事は「絶望的に不可能」と言えるのです。

「衛星技術がある」と言われる方がいますが、たとえ発射前に見つけたとしても、それが本当に目標なのか見付けだして判定する作業に時間が掛かってしまいます。
発射準備時間が5分である固体燃料式弾道ミサイルでは、間に合うわけがないのです。

反撃能力を保有する本当の目的1                                ミサイル迎撃のパーセンテージを上げるため  

先ほど、固体燃料式弾道ミサイルを発射準備中に見つけだして攻撃する事は「絶望的に不可能」と書きましたが、ミサイルによる反撃をおこなえば、敵側の弾道ミサイル部隊は、撃破されるリスクを恐れ、部隊は隠れることがあり、これによってミサイルの同時発射するタイミングがずれるのです。
ミサイル発射量を減らせれば、我が国のミサイル迎撃のパーセンテージを上げることができます。
わかりやすい例をだすと、ミサイル発射量を40発から30~20発に減らすことができます。
この様に我が国のミサイル迎撃のパーセンテージを上げるという目的のためなら、反撃能力を保有する事には大きな意味があるのです。

反撃能力を保有する本当の目的2                 北朝鮮には効果が無いが、中国には効果がある

今までの説明を見ていると北朝鮮に対して日本が攻撃を行って意味のある固定目標が見当たらず、「ミサイル迎撃のパーセンテージを上げる」以外に効果はそこまでありません。中国は航空機で日本を攻撃する能力を持っているので、台湾有事が勃発した場合に、航空自衛隊の航空基地や護衛艦が攻撃された場合に中国の航空基地に反撃を行うという状況が十分に想定されます。これは敵基地攻撃は合憲の範囲内でもあり、目標が固定基地なので攻撃も容易であり、航空機の運用を妨害する戦果も得られやすいでしょう。逆に考えるなら北朝鮮軍の航空機はそこまで脅威ではなく、固定目標も少ないのです。そもそも、北朝鮮は、中国と比較すればそこまで脅威ではないのです。

自民党に対する意見

ここまでの書いてきた事を簡単にまとめると反撃能力に関して自民党は対北朝鮮を取得理由としながら実際には対中国用であることを隠して主張をしているということになります。
もっと厳しく言うなら、中国対策としての敵基地攻撃能力を取得することは国民を騙すだけでなく、ミニタリーオタクから言わせると「説明が無茶苦茶なものになっている」と言わざるを得ないのです。
自民党内部や公明党に対する配慮は分かりますが、国民の命が掛かっている問題に関しては、逃げずにしっかりとした説明責任を果たすべきではないでしょうか。




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