見出し画像

「デジタルマーケティングって一体なに?」よく間違える3つのデジマ

“デジタルマーケティング”(以下「デジマ」)という言葉をよく耳にしませんか。
DXというトレンドから、デジタル関連の部署(チーム)が設立してる会社は少なくないのではないでしょうか。

今回はデジマについて取り上げますが、そもそもデジマとはいったい何なのでしょうか。
関わりの少ない人たちで、すぐに説明できる人は少ないのではないでしょうか。

現在のデジタルマーケティングは「暗闇の中の男たち、象を評す」の状態である

デジタルマーケティングの教科書―5つの進化とフレームワーク

なぜこのような状況になっているのか、そもそもデジマとは何なのか考えてみましょう。

1.デジタルマーケティングの定義

先述の通り、デジマは未知数な部分が多く、身近なようでまだ遠い存在です。
少しずつ理解していく為にも、まずは似た用語だが間違ったデジタルマーケティングから整理します。

インターネットプロモーション、Webプロモーションと
ほぼ変わらないデジタルマーケティング

インターネットマーケティングやWebマーケティングもデジマと呼ばれたりしますが、これらはデジマの一部になります。象で例えるところの足など部位に該当します。

インターネット上で完結できるマーケティングはこれらに該当しますが、デジマの概念はそれよりも広域になります。
マーケティングは消費者心理を推測して効果的な施策をすることに価値があり、消費者はリアルで行動しています。
つまり、インターネット上はあくまで一部分に過ぎないわけです。

データマイニング、ビッグデータ分析に偏ったデジタルマーケティング

データマイニングやビッグデータ分析と同義で呼ばれるデジマもあります。
これもデジマの一部となります。先程が足であれば今回は腹などに該当します。

こちらもインターネット上に偏った傾向にあり、DMPが出発点であると考えるところに特徴があります。

格好良いが、中身のない意味不明なデジタルマーケティング

個別施策のマーケティングではなく顧客接点を全社的に横断した“統合型デジタルマーケティング”であること

外資系コンサルタントが使う一例

一見正しそうに見えますが、いざアクションを起こそうとしたときに止まっててしまうのが特徴です。
間違ったことを言っているわけではないのですが、具体性に欠けることで煙に巻かれた感覚になります。

以上がよく間違えられるデジマです。

では、デジマによって実現できることは何でしょうか。

1−1.できるようになること

まず、従来のマーケティングを整理します。

主流の考え方は「環境分析」→「戦略立案」→「戦略実行」→「戦略管理」という流れです。

[環境分析]

PEST分析やSWOT分析などで外部環境分析から自社の強みを考え参入市場を決めます。

[戦略立案]

4P分析して市場とターゲットを確定し、製造からプロモーションなど戦略を決めます。

[戦略実行]

戦略が決まれば、テストマーケティングなどして実行に移ります。修正が必要であればします。

[戦略管理]

市場導入後も検証は継続されます。

これが一般的なマーケティングですが、この考え方にも限界があることが分かってきました。

・基本的にアナログデータであること
・セグメントの段階で、同質と「みなしうる」とういう擬制であること
・ECチャネルにおける購買行動を前提としていない

従来のマーケティングが限界である理由

この限界をデジタル化によって解決し、従来のマーケティングが進化することで“デジタルマーケティング”となります。

解決方法として先に結論から述べると、“データドリブン”“オムニチャネル”をかけ合わせることで、この課題を解決する可能性を見出すことができました。

1−2.データドリブン、オムニチャネル

[データドリブン]

膨大なデータをもとにアルゴリズムやAIなどで分析された結果をビジネスで活用することです。ビッグデータ分析は今まで知ることができなかった、「購買前後行動」の分析も可能にします。

今までの主流はPOSデータ分析で、購買時のデータしか取得することができませんでした。商品が売れるまでに何人が手にとって、誰が購入して、リピーターになるかどうかなどは見えにくいわけです。

これはマーケター悩みとしてよくある話です。
商品を誰が買おうとして、誰が買ったのかは結局は分からないので、購買データをもとに推測するしかないのです。

それがIOTやカメラデータなどから購買前などのデータを取得して今までできなかった分析をすることができます。

上述の観点はBtoBでも該当します。購買前後の行動データはMAなどを活用することで取得が容易になってきました。

[オムニチャネル]

企業とユーザーの接点「チャネル」をESサイトだけでなく、さまざまなチャネル(オンライン・オフライン関係なく)を連携してシームレス化した顧客体験を提供するアプローチのことをいいます。

ポイントはチャネルごとに独自に働くのではなく、連携して一元管理できることになります。

例えば、実店舗とECサイトを運営している会社があるとして、在庫管理が別々なことは珍しくありません。そのため、実店舗では在庫があるのに、ECサイトでは品切れになってしまうことが発生してしまいます。

また、SNSやメールなどで消費者へアプローチするもののそれらが連携することなく独自で機能してしいることは珍しくありません。

これらから進化したのが、オムニチャネルとなり、消費者は快適な購買をすることができます。また、オムニチャネル化により膨大なデータを収集することも可能となります。

BtoCでは特に広範囲での連携力が問われることになり、マーケティングの範囲だけでなく、物流や生産のなど広範囲で連携する必要があります。そのため、実現するには大きな労力が必要となります。

1−3.デジタルマーケティングとは

改めてデジマとは何なのでしょうか。

データドリブンとオムニチャネルを駆使して消費者のことを理解、消費者の代理人となること

デジマは従来のマーケティングを進化したものです。

マーケティングの目的を「消費者を理解し、潜在ニーズに応えること」と定義すると、デジマによって目的により近づくことができます。
最終的には消費者の代理人となることがデジマの定義だともいえます。

では具体的に何をすればよいのか考えてみましょう。

2.具体的に何をすればよいのか

いきなりですが、デジマは明日から導入できる品物ではありません。
まだ成功モデルが確立できず、各企業が現在進行系で挑戦中なのがデジマの現状です。

成功方法を共有することはできませんが、先の定義から考えて浮き彫りになる課題解決は必須条件となります。
そういう観点から何をすればよいのか考えてみます。

2−1.従来のマーケティングから考えてみる

デジマは従来のマーケティングを進化したものであると述べましたので、従来のマーケティングで行っている、1.環境分析 2.消費者理解 3.セグメンテーション 4.チャネル 5.プロモーションの観点からまず考えてみます。

1.環境分析

従来型の環境分析は過去から分析するため、未来を予測することは難しいです。
しかし、これからは現時点で因果関係が細くてもテクノロジーの進化により太くなる可能性が未来では考えられます。

因果関係がポイントになります。
因果関係が細い事象を出して、どのようにしたら太くなるのかという視点で考えてみることが重要になります。

つまり、デジマは未来を定義することから必要になります。そのためには発想をジャンプさせて予測しなければなりません。

2.消費者理解

従来型のAIDMAでは検索から即購買という即時性を想定していないので、消費者行動が説明できなくなってきました。心理変化と購買行動にタイムラグがあるわけです。

そこで、SNS時代の消費者行動はAISASとZMOTで説明できるようになりました。

AISAS

Attention(認知・注意)・Interest(興味・関心)・Search(検索)・Action(行動)・Share(共有)の頭文字を組み合わせた造語で、消費者が実際に商品を認知してから購入するまでの購買行動モデルの一つ

ZMOT

「Zero Moment Of Truth」の頭文字を取ったもので、消費者が店頭で商品パッケージやディスプレイを決め手として商品購入を決定することに対して、「ZMOT」は「FMOT」のさらに前段階である店頭に足を運ぶ前に行われる意思決定(買い物の下調べ)のこと

デジタル化によって購買前の情報収集が可能になります。今まではPOSデータが主要データとなり、得られるのは購買データだけです。
デジマでは今までできなかった範囲のデータを膨大に集約できます。さらには購入後に消費者がSNSなどで発信する情報も収集可能です。

つまり、今まで得られなかった情報が得られるようになるので、より消費者理解が強化できます。
しかし、これはあくまでもデータ量が進化するだけで、消費者の心理状態が分かるようになるわけではありません。

今後は圧倒的なデータ量による「分析力」が企業間で問われるスキルになることでしょう。

これを可能にするのがユーザーIDによる紐付けです。ユーザーIDと紐付いた形でビックデータを蓄積することがデジマにおいて最重要項目の一つとなります。

3.セグメンテーション

デジマは従来型と真逆の考え方となります。

従来型は市場から細分化してターゲットを決めます。「〇〇な人たちは✕✕なニーズがあるだろう」と推測するのが主流です。
効果的にするために様々なフレームワークが存在し、できる限りリアルと擦り合わせます。

つまり、消費者の顔は見えない・分からない状況となります。

しかしデジマではこれが逆になります。
従来型の出発点が市場からだとして、デジマの出発点は個人となります。ユーザーIDと紐づくことで消費者の顔が分かる状態からのセグメンテーションとなるので、より消費者のことを理解した形で決めれます。

4.チャネル

まずはチャネルの変化から整理していきます。

[シングルチャネル]2000年まで
消費者とチャネルの接点がリアル店舗という1拠点のみ

[マルチチャネル]2000〜05年
ECチャネルの登場 複数の接点があるが分離独立 顧客データの紐付けはできていない

[クロスチャネル]2006〜10年
在庫管理を一元化 ECチャネルで注文した製品をリアル店舗で受け取れる チャネルをまたがり購買 サプライチェーンを統合

[オムニチャネル]2011年〜
出発点は消費者理解 消費者に最適なチャネル提供

このように時代の変化と共にチャネルも変化しています。特にインターネットの主流化からチャネルも大きく変化し始めてます。そしてデジタル化の進化によりオムニチャネルが現在進んでいる状況です。

成功の鍵は何でしょうか。

1.ユーザーIDの統合と顧客理解
2.シームレスな購買体験の提供
3.シームレスな物流網の整備
4.決済情報の取得
5.売上計上の工夫
上記の要素が成功するには重要になります。提供価値としては“心地よい”、“安い”、“はやい”となります。消費者にとって最適な購買環境を提供します。

消費者データと購買体験がシームレス化することで消費者には最適な環境を提供できるのですが、そのためには生産・物流機能の連携化が必須になります。更にオムニチャネルが進めば配送が更に困難になることが考えられます。

5.プロモーション

外部環境によってプロモーションも変わります。
需要過多の時期は「認知力」が重要でした。後に、少しずつ供給過多となると認知力だけでは足りず、「興味・関心・欲求」要素も重要になりました。
そして昨今ではOne to Oneプロモーションの方向に進んでいます。

しかし、なかなか上手くいっていないのが現状です。そこでデジマの登場です。
ユーザーIDによって消費者と繋がることが実現すればone to oneプロモーションは可能になります。

さらにスマートフォンの登場により、インターネット上だけでなく、スマートフォンの位置情報から実際の行動からターゲット絞り込む、リアル行動プロモーションが可能となりました。

リアル行動からプロモーションをすることで、ユーザーIDに紐付いた消費者が欲しいタイミングで広告宣伝ができます。
さらには広告を見た人がどのように影響を受けたのか追跡確認することもできます。

今までは会社都合でプロモーションをしてましたが、消費者の欲しいタイミングでプロモーションをできるわけです。

ここまでの内容を踏まえて、具体的に何をすべきか考えてみます。

①まず、未来を考える力

因果関係が細くてもイノベーション的な何かによって因果関係が太くなることはこれから珍しくありません。それは何なのか、日頃から考えることが重要になります。

②ユーザーIDの仕組みを構築し、購買前〜購買後までの情報を収集できるシステム

購買における従来のマーケティング規模ではなく、調達段階や購買前行動などの従来より前段階の規模から、位置情報によるリアル行動、購買後の共有環境など広範囲での一元管理されたデジタル化が必要になります。

③リアル行動プロモーション

そして最終的には消費者と直接つながっている状態となり、消費者の行動分析により、欲しいタイミングで広告できるシステムが必要となります。

2−2.マーケティングのキープレーヤー

これを実現させるためにはキープレーヤーが存在します。それが今後のマーケティング業界を牛耳る会社となっても過言ではないかもしれません。

結論からいうと、デジタルコンサルティング会社としてアクセンチュアやIBM、消費者行動データを保有しているGoogle、Facebook、Amazon、Appleになります。
これらの会社が今後のキープレーヤーとして考えられます。

では時代の変化によってマーケティングのキープレーヤーがどのように変化してきたのか見ていきましょう。

[需要過多の時代]
総合広告代理店(電通、博報堂、アサツーデイ・ケイ)

[供給過多の時代]
外資系戦略コンサルティング会社(マッキンゼー、ボストン・コンサルティング・グループ)

[デジタルマーケティング変革期]
デジタルコンサルティング会社(アクセンチュア、IBM)

[デジタルマーケティング確立期]
消費者行動データ所有企業(Google、Facebook、Amazon、Apple)

各時代においてキープレーヤーは異なりますが、目的によっては今でも総合広告代理店は強力な力を発揮します。
ただ、時代の変化と共に一時期と比べると需要過多でのキープレーヤーが活躍する機会は減っていると思われます。

消費者行動データを所有している米国企業はここ数年で凄まじい成長を遂げています。各企業で得意分野は異なりますが、いずれも今後のマーケティング業界では必須情報となるのは間違いないでしょう。

2−3.デジタルマーケティング部門の担当領域

次に会社内での担当者について注目していきます。デジマということで、マーケティング担当の人が引き継ぐものかと思われますが、そうなるとも限りません。
範囲が従来の規模より広くなるため、マーケティングの知識だけでカバーするのは困難です。物流の知識、ITの知識も同等以上に必要になってきます。

従来型マーケティング部門の担当領域を大きく超えるということは難易度も上がるわけで、実質的な役割りはCOOと変わらなくならなくなります。

デジタルマーケティング部門のリーダーに求められる能力は「連携力」、「統合力」、「構想力」となり、見えない未来を予想し、検証する人が好まれるでしょう。

さいごに

デジマとはいったい何なのだろうということを説明させていただきました。
従来のマーケティングがインターネットを前提に考えていなかったので、今後は従来のマーケティングでは対応できないことが生じます。

そのため、マーケティングの変革期と呼べる現在はインターネットマーケティングがデジタルマーケティングと呼ばれることやビッグデータ分析がデジタルマーケティングと呼ばれることが出てきています。

まずはマーケティングとは何なのか、デジタル化することによって何ができるようになったのか、基本的なことはご理解いただけたかと思います。

私はこの本を読むことによって随分整理できました。

デジマ導入に向けて具体的な方法というより、そもそも何のことかという教科書的な意味では非常に分かりやすい内容となっています。
まだ概要もよく分かっていないという人は一度ご覧になってみることをオススメします。

私自身、マーケティングに関わる仕事をしていてデジタル化に対してハードルが高く感じる時もあります。
しかしながら、時代は確実にその方向に進んでいます。そこの乖離をどれだけ埋めることができるのか、日々追求していきたいと強く感じています。

消費者の代理人となれるように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?