見出し画像

大きな覚悟より小さな呟き

人が少なくなってきている田舎には暮らしていくうえでたくさんの課題がある。若い人がいない、お店がない、車がないと生活できない。そんな課題に1人で向き合うよりも、やりたいこと、できることを口に出してみるといいだろう。自分1人じゃできないことは、人と助け合いながら動いてみるのもいいだろう。気がつくと大きな何かが形になっているかもしれない。


 



神奈川県を拠点に飲食事業をしていた岩﨑蔵さん。お店を持とうと決意し市原市月崎に移住したが、新型コロナウイルス影響が予想以上に大きく、計画通りにお店を開くことができなくなってしまった。そんな岩﨑さんが現在どんな活動しているのか、縁側でお茶を飲みながらお話を伺った。


市原市との出会い


開宅舎 小深山(以下Kと示す):岩崎さんが市原市と関わったきっかけは事業をする場所を変えるタイミングだったとお聞きしました。

岩崎さん(以下Iと示す):そうですね。直近は神奈川県で活動していました。所属する会社の代表と結婚式場などのケータリング業や飲食店のコンサル、自社での製造などをしていたんですが、コロナで飲食業はかなりダメージを受けてしまって。ぼくらは、お店を持つと待ちの営業になってしまうから、もっと動ける働き方をしたくて、あえてお店を持ってなかったんです。ただ自分たちで場を持ってた方が、どんなことがあっても細々とやってはいけるよねってなって、このコロナを機にお店を探し始めたんです。

K:そうだったんですね。

I:じゃあ、移転しようってなったときに、何かサポートしてくれるところがいいよねって。お店だけやるつもりはなかったので、あまり場所にこだわりがなかったんです。ものすごい遠くに行くつもりはなかったんですけど、どこかないかなって探していて。そのとき市役所とかに電話をかけまくったんですよ。山梨県とか静岡県とかも調べたりしてました。千葉県はもしかしたら全市連絡したかも。

K:千葉県全市はすごいですね。どういうやりとりをしたんですか?

I:神奈川県でこういう事業をやっていてってイチから話しましたよ。もうぶっちゃけました。行政として何かサポートしてくれることはありますか?って。まだコロナの補助金がちゃんと機能していなかったというのもあって、協力的な自治体ってあまりなかったんですよね。

K:事業者さんが来てくれることって嬉しいと思うんですが、市役所もコロナの対応は大変だったんですね。

I:そうやって電話していたら、市役所や地域の間に入って僕ら事業者をつないでくれる市原DMOの池田さん(市原市観光協会)に繋がったんですよ。移転しようって決断してから実際に動くまで半年が経ってました。おととしの秋頃かな。それでとりあえず市原市に来ていろんな話をしたんですけど、当時はまだお店を始める物件も住む物件もなくて。

K:一緒にここの物件を見たのは年が明けて寒いときでしたね。


I:そうでしたそうでした。自分たちでも市原市内の物件を探したりしてたんですけど、賃貸だと五井周辺が多くて、もっと落ち着いた環境を求めていたんです。ちょうどタイミング良く、ひとりで住むのにいいサイズ感の物件があってよかったです。

K:南市原だと大きい間取りの物件が多いので、このサイズの物件はひとり暮らしの人には人気なんですよ。岩崎さん、タイミングほんとによかったですよ。

I:少し時間が経って、お店も住む物件も見当がついたので、お店を始められるって思ったんですが、なかなかうまくいかなくて。結局移転するまで一年くらいかかっちゃって、実は銀行の融資も受けられず、自己資金もほとんどない状態で。一年経ってコロナはまだ収まってないし、銀行も飲食店に融資するの怖かったんですよね、きっと。それですぐにお店を開くのは難しいってことになってしまいました。

K:飲食店はコロナじゃなくても経営していくの難しいって言いますもんね。

I:お店はすぐに始められないけど、この地域に来て、池田さんをはじめ、開宅舎の人とか、いろんな方々にお世話になって、市原市で何かしたいって思いました。特に池田さんはいろいろお世話になったから、何か恩返しをしたいと思って。直接地域のことにならなくても、市原で何かすることでお世話になった方々への恩返しになるんじゃないかなって。地域の方々のお話を聞いていると、市原市の課題ってすごくあるんだなって感じたので、何か協力できることがないかなってずっと思ってたんです。地域のことをもっと知りたいというのと、自分が生活していけることと、何かないかなって考えてて、それで始めたのが配送の仕事でした。

地域×配送


K:配送始めてから地域での新しい気づきって何かありましたか?

I:道も地名も何も知らなかったので、地域のことを知れたのがよかったですね。タイミングがよくて、ほんとならもっと狭いエリアを担当するんでけど、地域特性もあって、結構広い範囲をカバーしてるので、より多くの地域のことを知ることができました。土地勘がすごいつきましたよ。

K:確かに配送の仕事をしていると、道に詳しくなりますよね。

I:時間指定の荷物もあったりするので、一日に同じルートを三周くらいするんです。もうよく配送する場所の住所は覚えちゃいました。

K:そう考えると、配送の人って地域で何かあったときすごい活躍してくれそうですよね。住所聞いただけであそこか!って普通の人はならないですもん。

I:配送×地域で何かできないか考えてるんですよね。それこそ買い物がなかなかできないお年寄りのために何か持っていくとか。

K:配送×地域は何かできることがありそうですね。

I:今牛久の商店街も配送エリアに入ってて、街を知れたというより、配送をきっかけに牛久と繋がったって感覚があって。そしたら、うしくキッチンってシェアキッチンが始まるって聞いたんです。そこで声をかけてもらって、うしくキッチンでも料理を出させてもらってるんですよ。

うしくキッチン


I:牛久っていろんな活動があるんですよね。にぎわいマーケットとかうしぷらとか。配送から牛久に関わり、うしくキッチンに関わると、地域での活動がより身近に感じるようになったんです。最初は漠然と地域で起業っぽい何か一発大きなことを見つけ出さないといけないって思ってたんですけど、いろんな人と話しているうちに、小さくてもいいし、自分ができないことは誰かと協力しながらやればいいんだって思うようになりました。それまで、市の課題とか聞いてたので余計に焦って。

K:確かに市の課題とか聞いてると何かやらなきゃって気持ちになりますよね。

I:うしくキッチンはシェアキッチンっていうのがいいですね。誰かが自分の店を出すんだってなってたら人ごとになってました。シェアキッチンだからこそ、誰かが使わないと意味がないなって思えました。毎日やる必要もないし、自分といろんなところがマッチしたんですよね。

K:そこに岩崎さんが入り込めたんですね。


I:飲食店って毎日誰かが何かをやって認知してもらうことが大事なんですよね。お昼だけでもいいから。やってるかわかんないお店って人は行かないんですよ。

K:確かに。ぼくら世代はSNSを見れば今日やってるかわかっても、地元の人はいちいち見ないですもんね。

I:一日埋めるってことで1/7を自分がやらせてもらえるのはいいことだなと思ってて。今まで配送の仕事に責任を感じすぎてたなってのがあって、こういう活動やってみたいって言ってみたら、代わりに動いてくれる人がいたりとか、応援してくれる人がいて、口に出したらなんとかなるんだなって感じたんです。

K:口に出すって大事ですよね。

I:これがまた手伝ってくれる人が増えたら、お弁当の配達ができたりするので、もっといろんな人に届けられるんですよね。ぼくの場合、配送の車で配達に行ければ、今日は荷物じゃなくてお弁当の配達に来ました!って言えるんですけど(笑)

K:商店街は車を停めるの難しかったりするので、持ってきてくれるのは嬉しいですね。会社とかでお昼まとめて頼んでくれたら会社としても岩崎さんにとっても嬉しいですよね。

I:シェアキッチンだからの良さってたくさんあるんですよ。ぼくは挽肉堂って名前でやらせてもらってるんですけど、これがハンバーグ堂だったら、ハンバーグしか売れないんです。メニューありきにしちゃうとかなり縛られちゃうので、階層をひとつ上にしたってのがあって。そうすれば、週ごとにハンバーグとかキーマカレーとか挽肉を使ったメニューに替えられるんですよね。

K:なるほど。ぼくはもうこの曜日は岩崎さんの作った料理が食べられるって知ってるから買いに行けるけど、最初のお客さんはそもそも何屋さんかわからないですもんね。

I:シェアキッチンはメニューを変えてもいいし、変えなくてもいいし、いろんな挑戦ができるのでいいですね。週一だと準備もできていい。ただちょっと階層を引きすぎたかなって思ってるんですよ。挽き肉だけに。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?