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本を作るということ

もともとアシスタントのアルバイトでこの仕事のおもしろさを知り、
飛び込んだ出版業界。
しかし、なかなか渾身の出来といえる本は作れません。
その原因のひとつが、出版数や売上などのノルマです。

 ・編集者1人当たりX冊出してね
 ・うちは年俸制だから売上目標に達しないとこれだけしか出ないよ
みたいな目標ありきで進める出版社はたくさんあります。
会社である以上、利益追求が本来の存在目的なので
その面では間違っていない、まさに王道的なものです。

私の実体験としては、
月刊誌の企画・編集、担当ページの取材・執筆に加えて
書籍を5~6冊、プラスほかの書籍の一部を執筆……
という年間サイクルがありました。

別の会社では
・新シリーズ初月10冊同時発売
・その翌月から2冊ずつ発売
・編集担当は2人(初月も2人)
・外部校正や校閲の予算はない(ので、自分でやってね)
……という進行がありました。

イメージ画像(出典:illustAC まぽ様)

そうした状況で、どれだけよい本ができるのかといえば、
「できません」
「単なる流れ作業です」
「中身の正確さは著者監修者を信じて鵜呑みにするしかありません」
……といった答えにしかなりませんでした。私の場合は。

それが合いませんでした。
著者監修者には伝えたい事柄や思いがある。
編集側には(マニアックなものでも)知ってほしい気持ち、
届けたい気持ちがある。

読者は、ワクワクしながら高いお金を払ってページをめくるはず。
しかし、そこにある情報が古すぎる、偏見すぎる、間違っている、
それ以前に日本語として意味が取れない……なんて状況であれば、
そのレーベルや出版社の書籍自体を買わなくなります。

著者監修者の持つ知識や意見、思いをきちんと発信し、
たとえたった1人であっても読者が得心する本を作りたい。
そのためには1冊1冊にきちんと向き合い、考え続ける。
そんな基本を大事にしたい気持ちが、
私がフリーランスとして仕事を請け負う土台になっています。

イメージ画像(出典:PhotoAC fujiwara様)

今までそんな気持ちで続けていますが、正直食べていけません。
もしかしたら高い方かもしれない私が言うのもなんですが、
単価が安いんですよね。

文庫本1冊書いて20万というところがあったり、
100~160ページの取材執筆と編集で50~60万であったり。
それが半年~1年半近くかかる作業の対価です。
この価格、四半世紀以上変わっていません。
というか、逆に低くなっています。
同じ出版社、160ページの取材執筆で80万だった時期もあるのに。

通信費、取材交通費、PCやプリンターなど必須機器、インク代、
光熱費や家賃などで月に十数万が消えていく。
それに掛けること出版までの月数。
とうてい賄いきれない中で、この秋はインボイスが発動する予定。


イメージ画像(出典:いらすと屋様)

この仕事では、報酬の支払い時に1割以上引かれています。
この秋からはインボイスでさらに1割持っていかれる。
2割減となると、50万の仕事なら40万にしかなりません。
全盛期の半分です。
400万稼ぐのに年間10冊以上作らなければならないということです。
企画・アポ取り・取材・執筆・発注・進捗管理・編集・ラフ起こし・校正
などなど含めてこの価格。

そんな状態で思いのこもった本なんて作れるはずがない。
どうすればいいんですかね。

出版社の皆さま、もしご覧になっていたら、
個人の外注先には少しでも高く発注してあげてほしいと切に願います。

【使用画像】
・TOP画像:ピクト缶様より

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