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カットの回想録。4 juin 1758(その2)

カットの回想録、1758年6月4日の続きです。
王様がフランス語のスペルミスを開き直ったり、ぜんぜんお手本にもならない夫婦観を語ってみたりの後の会話です

カットの回想録。4 juin 1758(その1)はこちらから読めます。


本文続き

Il parlait ainsi de Berlin, quand le lacquais lui apporta un paquet venant de cet endroit.
»Ouvre ce paquet,« lui dit le Roi,
»nous verrons bientôt ce que c'est.«
On ouvre.
» Ce sont des manchettes, mon cher, de belles manchettes de la fabrique de Potsdam, qui diable m'envoie des choses que je n'ai pas commandées — et comme elles sont longues, une paire en peut faire deux.«
Cela dit, il prend les ciseaux, les coupe par le milieu, puis une seconde, une troisième, et ainsi jusqu'à la sixième.
»Me voilà à présent avec douze paires de manchettes; voyez, comme je suis bon économe et comme je sais tirer parti de tout et multiplier
tout; qu'ai-je besoin de manchettes si longues, il ne me les faut pas plus longues que belles, car j'ai la mauvaise habitude, comme vous l'aurez remarqué déjà peut-être, de passer ma plume sur mes manchettes.
Si elles étaient belles, je n'aurais pas tant de facilité d'essuyer ma plume, ce n'est pas la plus belle chose du monde que je fais là, mais je n'y regarde pas de si près; voyez mes bottes, vous ne direz pas qu'elles sont bien élégantes, qu'elles sont du plus beau cuir de l'Europe, elles sont commodes et cela me suffit ; voyez mon habit, je l'ai un peu déchiré à Schmirsitz, et on me l'a raccommodé bel et bien avec du fil blanc; mon chapeau va de pair avec le reste de mon habillement : tout sent l'usé et l'antique, et tout est cent fois mieux pour moi que s'il était neuf. Je ne suis ni pour le faste, ni pour la représentation, ni pour la vanité, me voilà, Monsieur, et prenez-moi tel que je suis. Une chose pourrait être mieux. C'est mon visage barbouillé toujours de tabac d'Espagne, c'est une maudite habitude que j'ai contractée ; avouez que j'ai l'air un peu cochon – avouez-le.«
» J'avoue, Sire, que son visage comme Son uniforme sont bien converts de tabac. «
» Eh, Monsieur, c'est ce que j'appelle être un peu cochon. Quand ma bonne mère vivait, j'étais plus propre, ou, pour parler plus exactement, moins malpropre ; cette tendre mère me faisait faire chaque année une douzaine de chemises avec de jolies manchettes, qu'elle m'envoyait là où j'étais ; depuis la perte irréparable que j'en ai faite, personne n'a plus soin de moi – mais ne touchons pas cette corde, bon soir, mon cher, bonne nuit ; je vous souhaiterais bien une Babet, mais les Babets de nos camps font acheter trop cher les plaisirs qu'elles donnent, si elles en donnent. Bon soir encore.«

日本語訳続き

彼(※フリードリヒ大王のこと)がベルリンの話をしているとき、召使いが荷物を持ってきました。

「この荷物を開けてください」と王が言いました。
「すぐに中身がわかるでしょう」
そして荷物が開封されました。

「これは袖飾りです、私の親しい人。ポツダムの工場で作られた美しい袖飾りです。私が注文していないものを、※1. 悪魔が送ってくるのは(いったい)何なのか ー
そして、(見ての通りの)その長さなので1組が2つになります。」

これを言うと、※2. 彼はハサミを取り、それを真ん中で切りました。そして2つ目、3つ目、6つ目まで切りました。

「今では私は袖飾りを12組持っています。見てください、私がどれほど賢く節約家であり、どれほどすべてを活用し、増やす方法を知っているか。こんなに私がこのような長い袖飾りを必要とするでしょうか。美しい袖飾りは必要ですが、長すぎる必要はありません。なぜなら、あなたはおそらくもうお気づきかもしれませんが、私はペンを袖飾りに引っ掛ける悪い癖があります。
もしそれらが(私にとって)美しいものであれば、私はそんなにペンを簡単に引っ掛けなかったでしょう。
私がしているのは世界で最も良いことではありませんが、私はそれほど注意深く見ていません。
私のブーツを見てください。それが非常にエレガントで、ヨーロッパで最高級の革でできているとは(誰も)言わないでしょう。履き心地がよければそれで十分です。
私の上着を見てください、私はそれをシュミルジッツで少し破いてしまいましたが、※3.白糸でしっかりと修繕しました。
私の帽子も服装の他の部分と調和しています。すべてが古びていて、古風な感じがしますね。そして、すべてが新品であるよりも、私にとっては100倍良いのです。私は華やかさや装飾、虚栄心には興味がありません。
ねえムッシュー、ありのままの私を受け入れてください。
ひとつもう少し良くなることがあります。
私の顔は、※4.常にスペイン製の(嗅ぎ)タバコで汚れています、それは私に身についてしまった呪われた習慣です。
私が少し豚のように(汚く)見えることを認めてください ー
認めてくださいね。」

「陛下、その顔と制服は確かにタバコでよく汚れています。」

「そう、ムッシュー、それが私が少し豚っぽい(汚い)と呼ぶものです。
私の優しい母が生きていた時は、私はもっと清潔でした。正確に言うと、それほど不潔ではありませんでした。その愛情深い母は、毎年素敵な袖口のついたシャツを1ダース作らせ、私の元へ送ってくれました。
※5. 取り返しのつかない損失を経験してからは、もう誰も私のことなど気にかけてくれません ー
しかし、この話題には触れないでください。では、良い夜を、私の親愛なる方。おやすみなさい。※6. あなたにはバベットを差し上げたいところですが、私たちのキャンプのバベットは、その喜びを高く請求します。それでは、また良い夜を。」

注釈

※1.勝手に送られることはないので、侍従とかが手配してるんですよ王様…
※2.当時のレース製品はそれだけで屋敷が買えるくらいの最高級品ですが、それを潔くすっぱりはさみでちょん切ってます。この頃はケチになっているので部下の華美な装いにもうるさくなっています。軍人王のぱっぱと同じことしています。
※3.プロイセン軍服の上着はプルシアンブルーの濃い青の上着をわざわざ白い糸で繕っているので、意図的と思われる。なお後日、また白糸で繕っているのをカットに突っ込まれている。
※4.王はスペイン製の嗅ぎたばこを好んでおり、常に持ちまわっていた。煙草入れのおかげで命が助かったこともある。
※5. 実母を亡くしてからの意味だと思われる。てか嫁殿にやってもらえよ…
※6.バベット:先に出てきたダルジャンス侯爵の妻。キャンプの女性(多分慰安婦的な)を差し向けたいが、彼女たちに高額請求される意味かと思われる。

登場人物

アンリ・ド・カット

アンリ・ド・カットの肖像画

この回想録の著者。
オランダの船上でフリードリヒ大王にナンパスカウトされ、王の侍読係になる。本文の頃は7年戦争の戦場に同行し、王の日常と会話を回想録に残す。
得意技は鋭いツッコミ。

フリードリヒ大王

プロイセン王。気難しい性格で回りを振り回し困らせているが、カットとは気が合うのかまるで幼児のように「ねえねえ聞いて!」とかまってちゃんと化す。そのたびにツッコみを食らい、まるで漫才のような会話を繰り広げる。
この頃にはおしゃれに興味はナッシング。今回ちょいマザコン気味なのが判明した。

あとがき。

エコでサスティナブルな生活を心がけている王様…
もはや若いころのおしゃれっぷりや細やかさはログアウトし、お父ちゃんもびっくりな無頓着になってしまわれました。まだお父ちゃんの方がポリシーもってたと思います。理由を色々つけてますがただのめんどくさがりやん!むしろそれを開き直ってるし。

身の回りの支度をママンにやってもらってたのはいいとしても、亡くなってしまわれたのを嘆くより、嫁殿にやってもらいたまえよ。喜んで完璧にやってくれるぞ!

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