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人魚の村で何度も死ぬ

ラインを捉えられなくて溺れたというのが正直なところ。どこかからどこかへとあちこち連れ回され振り回され着地できたのかはたまた波間を漂ったままでいるのか。

一度目は、メインスピーカーの前が陣地だったから、それはそれはもうまさしく音の洪水に流されて。
頭の中からなにか掘り返されそうだと思った。恐ろしかった。

ギリギリっていうかほぼアウトのパロディ。
過呼吸。
そして毒は美味しい。

ブラスバンドの質が高くてあっぱれ仰天したし、ミス田螺のダンス大好きだった。
相当な手練れとみましたよ。あれ。

舞台上の優越。にじみ出るものは隠せない。
だからこそあの人たちは続けるしやめられないんだろう。
エンターテイメントはみる者を引き上げるばかりとは限らない。打ちのめして胆を嘗めさせ、或いは怒りに震えさせる可能性をも抱き込んでいる。それはどうしたって逃れられないこと。

それでも。年の近そうなあの人たちはだいたい同じような悩みを持ってる人間だった。
家族や自分の病気とか介護とか。ふん。そうだよね……。

昼と夜の間に売場をブラついていたら、贔屓の幽霊みたいな人とすれ違った。まさかそんな迂闊なことは許されていまいし、昨今の情勢だし。違うってば!と言い聞かせつつなんだか腑に落ちないでいる。これは余談中の余談。

(劇団鹿殺し キルミーアゲイン'21)