読書感想文

『わたしのいるところ』ジュンパ・ラヒリ(新潮クレスト・ブック)

ジュンパ・ラヒリは好きな作家。
といっても、読書記録によると、なんと、『停電の夜に』しか読んでいないもよう。それでもその1冊が水を飲むようにスゥと滲みこんで糧になったのなら好き以外に言いようがない。

この作品もしみる。今度は滲みるじゃなくて沁みる、か。
登場人物は、「若い」とはもう言いにくい年齢で、独身で、それなりに本人も納得した職を持ち、経済的にも精神的にも独立している女性。イタリアじゃどうか知らないけど、日本では嫌味の一つも言われかねない「自由な」毎日。
ほぅら。身に覚えがある。
いざ数え上げようとすると、不満という不満はないはずなのだけれど。それでもどうにも居心地の悪い人生。居心地の悪さの原因をつくる、根っこの大きな部分は「上手にできなかった」両親との関係と、自分でも気づいているそもそもの自分の性格。
ああ、もう。痛いほどのリアリティをもって共感できる。あまりにも共感できすぎる。
彼女が身近にいて、たとえばSNSにこんな毎日を吐き出していたら。こんにちはって顔を合わせるたびに諦めたような笑顔を見せられたら。「うわ~。メンドクサイわあ。。」と思って距離を置いてしまうだろう。
だけれども、わたしも気づいている。それは、なんだか鏡を見ているようだからということに。
彼女のいるところは、わたしのいるところでもあるのか

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